科学するTAMAGAWA 日本語と英語のバイリンガルプログラム「BLES-K」の保育展開

2017.02.21

「BLES-K(Bilingual Elementary School-Kindergarten)」は、小学校就学前の年少から年長の3年間を通して英語にふれる教育プログラム。2016年4月にスタートし、年間のプログラムが終盤を迎えた今、その教育内容がどのような効果を見せているのか、また、今後どのような展開を予定しているのかを、子供たちの様子とともにお伝えします。

日本語と英語を学ぶバイリンガル教育

2020年というと、東京オリンピック・パラリンピック一色のように思えますが、教育分野では改革のスタート年にあたります。というのも、文部科学省が2013年に発表した「グローバル化に対応した英語教育改革」において、小学校5・6年生では外国語(英語)の教科化と3・4年生では外国語活動の時間導入の完全実施が、2020年度とされているのです。

玉川学園では、創立時より国際教育に力を入れ、活躍の場を世界へ広げる教育プログラムを多彩に展開してきました。また、2016年4月からは幼稚部でバイリンガル教育プログラム「BLES-K」を実施しています。
BLES-Kは、年少期から英語に親しむバイリンガルプログラムで、年少・年中・年長と3年間を通して英語に触れる活動を行うものです。しかし、「英語だけ」の教育ではなく、日本語と英語の両方の基礎を身につけるためのもの。「英語カリキュラム」に則った「英語の時間」と、保育内容を含んだ総合的な「英語活動」とを融合させて、英語に触れる時間を段階的に増やしていくのが特徴です。
また、玉川学園では、小・中・高の12年間を通して「BLESクラス」から「国際バカロレア(IB)クラス」へと継続的な英語教育を展開しており、BLES-Kはその前段階を担う重要なプログラムでもあるのです。

このBLES-Kと他のバイリンガルプログラムとの違い、その目的と効果などについて櫻井利昭幼稚部長とBLES-K担当のエリカ・ヘンドリクス教諭にお話をうかがいました。

「バイリンガル教育と言ってもいくつものタイプがあります。英語漬けの環境に身を置くことで言語の修得を図る“イマージョン”もそのひとつです。英語のみをコミュニケーションツールとして用いて授業を行います。また、幼児・児童英語教育スクールやインターナショナルスクールのように「英語」がまず掲げられている形のところもあります。玉川学園のバイリンガル教育は、あくまでも母国語である日本語が中心にあって、同時に英語が自然に染み込んでいくイメージです。そこで大切にしているのが、子供たちが一方的に英語の受け手にならない環境です。これは相手の言うことを理解・受容する力とともに自らの意思や気持ちを発信する力も育てるためです。特別な状況が整っている「英語」の時間とは別に、日常ではそれとは無関係に英語を耳にする機会にあふれています。例えば、電車などの交通機関を利用したとき、日本語でのアナウンスに続いて英語のアナウンスが流れますよね。そうした子供を取り巻く日常を切り取って、多くの場面を与えていくことが大切なのではないでしょうか。英語に触れる時間を学齢とともに拡大し、年長後半は保育時間の半分程度を英語活動に充てています」
幼少期に受容だけでなく発信においてもバイリンガルな環境を整えることで、語学としての学びへとスムーズに移行ができ、耳から入ってくる言葉を日本語に訳して理解し、その答えを日本語で考えて英語に訳し発するという、複雑な翻訳作業の必要がなくなると、櫻井部長は言います。

英語を「話をするためのツール」として身につけていく

では4月のスタート以降、BLES-Kの環境で子供たちの様子はどのように変化してきたのでしょうか?
「初めのころは戸惑いや恥ずかしさもあったようですが、今ではエリカ先生を見つけると進んで寄っていくようになりました。実際、英語に興味を持つ子供たちが増えましたし、自発的に自分の名前を英語で書きたいという子もいます。年少クラスはまだ単語での会話ですが、徐々に長い言葉、センテンスでの会話へと発展していけばいいと思っています。驚かされるのは発音です。クリスマス礼拝で『きよしこの夜』を英語で歌ったのですが、耳から入った音をしっかりと発声していました」

導入後9カ月が経過し、いくつかの課題も見えてきたようです。
「一般的に語学の習熟度を測る目安として、英検の級やTOEICのスコアなどが用いられますが、日本語を中心にそこに英語を染み込ませていく玉川学園のバイリンガル教育は、それでは測れないのではないかと思います。とはいえ、BLES-Kの効果について把握することは重要です。個々の子供が、どこまで認知・理解ができたかを把握するために数値化・見える化することは考えなければならないでしょう。プログラム改善のためにも不可欠です」

子供と家庭と教師を結ぶ学内ネットワーク「CHaT Net」

中には、英語でのコミュニケーションがあまり得意でないという子や自ら前に出て行くのが苦手な子もいます。そうした特性や関心にももっときめ細やかにサポートしていくことも重要です。
「BLES-K担当の先生からは、細かなレポートが毎日提出されています。それについて、プログラム全体と子供一人ひとりの様子を教員間で共有するようにしています」
そして保護者の皆さんにも、その日、英語の時間にクラスでどんな活動をしたかを「CHaT Net」を通じて写真とともにお伝えしています。

英語での「知りたい・話したい」必然性を湧き立たせる

実際の英語の活動の時間はどのようなものなのでしょうか。担当するエリカ・ヘンドリクス教諭によると、しっかりとステップアップできるプログラムを用意していると言います。
「年少はボキャブラリーを増やすことをメインに、歌や遊びなどから生活の中で使うものや動作の言葉を身につけていきます。遊びも聞く、話す、絵を描く、読み聞かせなど多彩に用意しています。使えるようになってほしい言葉、子供たちが使いたくなる言葉を見極めて計画しています。年中ではそれをさらにレベルアップさせセンテンスでの会話に近づけ、年長ではお店屋さんなどのごっこ遊びからしっかりとしたコミュニケーションを身につけていきます。子供たちの上達・成長には目を見張るものがあり、年中ではこちらの冗談も理解できるようになりますし、年長ともなると興味をひくようなフレーズの言葉を、異なる場面で使っていたりもします」

具体的に英語の活動の時間では、子供たちも知っているトウモロコシやカボチャ、ブロッコリーなどの野菜を描いたカードでゲームをしたり塗り絵をしたりしながら、英語でのコミュニケーションを行っています。また、体育ではボールや風船を使い、楽しみながら「throw」や「catch」などの英語に触れ、単語やセンテンスを理解していくプログラムが組まれています。こうした環境で、段階や理解度合いに応じて、「これは何」という単語での理解だけでなく、「何をどうするか」といったことまで理解し、子供たちは問われたことを英語で返すということが自然とできていくのです。

English Room

また年長クラスでは、学級や個々の学習だけでなく、6人を1グループにしてEnglish Roomで先生とランチタイムを過ごすのだそうです。このときに子供たちから50以上もの質問をされることもあるといいます。子供たちはクラスでの関わり、グループでの関わり、個人との関わりを通してその場の状況に合わせて日本語と英語を使い分けるようになっていきます。
櫻井部長は「玉川学園のバイリンガル教育は、教える側・教えられる側の図式ではなく、子供たちの“もっと知りたい・もっと話したい”が先にあります。だから話すレベルが自然と上がっていくのだと思います」と状況を説明してくれました。

さらに、次年度には玉川大学のELFセンターを訪問し、大学生やセンター所属の教員と英語でコミュニケーションを図る機会も計画されています。英語というツールを使ってコミュニケーションする機会が増えることで、自然と英語で自分の気持ちが伝えられるようになり、無理なくもう一つの言語を獲得していくことができるのでしょう。