科学するTAMAGAWA 自然の中での学びや遊びを通して好奇心を育む

2013.02.25

広大な敷地に豊かな自然を有する玉川学園では、
自然と触れ合う学びや自然の中での遊びをとても大切にしています。
それは、子どもたちに心に残る体験をもたらし、
好奇心を大きく育てることにつながっています。

豊かな自然を活かした玉川学園の教育

玉川学園のキャンパスは約59万m²の広大な敷地を誇ります。そこには数多くの草花や樹木が育ち、四季折々の表情を見せています。都心にほど近い立地にありながら、これほどの自然に恵まれたキャンパスは他に類を見ません。そして、この豊かな自然は“ただそこにある”というわけではなく、玉川学園の教育にとってとても大きな役割を果たしているのです。

「この環境を活かした学びや遊びを通して、いつまでも心に残る体験をしてほしい」そう話すのは、玉川学園幼稚部の廻谷美和(めぐりや みわ)教諭。廻谷教諭は昨年度まで小学部低学年を担当し、キャンパスの自然環境を活用した様々な授業で子どもたちを指導してきました。現在は幼稚部に移り、引き続き自然との触れ合いを大切にした教育を行っています。今回は、小学部低学年と幼稚部の活動を通して、玉川学園の自然教育について紹介してもらいました。

教室から一歩出れば自然に触れられる環境

オオシマサクラ

小学部では総合科の時間に自然と触れ合う授業を展開しています。「例えば、1年生と入学後すぐ『丘めぐり』に出かけました。1年生の入学を祝うかのように満開に咲き誇った桜を見て歩き、玉川の春の丘を楽しむためです。風が吹いて桜の花びらが舞った時には追いかけて遊び、桜の花を押し花にして遊びながら歩いた丘めぐりでした。遊びながら色や形の違いにも気づくことができました。キャンパスにはソメイヨシノやオオシマサクラ(「玉川学園の花 50選」A地区II区 )など様々な桜が植えられているので、その形や色の違いを観察するには最適な環境です。1年生はまだまだ教室で勉強することには慣れていない分、こうした外で遊びながら植物を観察することには夢中になって取り組みます」と廻谷教諭は話します。

農学部にて
桜餅作りにチャレンジする1年生

こうした体験だけでも、自然科学に対する興味・関心を引き出すきっかけになりますが、玉川学園の自然教育はこれだけでは終わりません。「オオシマサクラの葉は桜餅に使われるものです。そこで農学部の先生に協力を仰ぎ、約10ヵ月かけてオオシマサクラの葉を塩漬けにし、桜餅を作ることにしました。お餅作りは1年生だけではできないので、農学部の先生と学生に手伝ってもらい、さらに、芸術学部の先生の協力を得て桜の葉で型押ししたオリジナルのお皿を作りました。そして、2年生に進級する頃、このお皿に桜餅を乗せて成長した喜びを噛み締めながらいただきました。これほど長期にわたって学びを継続できるのは、教室から一歩出ればすぐそこに自然がある恵まれた環境の賜物です。また、幼稚部から大学までワンキャンパスで学び、教員全員が『子どもたちを一緒に育てていこう』という意思を持っている玉川学園だからこそ、これだけ学びの幅を広げることができるのだと思います」。

大学との連携で自然教育がさらに充実

大学の授業で使用する田んぼで泥遊びをしたり、実際に稲を育ててお米を収穫するなど、農学部と連携した教育は他にも数多く実施しています。「中でも思い出に残っているのが、2年生が行ったアイスクリーム作りです。2年生の2学期に牛乳工場を見学したのですが、子どもたちは『乳製品』という言葉の意味がよく理解できていないようでした。言葉で説明しても子どもにとってはわかりにくいので『実際に作ってみようか』と呼びかけたところ、『アイスクリームが作りたい』という声が子どもたちから上がってきました」。

しかし、実際にアイスクリームを作ってみたところ、うまく固まらずシャーベットのようになってしまいました。「そこで『冬休みにお家でアイスクリーム作りをやってみて、誰か成功したら3学期にもう一度みんなで挑戦しよう』と子どもたちに提案してみました。すると多くの児童が冬休みにアイスクリーム作りに取り組み、そのうちの何人かはちゃんと成功したと報告してくれたのです。冬休みは短いので取り組む児童は少ないと思っていましたが、子どもたちの予想以上の意欲には私も驚きました」。

