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科学するTAMAGAWA 将来につながる数学的センスを磨く玉川学園の数学教育

2012.11.23

玉川学園5-8年(小学5年~中学2年)の数学では、
授業の中で論理をしっかり理解させ、
継続的な学習でそれを積み上げていくことで、
将来にわたって必要な数学的センスを培っています。

数学的センスを身につけさせるために

現在、日本の教育現場では、「数学ばなれ」「数学ぎらい」が非常に大きな問題になっています。なぜなら、数学を理解するということは、単に計算ができるというだけではなく、ものごとを論理的に考え、自分の考えをまとめて周知する手段として、広く社会で必要とされる力の基礎となるからです。

その点、玉川学園算数・数学科主任の中西 郭弘(なかにし かつひろ)教諭は「日々の授業の中で論理的な思考力や数学的センスを身につけさせることを大切にしている」と話します。「もちろん、知識や計算力も大切です。玉川学園でも、(1)豊かな知識(2)正確に計算できる力(3)問題を分析・把握する力を身につけることを、数学科の指導方針として設定しています。ただし同時に、考え、工夫する力、協力しながら問題解決する力、研究結果を発表・表現する力、根気よく継続できる力、好奇心を持って前向きに取り組む力などを身につけさせることも重視し、そのために様々な工夫を凝らした指導を実践しています。これらを通して、生徒が数学的な見方・考え方の良さを発見したり、数学的センスを培えるよう配慮しているのです」と中西教諭。

では、その工夫とは一体どのようなものなのか。そして、その工夫はどのような学習効果につながるのか。今回は、5-8年の授業における取り組みをもとに、玉川学園の数学科の教育内容について掘り下げていきます。

問題の背景にある論理を理解する

中西教諭は「社会や理科といった覚えることの多い科目と違い、公式や解法を覚えるだけでは、本当の意味で数学を理解していることにはならない」と話します。「大切なのは、“なぜそうなるのか”という問題の背後にある論理を理解することです。例えば、中学校では連立方程式を学びます。このとき、解き方を暗記すれば答えは導き出せるでしょうが、それでは論理を理解することにはなりません。実は、連立方程式は『つるとかめがあわせて10匹います。足の数を数えると28本です。つるとかめはそれぞれ何匹いますか。』という小学校で習う「つるかめ算」を一般化したものともいえます。連立方程式が“このような問題を能率的に解くための方法”である認識しか持てないことが問題であり、それでは、数学的センスを磨くことはできません。

ことがらを図で表せたり、いろいろな方法で解けたり、見通しをもって答えを導けるなどの数学的センスを身につけさせるためには、学年が上がるにつれて教師側がいろいろなアプローチをしなければならない」と中西教諭はいいます。「例えば、夏休みの宿題として、『連立方程式をつくってみよう』という課題学習を行っています。問題を“解く”のではなく“つくる”ことによって、それが何を意味するのか考えたり、自分で工夫したりする力を身につけさせるのが目的です。他にも、一次関数を使って、『過去のデータから将来を予測しよう』という課題もあります。一次関数ですから直線的な推移しか表せません。しかし生徒は、日本の人口の推移から将来の人口を予測するなど、それぞれ工夫して課題に取り組みます。数学的センスを磨くためには、問題を解くだけでなく、こうした概念的な学習を積み重ねることが必要なのです」。

生徒にあわせてつくるオリジナル教材



もちろん、工夫を凝らしているのは夏休みの課題だけではありません。普段の授業でも、玉川ならではの様々な工夫があると中西教諭は続けます。「授業は教科書だけでなく、担当教員がプリントや資料を用意し、それで教科書の行間を埋めながら行うようにしています。例えば私の場合、複数の教科書の問題を抜き出してプリントにまとめ、生徒に解答してもらうことがあります。それにより、ひとつの問題を様々な視点で見ることができ、解き方ではなく問題の本質を理解できるのです。また、あえて教科書を使わず、いきなり問題を解いてもらうこともあります。なぜなら、教科書には例題が出ているので、考える前に答えがわかってしまうからです。答えを見る前にまず問題に取り組んでもらうことで、自分で考える力を身につけさせるのが目的です」。

