科学するTAMAGAWA 学習意欲や探究心をより高める3・4年の社会科教育

2013.01.25

小学3・4年生の社会科教育では、
玉川学園ならではの環境を生かした体験的学習や
最新のICT機器を効果的に授業に取り入れて、
学びに対する意欲や探究心をより高める教育を行っています。

「12の教育信条」が息づく学習

玉川学園では「教えられるより自ら学びとること」を大切にしています。そして、「自ら考え、自ら体験し、自ら試み、創り、行うことによってこそ、真の智育、徳育も成就する」という「自学自律」の理念が「12の教育信条」の中に盛り込まれています。3・4年生の社会科教育には、玉川学園がこれまで大切に受け継いできた、そうした理念がしっかりと息づいています。

小学部3年月組の担任で、高等学校の地理歴史・公民の教員免許状も所持する小宮山 拓(こみやま たく)教諭に、玉川学園の小学3年生から始まる社会科教育に関して、受け持っている3年生の学習内容や学習目標を中心にお話を伺いました。

豊かな思考力や問題解決能力の基礎をしっかりと養う

玉川学園には、59万m²の敷地に幼稚部から大学院まで大小あわせて100近い校舎や関連施設が点在し、充実した学園生活が毎日安心して送れるように、さまざまな部処が設けられています。
「3年生の社会科では、1学期と2学期にそれぞれ『私たちの玉川学園』という単元を設けていますが、ここでは教職員を含めると1万人以上が集う玉川学園というコミュニティーを“身近な地域”として設定し、施設見学や職場訪問などを行っています」と小宮山教諭は話します。「1学期の『私たちの玉川学園I』では、学園内のいろいろな施設の見学を通してその役割を学びます。また、2学期の『私たちの玉川学園Ⅰ』の授業では、学園内の職場を訪問し、そこで働く職員の人たちへのインタビューを通して、自分たちの毎日の学園生活が大勢の人たちに支えられていることに気づくことをねらいとした学習を行っています」。

玉川学園のキャンパスには“電柱”がありません。これは豊かな自然環境や美しい景観を保つのと同時に、悪天候でも電線が切れる心配がなく、安全対策面においても優れているからですが、これまで3年生の社会科では電柱のないキャンパスの秘密を探りに地下共同溝を見学したり、24時間365日体制で学園内の防災・防犯に取り組んでいるキャンパスセキュリティセンターなどを見学したりしてきました。

「社会科の学習で防災への意識が高まったのでしょう、昨年の夏休みの自由研究で防災グッズの点検をしてきた児童がいました。本当に役立つグッズを調べるために、電気もガスも水道も使えない状況で一晩生活した結果をまとめたものでしたが、とても面白い自由研究でしたので、来年度は3年生全員の授業として同じようなことができないかと考えています。“自ら確かめてみよう”という気持ちが、確かな見方や感じ方、考え方を高めていきます。『私たちの玉川学園II』ではグループに分かれて仕事の内容や目的についてインタビューを行いますが、防災グッズの自由研究を行った子のように、“気づき”を得るためには自ら問題意識を持って課題と向き合うことが重要です。そのため、グループごとに事前に下調べを行い、一人ひとりが疑問や意見を出し合って、どこの職場を取材するのか、だれがどんなインタビューをするのかを決めています。実際に話を聞いて納得することもあれば、そこでまた新たな疑問が生まれることもあるでしょう。知識を与えることも重要ですが、子供たち一人ひとりがそうやって自ら確かめ、感じ、考えていくことが、豊かな思考力や問題を発見したり解決したりする力を育んでいきます。体験的学習を重視しているのはそうした理由からです」。

表現力やコミュニケーション能力も養うために

小宮山教諭の話からもわかるように、3年生の社会科では、「見学活動や直接経験を多く取り入れながら、自ら問題意識を持って観察し、調べ、考えることを通して、社会的な事象に対する見方や考え方を養う」「自分たちの生活と学園に勤める人々や他地域に暮らす人々との結びつきに気づき、自分たちの生活がそうした人々に支えられていることについて理解を深める」ことが学習目標になっています。
また、「見学や経験したこと、図書資料などを活用して調べたこと、感じたことを相手に分かりやすく伝えるための技能を伸ばす」ことも重要な学習目標になっていると小宮山教諭は話します。

「2学期の『私たちの玉川学園Ⅱ』も、いろいろな部処の担当者に取材をして、それで終わりではありません。グループごとにメモしてきたことを整理し、大きな模造紙にわかりやすく内容を分類してポスターにしたり、新聞のような記事形式にまとめたりして、表現力やコミュニケーション能力を高める学習につなげています。また、他の教科と連携したクロスカリキュラムも特色の一つです。『私たちの玉川学園Ⅱ』では、情報科の授業と連携し、調査した結果についてコンピュータを用いて表現・発表する学習も行っています。社会科では1単元あたりの時間数を多く取って、体験を伴う学習活動が余裕をもってより深まりのある内容で実施できるようにしていますが、クロスカリキュラムを積極的に展開することで、学習目標をさらに効果的に達成することにも努めています」。
3年生の社会科では、「私たちの玉川学園Ⅰ」「私たちの玉川学園Ⅱ」のほか、「働く人と私たちのくらし」「くらしのうつりかわり」などの単元を設定。また、キャリア教育と関連させた職場体験プログラムの中から興味あるものを選んで参加できるサマースクールなども行っています。

