玉川大学・玉川学園Webサイト
IEサポート終了のお知らせ

玉川大学・玉川学園webサイトTOPページリニューアルに伴い、Microsoft 社の Internet Explorer(以下、IE)のサポートを終了いたしました。本学園が運営するサイトをIEで閲覧した場合正しく表示されない恐れがございます。
皆様にはご不便をおかけしますが、別のブラウザを利用しての閲覧をお願いいたします。

科学するTAMAGAWA 「SSHリサーチ」 興味を研究の基礎へ

2011.07.25

玉川学園の新しい理科教育の中核をなすSSH※1関連科目。
少人数のグループで自らが決めたテーマに沿って研究を行う
「SSHリサーチ脳科学」・「SSHリサーチ」。
どのようなことが行われているのでしょうか?

研究の基盤づくりのメリット

玉川大学脳科学研究所と高度に連携し、9~11年生の希望者を対象として放課後に開講している「SSHリサーチ脳科学」。少人数で研究を行う中の一つに「ザリガニの神経に関する実験」を行っているグループがあります。

「『脳波を使った心理実験』がテーマですが、脳波を伝播する脳神経の実物を見る機会はそうあるものではありません。ザリガニを用いたのは神経の観察、神経活動の記録がしやすいからです」と語るのは理科SSH担当の森 研堂(もり けんどう)教諭。生徒たちは電流で刺激を与えると尾が動くことに驚き、同時にその反応を楽しみながら研究に参加しています。

「研究の楽しさや醍醐味は、新しい発見に触れられることや現在解明されているものに何かを付加できること、誰も知らないことをしている優越感、興味があることを深く掘り下げられる知的満足などがあるでしょう。そうした研究・実験の基礎部分を作り、生徒の自主性を育てるのが大きな目的です」と語る森先生は、それを早期に体験できることが重要だともいいます。

最先端に触れる環境

「その際にポイントになるのが、“最先端に触れること”。SSH関連科目の授業は、高校と大学が高度に連携しながら最適なカリキュラム研究がなされています。手で触れることで感動やうれしさを得られるよう様々な工夫を凝らしています。また、どのような研究・実験をどんな方法で用いるかといった計画を生徒自身に考えさせています。それは、計画から段取り、実行という一連の流れや動きを身につけさせることにつながり、ひいては目の前の実験だけでなく、すべての学習において、自分がどう学びを進めていくべきなのかが身につくからです。ただし、興味やモチベーションを維持していくには、常に最先端に触れる環境が必要になります」。自由研究の伝統の他、高度な学術研究を行う各研究所との連携、そうした環境が整っているのが玉川学園のメリット。中でも、“世界の先端を行く脳研究”を推進する脳科学研究所の存在はとても大きいといえるでしょう。

蟻の個々の動きから集団としての知性を知る

「SSHリサーチ」では、吉澤 大樹(よしざわ ひろき)教諭の指導のもと、蟻の研究を進めているグループがあります。「蟻と聞くと生物分野をイメージするかもしれませんが、このグループが行っているのは、数理分野です。実際の現象を数理的に捉えるので物理ともいえます。近年になるまで、物理の世界では生物を扱うことはありませんでした。蟻に着目したのは、個体では知性を有していないにもかかわらず、多数になると複雑なことができる特性があるからです」。

「巣から出た蟻は四方八方に散らばり、適当にエサを探しています。やがてエサを見つけ、巣に戻る際に自分の通ったルートにフェロモンを残し、ほかの蟻もそのフェロモンを頼りに行動します。確率的に動く蟻の動きがフェロモンによって、結果的に2点間の距離を最短ルートで結ぶことにつながっているのです。この研究のゴールは、集団としてのポテンシャルの高さとそれを生む個体の振る舞いのメカニズムを知り、それをどのようなものに応用・利用するか、にあります」と語る吉澤先生。原理・原則を教え込むのではなく、生徒が自ら学ぶことを心がけています。

理にかなった試行錯誤だからこそ意味のある結果が得られる

「現段階では、蟻の動きを探りパソコンでシミュレーションしています。プログラミング以外は生徒たちの自主性に委ねていますし、この結果をどう生かすかも本人たち次第です。ただ、数理検証の手法を知れば、何にでも応用できます。良い方法を見つけるための試行錯誤が重要なんです。やみくもに手を出すのではなく、具体的な理にかなった試行錯誤によって得られた結果は、その意味合いが大きく異なりますし、結果の予測・予想を立てなければ“予想外の結果”や“想定外なこと”にも出会えません」。

参加している生徒たちのモチベーションと能力の高さに驚かされているという吉澤先生。「蟻の集団による知的行動は、複雑なルートから最短のルートを選んで物を運ぶことに応用できるなど、パソコンの計算では解決できないメカニズムがあります。こうした研究は、成果を次世代へ伝え、広く社会に活かしていかなければなりません。そこで、これまで数回、学内での研究発表を実施しました。また、秋には論文発表が控えていますし、SSHの生徒研究発表会※2にも参加する予定です」。夏期休暇期間中には海外研修を実施し、ドイツの大学を訪れたり、現地での発表や討論などを体験する予定になっています。

  • 1スーパーサイエンスハイスクール(SSH)
    文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度
  • 22011年度スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会
    日程:8月11日(木)・12日(金)
    主催:文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構
    会場: 神戸国際展示場(神戸市)
    口頭発表予定:8月11日(木)11:40~12:10
    テーマ:「蟻の群知能に関する研究」(英文テーマ:“Experimental investigation and simulation of ant swarm intelligence”)

シェアする