科学するTAMAGAWA 次代のロボット研究を担う若い世代が世界に挑むロボカップジュニア世界大会

2016.07.19

ロボットの設計・製作を通じて次世代のRobo Cupの担い手を育てるロボカップジュニア。
出場資格は19歳以下ながら、要求されるタスク(課題)は相当ハイレベル。
その世界大会が6月30日から7月4日にかけてドイツ・ライプツィヒで行われます。
本学からは、K-12から2チーム、大学から2チームの出場が決定しました。
玉川学園から出場する2チームのメンバーと、指導を担当する田原教諭に話をうかがいました。

出場者同士が教え合い学び合う ロボカップジュニア

過去の大会より

世界初の本格的な二足歩行ロボットASIMO(本田技研工業 開発)の登場以降、ロボットは「人間の命令によって動き、人の代わりとなるもの」から、「人・社会と共存する存在=パートナー」へとなっています。ペットロボットのAIBO(ソニー 開発)、感情認識ヒューマノイドロボットのPepper(ソフトバンク 開発)など、人の気持ちを読み取り、状況に合わせたコミュニケーションを図ることができ、それをきっかけに介護や情操教育の現場などで自律型ロボットが活用されるようになりました。
ロボカップジャパンオープンでも、19歳以下が参加できるロボカップジュニアでこうした自律型ロボットの競技が行われています。
「ロボカップジュニアは、サッカーチャレンジ、ダンスチャレンジ、レスキューチャレンジの3つのリーグに分けられ、さらにそれぞれ3〜4のカテゴリーが設けられています。このうちサッカーとダンスは人を楽しませることに、レスキューは人の役に立つことに重きが置かれているのが特徴です」というのが、ロボット研究をメインに活動するサイエンスクラブ顧問の田原 剛二郎(たばる こうじろう)教諭。自らが指導する生徒たちにロボカップジュニア参加を促したのは、大会で見た選手同士が教え合い助け合う姿だったそうです。

「ロボカップジュニアは、チャレンジを通して、次世代のリーダーになるための基礎基本を身につけられる協同学習の場であり、競争の先にある協調をめざすという目的があります。それが参加者にしっかりと浸透していて、大会中に困った人がいれば、たとえライバルチームであっても『こうしたほうがいいよ』とアドバイスしたり、部品のトラブルで困っているチームに自分たちの予備の部品を分けてあげたり、といったことが当たり前のようにされています。また、大会を通じて参加者同士の交流も盛んで、連絡先を交換してその後の密なコミュニケーションに発展するケースもあります。3月に行われたジャパンオープンでも、レスキューメイズにエントリーしたAtlantisチームがモータートラブルに見舞われた際に、他チームが予備のモーターを譲ってくれたということがありました。もちろん、大会なので勝ち負けはついてくるものですが、それ以上に、学び合う場となっていると強く感じています」

年を追うごとに高度化するタスク(課題)それを自分たちの力でクリアする

レスキューメイズに出場のAtlantisチーム
レスキューラインに出場のDiscoveryチーム

レスキューの部門には、Atlantisチームがエントリーしたレスキューメイズ、Discoveryチームが出場したレスキューラインの2つがあります。それぞれどんな競技なのでしょうか。
「さまざまな障害物が設置された迷路の中にいる被災者を発見し、救助するもので、自律走行しながら被災者が発する熱を感知し救護措置を施し、スタート地点まで戻るとレスキューメイズの競技は終了となります。迷路の途中には道をふさぐ障害物があったり、道にガレキが撒かれていたり、傾斜がつけられていたり、行き止まりになっていたりします。それらのトラップをクリアできるようボディの構造や必要なセンサー類の配置などを自分たちで決め、センサーから得られた情報を処理し、マシンの制御を行うためのCPUも配します。さらに、マシンの動きをコントロールするプログラムも自分たちで行っていきます。もうひとつのレスキューラインは、年齢によってプライマリ(14歳以下)、セカンダリ(19歳以下)に分かれていますが、ルールは、ほとんど同じで、床面に引かれた黒いラインを頼りに自律走行し、被災者に見立てたボールを安全なエリアまで運び出すという競技です」

ロボカップジュニアには、もうひとつ厳格なルールがあります。それは、チームメンバー自身がロボットの組み立てとプログラミングを行うこと。指導者が直接的に関与したり、組み立てを行ったりすることはできないのです。それを証明するために、チームメンバーが自分たちのロボットがどのように動くかを説明することを求められます。田原教諭は「こういう方法もあるんじゃないかな」とか「こういう考え方もあるよ」といった助言を時々する程度で、基本的なスタンスは生徒たちを見守ること。「ロボットが思い通りに動かないことは当たり前のようにあります。そのときにあきらめずに原因を見つけ解決策を考える、試行錯誤して取り組んでいくことが大切」と田原教諭はいいます。

