科学するTAMAGAWA コミュニケーションの道具として社会で使える英語を学ぶ

2012.03.23

社会に出たときに求められる英語力とは何か。
従来の“語学ありき”の英語学習を脱却し、
コミュニケーションツールとしての英語を学ぶ
英語教育の新しい取り組みがはじまっています。

コミュニケーションのための英語学習

「先生、“laboratory”のアクセントはどこですか」。授業の途中、生徒の1人から屈託のない大きな声で質問があがります。すると、ネイティブスピーカーの教員がにこやかに、アクセントの位置や英・米での発音の違いについて解説。その質問をきっかけに、クラスのみんなでリズムをとりながら“laboratory”の発音練習がはじまりました--

これは、11年生「プロアクティブラーニング(PL)コース」の英語の授業の一コマ。PLコースとは、10~12年生を対象に理数系と英語を重視した特別コース。11年生の週4時間の英語の授業のうち1時間は、外国人教員と日本人教員とのティームティーチングクラスです。教科書の内容に加え、自分から英語を発信する技術を身に付けるための補助教材を使って、すべて英語による授業を行っています。その教室に満ちているのは、従来の英語の授業に見られる堅苦しさではなく、生徒が積極的に道具としての英語を楽しもうとする自由な雰囲気でした。

玉川学園では、教科書に基づいて読解や文法を学ぶ英語の授業と同時に、こうしたコミュニケーションのための英語学習も重要視しています。それには、一体どのような目的があるのでしょう。英語科主任・国際教育担当の長岡清通(ながおか きよみち)教諭にお話を伺いました。

“語学ありき”の国際教育からの脱却

「まず“はじめに語学ありき”というのが、これまでの日本の国際教育のあり方でした」と、長岡教諭は話します。「つまり、単語や文法を覚えることからスタートして、ときにそれだけが目標となっていたわけです。しかし、本当にそれでいいのでしょうか。言語というのはコミュニケーションツールです。だとすれば、まずは何か“聞きたいこと”“伝えたいこと”があり、その対象者が英語を話す人である場合、はじめて英語が必要になる。それが、コミュニケーションの順序であるはずです。つまり、国際教育には、自分の意見を表現したり、相手に伝えたりする技能の学習があるべきです」。

実際、教育の現場では“単語や文法はわかるが表現ができない”生徒も多いといいます。「例えば、英検の二次試験には、短い文章を読んだあとに質問に答える面接があります。そのとき、内容を理解することはできても『これは何についての話ですか』『それについてどう思いますか』と面接官に質問されると、どう表現していいかわからない生徒がたくさんいます。それも、読解や文法の試験についてはトップクラスの成績の生徒までが、答えられないのです。これは日常の学習で得た英語の知識が、実際にはコミュニケーションツールとして機能していないことを示しています」。

「しかし、これからのグローバル時代に世界へ出て行ったとき、本当に必要とされるのはこの“伝える”“表現する”力のはずです。重要なのはコミュニケーションツールとして英語を使えることであり、だからこそ、玉川学園ではコミュニケーションのための英語学習を実践しているのです。また、将来、自立した学習者となるために、授業方法が一つの学習方法を提示しています」。

活発なコミュニケーションを生む授業

では、実際の授業ではどのようなことが行われているのでしょうか。この日は、生徒同士がペアを組んで、さまざまなシチュエーションの写真の内容を相手に英語で説明する場面がありました。「これは、自分の意見を相手に伝える力を培うために行っています。このとき特に注意して指導しているのが、“you”と相手に語りかけるときは必ず相手の目を見るとか、相手の身になって話すといったコミュニケーションに関わる部分です。単に英語の意味が分かればいいということではなく、コミュニケーションツールとして英語を使うことを意識させているのです」と長岡教諭は言います。

また、生徒がイラストを見てそれが何を表しているか想像し、英語で発表する場面も。「これも、自分の言葉でプレゼンテーションする力を養うものです。このとき、生徒の英語が間違っていたり発話がつかえたりしても、それをその場で正したりはしません。ここで重要視しているのは、単語や文法を間違えないことではなく、自分の意見を伝える力を身につけることだからです。どんな発表であっても、クラス全員の拍手でその生徒を讃えます。教員としては、こうしたクラスの和やかな雰囲気づくりも重要視しています。なぜなら、緊張感に満ちた雰囲気の中からは、円滑なコミュニケーションは生まれにくいためです。ですから、教室は生徒が自分の意見を自由に表現できる場となるよう心がけています」。冒頭に記した、生徒が屈託なく質問できるような自由な雰囲気の背景には、このような狙いがありました。

国際体験を通じて英語を学ぶ

こうした取り組みは、PLコースに限ったものではありません。全学を上げて、コミュニケーションツールとしての英語を身につけることに力を注いでいます。「その一つが年間を通して行われるさまざまな海外研修・留学プログラムです。毎年200名以上もの生徒が、何らかのプログラムを利用してアメリカやオーストラリア、ドイツなどを訪れています。また、国際規模の私立学校連盟である『ラウンドスクエア』に生徒の代表者を派遣し、ディスカッションやボランティア活動などを体験しています」。

そして、もちろんこれらも語学を学ぶことがメインではないと長岡教諭は強調します。「大切なのは、実際に国際的なコミュニケーションを体験することです。留学先では、否応なく外国語を話さなければなりません。当然うまく話せない生徒も多いでしょう。しかし、それでいいのです。むしろ、単語や文法を知っているだけではコミュニケーションがうまくいかないことを、身をもって体験できることが貴重なのです」。

さらに、海外からも7カ国150名以上の留学生を受け入れ、日常の学校生活で国際的なコミュニケーションが生まれる環境も整えています。「日本での日常生活の中に留学生がいると、自分で主導権を取ってコミュニケーションしなくてはいけない場面が増えます。それによって“留学生に伝えたいことがある”だから、“英語を使って話してみる”という自然な流れの中で、英語を学んでいくことが可能になるのです」。

社会に出てから活きる人間力

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長岡教諭は「英語は体育や音楽と同じような教育分野」だと言います。「つまり、知識ではなく技能としての部分が非常に大きいのです。例えば、いくら自転車の部品の名前を覚えたところで、実際に自転車に乗れるわけではありませんね。英語もそれと同じで、単語や文法に詳しくなったところで、それだけでは実社会で使えるコミュニケーションツールとしては機能しないのです」。

「もちろん、玉川学園でも読解や文法についてしっかりとした教育を提供していますし、それにより、大学受験に対応する力をつけることは重要と考えています。しかし、“大学全入時代”と言われる今、受験勉強だけに終始する教育では足りません。大学の先、社会人になったときに、このグローバル時代に必要とされる“コミュニケーションツールとしての英語”を使いこなせる人間を育てたい。それが、全人教育を理念に玉川学園が考える“人間力”育成のひとつのあり方です」。

  • Round Square(ラウンドスクエア)
    国際規模の私立学校連盟。年に一度開催される世界大会には、世界各国の60校を超える高校生が集まり、環境や国際的な問題をテーマにしたディスカッション、ボランティア活動など様々な活動が行われる。本学園は2005年に日本から初めて正式なメンバー校として認定された。