そこで、今度はちゃんと固まるアイスクリームを作るために、農学部の先生に相談し、支援してもらいながら、アイスクリーム作りに取り組みました。「結論としては卵や空気など材料のバランスがポイントでした。そこに至るまでには、前回はなぜ失敗したのかを検討し、農学部の先生へインタビューを行い、材料を変えて2種類のアイスクリームを作る実験も実施。中には自分の家でアイスクリーム作りに再チャレンジした子もいたほどで、学習に対する子どもたちの興味は非常に高かったと感じました」。

このように、体験的な学習を通して、子どもたちの好奇心を育てることがとても大事であると廻谷教諭は話します。「この場合、アイスクリームが固まらなかったことがきっかけで学習が発展していきました。つまり、“実際にやってみた”からこそ、子どもたちの中に『どうして固まらなかったのだろう』という疑問の芽が生まれたのです。また、農学部の先生が加わり確かな知識で指導してくれたからこそ、ここまで学習が深まったのだと思います。この取り組みに参加した子どもたちは現在中学生になっていますが、小学校でのいちばんの思い出はこのアイスクリーム作りだと言ってくれた生徒がいました。小学校での学びが長く心に残り、それが将来の目標につながっていることをとても嬉しく思います」。

遊びを通して学び、成長する

「色水遊び」の花と絞った色水のまとめ

一方、幼稚部では遊びの中で自然と触れ合う取り組みを行っていると廻谷教諭は話します。「ある年長組の女の子が花に興味を持っていたので、『じゃあ、お花から色水を作ってみようか』と呼びかけ、朝顔で色水遊びを行いました。子どもたちは『すごい!』『こんなの知らなかった!』と大喜び。『それなら他の花でも色水が作れるか試してみよう』と、キャンパスに咲く様々な花や実を使って、色水を作る実験に発展しました」。


ニチニチソウ、マリーゴールド、オシロイバナなど、様々な花から色を抽出。なかでもヨウシュヤマゴボウの実からはとても濃い紫色が出たので、子どもたちは大はしゃぎでした。「子どもたちは『ジュース屋さんをやろう』といって、ごっこ遊びもしました。また、ヨウシュヤマゴボウには少し毒性があるので、『絶対に口に入れないように』と注意したところ、年長組の子が『これは本当に飲んじゃだめだよ』と年少組の子に教える光景も見られました。自然を体験する遊びを通して、子どもたちは色々なことを学び成長しているのです。『大きくなったらお花の研究者になる!』と将来の夢をふくらませる女の子もいました」。

ビワ染めのハンカチを作っている様子

他にも幼稚部では、ビワの葉を煮込んで色を抽出しビワ染めのハンカチを作るなど、取り組みはさらに発展的に広がっています。「もちろん、すべての子どもが初めから自然に興味を持っているわけではなく、遊びに関心を示さない子もいます。しかし、実際に遊び始めてみると多くの子が夢中になり、家に帰っても遊びの続きに没頭する子もいるようです」。自然と触れ合う体験が、子どもの好奇心を大きく刺激していることが伺えます。

自然教育が子どもの“引き出し”を作る

豊かな自然が失われつつある現代の都市部において、こうした経験ができる玉川学園のキャンパスは、非常に貴重だと廻谷教諭は話します。「私の個人的な印象ですが、いまの子どもたちは“引き出し”が少ないように思います。前述の色水遊びもそうですが、私が子どもの頃は周りに自然がたくさんあって、知らず知らずのうちに花から色水が作れることを理解していました。ところが、今の子どもたちにはその経験があまりないようです」。

その理由の一つとして考えられるのが、自然に触れる機会が少なくなってきているからではないか、と廻谷教諭は続けます。「その証拠に、『他の花でも色水が作れるかな?』などちょっとした投げかけさえすれば、子どもたちは自然と遊びを発展させていくことができるのです。玉川学園のキャンパスには、子どもの引き出しをたくさん作ってあげられる自然が溢れています。この環境を活かして、私たち教員は知識を教えるだけでなく、子どもたちと一緒に自然に触れ、一緒に学び合いながら、子どもの好奇心を育てていくことがとても大事なのだと思います」。