2011年・春 日本人の食文化と健康

私たち日本人は、遠くは7,000年前の縄文時代から、いや、少なくとも1,000年ほど前から、葉物、木の実、キノコ、魚介、時に獣肉に手を加えて(調理して)おかずとし、米を食べて生きてきました。つまり日本人の身体は米と野菜と魚に合うようにできており、それは少なくとも1,000年以上の歴史を踏まえて遺伝子上に描かれた設計図によって構築されたものです。したがって、近年になって流入してきた洋食が、たとえ口に合って美味しいとしても、遺伝子上の設計図が描き替わる本当に身体に馴染んだ食べ物となり得るには向こう何百年かの時間を要すると考えられます。すなわち、「冠動脈性」心疾患に対する予防食、ひいては生活習慣病に対する予防食とは、何も特別なものではなく、日本の伝統型食生活(和食)に帰ればよいということです。

日本の「ご飯」・・・日本の「ご飯」は様々な食品との相性がよく、大変すぐれています。米を主食として多様な主菜・副菜の組み合わせを特徴とする日本型の食生活は、糖質、蛋白質等を効果的に摂取できます。“粒”のまま炊いて食べる米飯は、パンや麺などの“粉”食と異なり、消化吸収に時間がかかり食後の血糖値を急に上げないので、糖尿病の予防に役立ち、とりもなおさず全身の血管を傷めません。また米飯のでんぷんの何割かは未消化のまま大腸に達するので、食物繊維と同様の働きをします

「具だくさん」の味噌汁・・・野菜は生で食べるより煮て食べる方がよいのです。野菜の細胞膜は堅く、歯で噛んだくらいでは壊れにくいため、生で食べると野菜に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維など肝心の栄養素のかなりの部分が吸収されることなく便中に排泄されてしまいます。これに対し、いったん加熱すると、野菜の細胞膜が壊れスーパー・オキシド・ディスムターゼ(SOD)の働きをする数多くの物質が溶け出し、動脈硬化を含む老化を促進する有毒な活性酸素を不活性化してくれるという「野菜の効果」が存分に発揮されます。冠動脈性疾患などと無縁の長寿に成功しているお年寄りは、そんな知識とは無関係に野菜がたっぷり入った「おみおつけ」でご飯を食べてきました。これまでは味噌がやや多かったきらいはありますが、「具だくさん」の味噌汁は日本の伝統型食生活(和食)の典型です。