田原教諭の指導のもと、ジャパンオープンに挑んだAtlantisチームはタスクをほぼ完璧にクリアし見事優勝。同時に世界大会への出場を手にしました。Discoveryチームは、圧倒的な強さを見せた関東大会から一転、苦戦を強いられ6位という結果に。しかし、それまでの戦いぶりが高く評価され、今年度から新しくスタートするレスキューブリッジリーグに他大学の学生と組んで世界大会へ参加することになりました。

大きな期待と少しの不安を胸に 世界大会の地、ドイツ・ライプツィヒへ

では、それぞれのチームに世界大会への意気込みを語っていただきましょう。

日本代表として世界の強豪と競うAtlantisチームは、ペアを組んでから5年目を迎えます。すでに一人は玉川学園を卒業し、大学生と9年生の混合チームとして出場します。玉川学園を卒業生した矢澤 めぐみさんは、現在中央大学の理工学部に在籍しています。はじめは、ハンダ付けの面白さからロボット製作に関わるようになったそうです。
「7年生から玉川に入学し、サイエンスクラブに入りましたが、そもそものきっかけは物理の自由研究だったんです。國吉くんとは10年生のときからペアを組み、今に至ります。初年度は車体もプログラムも私が担当しましたが、2年目からは私が車体担当で、プログラムは國吉くんに任せることにしました。世界大会に向けて、車体をゼロからつくり替える必要があり、焦りも感じつつしっかりとしたものをつくっています。迷路攻略のためには、ジャイロや加速度、温度、赤外線など多くのセンサーが必要で、それらを処理する回路やヘッドユニットも必要になります。制御するうえで、どこにどんなセンサーを配置するのがいいかパートナーの意見を聞きながら作業をしています。目標は、世界一。日本の代表として戦ってきたいと思います」

矢澤さんと5学年違いの國吉 健路(くによし たける)さんは現在9年生。思い通りに動かせることに楽しさを感じ、プログラミングに目覚めたそうです。
「僕の担当は車体に合わせたプログラミングですが、思うように動かなかったり、予想に反する動きをしたりなど、失敗もたくさんあります。その原因を探る大変さや要する時間に心が折れそうになることもあります。それでも、このペアで挑める最後の年に世界大会に出場できる機会が得られました。滅多にないチャンスですから、大会の空気感や海外の雰囲気を味わうくらいの余裕をもって臨みたいと思っています」

Discoveryチームの12年生の小澤 正憲さんは、7年生からロボット製作に関わっています。
「レスキューラインは、始めた当初は初心者向けという感じでしたが、毎年ルールが変わり、キャリアが必要な競技になりつつあります。前年は缶を持ち上げるタスクでしたが、それが今年はボールになり、難易度も上がりました。世界へという意識は2年くらい前からもっていて、ジャパンオープンの優勝チームとの情報交換もしていました。今回は愛知工業大学、福山大学との混成チームで出場させていただくことになりました。この大会に向け、マシンの製作も行っています。大学生の方々と製作過程でどのような違いがあるかなど、いろいろなことを学んでドイツから帰ってきたいと思います」

10年生の柳田 大我さんは、小学校3年生のときから家の近くのレゴ®スクールに通い、毎年のように全国大会に出場していました。
「僕が担当するのは、つかんだボールをゴールまで運ぶ機構部分。レゴ®ではライントレースや迷路、サッカーなど一通りのことは経験しましたが、ジャパンオープンで前年の世界チャンピオンのマシンを見て衝撃を受けました。自分たちはいくつかのパターンで動かすようにしていたのですが、チャンピオンのマシンはすべてを計算で動かす仕組みだったのです。世界大会に向け、その方式を採用してみたのですが、戸惑うことだらけで・・・・・・。大学生の方のノウハウを身につけてきたいと思います」

「関東地区はレベルが高く、ジャパンオープンに出場することさえままならないこともありました。レスキューメイズではようやくその座につけました。チームの2人は長年のコンビで息も合い、世界でも優勝を狙えるレベルにあります。日本の代表としてベストを尽くしてもらいたいと思っています。ブリッジリーグに参加する2人は、大学生と組み、その中で自分たちがどんな役割を果たせるのか、大学生がつくるマシンはどんなものなのかなど、この場でしかできない経験を次の機会に活かしてもらいたいです」という田原教諭。世界大会に出場する2チームにかかる期待も相当大きいようです。