学習内容を充実させる新たな取り組み

「方位や都道府県名とその位置など、今後の社会科学習の基本となることを覚える」ことも、3年生の社会科の学習目標の一つになっています。
「方位に関しては、『私たちの玉川学園Ⅰ』の単元の中で、学園の地図を見て建物や施設の位置を確かめて、方位磁針の使い方を知り、四方位、八方位から発展的に十六方位までの学習を行います。また、来年度以降の新たな取り組みとして、「学園の絵地図づくり」を検討しています。私たち玉川学園の教員は、指導力を高めるための研修や研究会に積極的に参加しています。昨年秋の研修では、地理教育に関する研究の第一人者である寺本 潔(てらもと きよし)玉川大学教育学部教授からお話を聞きました。今後の社会科教育のまた新たなヒントになりました。その話を参考にした新たな学習目標として、学園の鳥瞰絵地図をクラスで作り、施設見学や職場訪問に活用しながら、地理感覚や空間認知の力を高めていきたいということを考えています」。

ところで、玉川学園では一昨年9月、1年生から4年生までの児童が学ぶ低学年校舎の全学級教室と教科教室の一部に電子黒板を導入しました。年間を通して行われる都道府県名とその位置を覚える学習では、電子黒板に実物投影機とパソコンを接続してより分かりやすい授業を行っていると小宮山教諭は話します。「電子黒板に学習する都道府県の形を提示したあと、その地方全体の地図を提示して位置を確認。各都道府県の特産品や名所の写真なども提示しながら、考えたり説明しながら学ぶという授業スタイルです。全員で確認したあとは、各自のワークシートでいま学んだ都道府県に色を塗り、特徴をまとめていくという流れです。ICT機器を活用することで、授業がよりテンポよく行えるようになりました。写真や映像なども効果的に活用することができるので、子供たちも学習内容を視覚的にとらえながら、より楽しく授業に向き合えるようになったのではないでしょうか」。
今年度の3学期の「くらしのうつりかわり」の単元では、タブレット端末を一人一台使い、インターネットも活用した新しい試みの授業を行うと小宮山教諭は話してくれました。「教員自身が授業を楽しめないと、子供たちも楽しくないと思います。ICT機器は適切な教育を行うための新しい支援ツール。機器に頼りすぎることのないように注意しながら、自作教材にも工夫を重ね、より楽しく、より分かりやすい授業をたえず考えていきたいと思っています」。

連続性を保ちながらレベルアップしていく学習

玉川学園の一貫教育は、学年の連続性を保ちながら学年間の連携を図ることが大きな目的の一つになっています。3年生の社会科は、1・2年生の総合科の学習の中で培ってきた社会事象に対する見方や考え方をさらに系統立てて伸ばしていくのがねらい。そして、より高いレベルの4年生の社会科の学習へと発展的に展開させていく役割を担っています。
「1・2年生の総合科では、自然豊かな玉川学園の環境を生かして昆虫や植物の観察をしたり、動物園の見学に行ったり、また玉川大学農学部の田んぼでお米作りを学んだりと、体験的学習の機会を多彩に設けています。また、観察したことを紙芝居や絵本・劇など様々なかたちでわかりやすく表現する学習も行っています。探究心を刺激し、表現力の素地を養い、学びへの意欲を高めたうえで、3年生の社会科へと連結させます。思考力、問題解決能力、表現力、コミュニケーション能力などを育み、さらに学級担任制から完全な教科担任制へと移行する4年生の社会科の学習で、上位学年で必要な学力や能力を育てていくという流れになっているのです」。

小宮山教諭によれば、4年生の社会科でも、学園内で採取した粘土で土器作りを行う体験的学習や、暮らしに関わりの深い水やゴミの処理について学習する処理場の見学活動などを授業として行っているとのこと。
「算数や国語と違い、社会科は単元ごとに大きな学習目標はあっても、そこに至るルートはさまざまです。どのようなルートを登っていくのかは各教員の裁量に任されている部分があるので、教員として非常にやりがいがあります。玉川学園には創立以来受け継がれている12の教育信条というしっかりとした理念があり、体験的学習の場を多彩に提供してくれる広大なキャンパスがあります。さらには大学の先生方や各学部ともつながる総合学園ならではのネットワークもあります。それらが社会科の学習をより豊かなものにしてくれているということを強く感じますね。」またこう続けます。「私はこれまで2年生と3年生のクラスを担任してきました。児童と一緒に私もいろいろな体験をする中で、教員としての視野が広がり、考え方も柔軟になったように感じます。これからも子供たち一人ひとりにしっかりと目を配りながら、学習意欲や探究心を効果的に高めていくための学習内容の工夫・改善に積極的に取り組んでいくつもりです」。