ほかにも、「図形」の領域では書画カメラを使用してリアルタイムで書き込みながら解説したり、四角形の面積の変化をソフトウェアで表現して、手元のモニターで見せることで視覚的に理解できるような工夫もしているといいます。「ひとつの授業で使用する教材を用意するために、担当教員は数時間もかけて準備することもしばしばです。教員の負担は多大なものになりますが、生徒のレベルや理解度に合わせて教材を変えることで、生徒は興味や関心を持って授業に取り組めるようになる。数学は積み重ねの学習が大切な教科です。はじめは苦手かもしれないなと思う生徒でも、やったらやっただけ結果がついてくるものですから、このように前向きに取り組む意欲を身につけさせることも、数学的センスを培う上で非常に大切だと考えています」。

生徒の学習状況に応じたコース制

こうした生徒のレベルや理解度に合わせる取り組みは、個々の授業で使う教材に限られたものではありません。「7・8年生では、その時々の生徒の学習状況を見極め、必要に応じてA・Bのコースに分けたり、A・B・Cの3コースに分けて授業を行ったりします。例えば、現在の8年生は1つのAコースと2つのBコースに分けて授業を行っています。この場合、Aコースはより難しい課題にチャレンジし、レベルをさらに引き上げることが目的であり、扱う教材も当然Aコースはハイレベルになります」と中西教諭。

「一方、5・6年生はコース分けを行わず、クラスごとに指導しています。その中でグループ作業や発表の機会を多く設けて、協力しながら問題解決する力や発表表現する力を伸ばしています。コース分けをしないのは、数学が得意な児童が苦手な児童を引っ張って、ともに実力を伸ばし合えると判断しているからです。ただし、これは現在の生徒の学習状況に合わせた判断であり、一律に決められたやり方ではありません。コース分けをした方が良いか、一緒に学ばせた方が良いかはその学年によって大きく異なります」。

「また、コース制を採る場合は、定期試験ごとにコースの入れ替えを行います。その際、試験の点数がコース分けの判断材料になるのはもちろんですが、数学に対する生徒の意欲も重視しています。前述の通り、数学は継続した学習が大切ですから、数学に前向きに取り組む意欲が身についていることが、コース分けの大きな判断材料になるのです」。

根気よく復習を積み重ね9年生へとつなぐ

さらに、それまで積み重ねた学習内容の習熟度を維持するために、復習テストも欠かしません。「例えば7・8年生の場合、定期試験のほかに10回の計算テストを実施しています。テストに合格できなかった生徒には再試験も受けてもらいます。また、復習テストのほかに、今習っている所の小テストや、Aコースには発展問題だけのテストを行うこともあります。数学が苦手な生徒にとってはかなり厳しいかも知れませんが、『勉強ができる、わかる』ようになれば生徒のモチベーションも上がり、前向きに取り組む意欲も沸いてくるはずです」と中西教諭。

その反面、生徒に予習はさせないともいいます。「なぜなら、予習で下手に間違った考え方を身につけてしまうと、それを正すのが非常に難しいのです。だからこそ、授業の中でしっかりと問題の背景にある論理を考え理解させ、それを復習テストで確実に身につけさせているのです」。

こうした様々な取り組みは、その後の高校の数学にもつながっていくと中西教諭は話します。「中学校レベルの数学であれば、解法を暗記することで正解を導ける場合も少なくありません。しかし、高等学校段階になると『なぜそうなるのか』がわかっていないと、数学は途端にできなくなります。いまのうちに『なぜそうなるのか』を考えて学習する習慣を身につけさせ、それを継続的に積み上げていくことで、数学的センスを培っておくことが非常に重要なのです。もちろん、自分から意欲を持って数学に取り組んでもらうことが一番なのですが、全生徒にそれを求めるのは難しい。ですから、私たち教員が授業の中で様々な工夫を凝らし、学生が自然と数学的なセンスを身につけられるよう配慮しているのです」。

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