科学するTAMAGAWA 真の国際教育をめざした玉川の英語教育

2013.05.24

社会のグローバル化の進展に合わせて
その重要度の高まりを見せる英語力。
小学校における英語教育の
現在とこれからを考える。

世界の潮流から取り残された日本の英語教育

さまざまな分野で国際化が進む現代社会において、国際共通語としての英語の重要性が高まっています。その中にあって、日本では、1998年に告示された学習指導要領に「『総合的な学習の時間』における『国際理解に関する学習の一環としての外国語会話』」として明記されています。そうした経緯を経て、全国の国公私立小学校で「外国語活動」が必修化されて3年目を迎えました。この「外国語活動」は、実質的には英語教育にあたるものです。英語教育は、2011年の一斉スタート時より以前から多くの小学校で取り組まれていましたが、その実施の有無や方法は各学校に委ねられていました。

世界各国でも外国語教育の実施時期の早期化が進み、小学校段階から外国語(ほとんどは英語)が必修化されています。世界と日本とで大きく異なるのは、“有効的な施策としていつから始めたか”と“学習開始時期をいつにするか”です。韓国では1997年から、中国では2001年から英語が必修化されていますし、ヨーロッパでもオランダでは1985年から英語が必修となっています。さらに、そのほとんどが小学校低学年期から授業が始まります。対して日本は5・6年生を対象としています。教育体制として世界の流れから10年以上も後れを取っているうえ、早期からの教育も実施されていません。
では、「国際教育」を教育信条の一つに掲げ、小学部で創立当初から英語教育を取り入れている玉川学園では、実際にどのような英語教育が行われているのでしょうか。K-4年生英語科主任の小川恵子(おがわけいこ)教諭にお話を伺いました。

幼稚部から始まる玉川の英語・国際理解


「玉川学園では幼稚部から英語教育をスタートしています。週に1回、20~30分の時間を使って、英語を話す先生とふれあいながら英語の音に慣れ親しんでいくようにしています。小学部では1年生は45分授業を週に1回、年間で35回、2~4年生は週に2回、年間で70回、5・6年生は週3回、年間で100回以上、それぞれ英語の授業があります。見る、聞く、話すなど五感をフルに使い、身体を動かしながら英語の授業を楽しく受けながら、“英語でコミュニケーションするスイッチ”をONにすることを重視しています。これは英語を話す自分のキャラクターを前面に出す良い経験になりますし、年齢が低いほどすぐに適応できます。可能な限り身近なものを題材として、それも絵ではなく実物を使うようにして、“実際のシチュエーションをつくってライブで教える”ことを大切にしています。そこで面白いと感じれば、もっと知りたいという欲求が生まれてくるからです」。


授業の開始時に“始まりの歌”を英語で歌うことで気持ちが自然と切り替えられるそうです。年間の授業時間数は決して多くないものの、継続的に実施することで力をつけることができるといいます。
「年齢を“つ”で数える時期(3~9歳)は、とにかく経験を優先させています。まず経験があって、そこで積み重ねたことを整理するのはそれ以降の学習になります。会話の中でわからない言葉があると、大人はそこでつまずいてしまいますが、子供たちはわかる言葉をつなげて“何となくこうだろう”でコミュニケーションを成立させていきます。中学からの英語教育は、習っていないことに着目しそれをていねいに学習するというスタイルなので、分からないところで立ち止まるのは当然のことでしょう。そして、こうしたスタイルで学習する時期は必要ですが、それが学び初めとなるのは効果的な方法とは言えないでしょう」。

伝える経験と通じる喜びがコミュニケーションの原点

玉川学園がめざしているのは、英語の読み書きや聞き取りのスキルを上げることでだけはありません。英語でのコミュニケーションの素地をつくることです。中でも重要と考えるのが“自ら発信する力”。子供たちが、伝えたいことを伝えられる経験と通じる喜びを感じることでコミュニケーションの素地をつくっていくのです。

「3年生では、『My Dream House』という単元があります。これは、A3の用紙を敷地に見立て自分の夢の家を自由に描かせ、それを英語で説明させるというものです。サッカーや野球のグラウンド、プールがあったり、趣味の部屋があったりと、個性豊かな夢の家を英語で表現していきます。そのときに、それぞれを英語で何というかを覚えていきます。それが自分の知識となり、語彙数を増やし異なる表現を知ることにもつながっていきます。こうした教育は、マンツーマンの英語教室などでは体験できないダイナミックな学習と言えるでしょう。また、1年生では姉妹校のハーカー・スクールとテレビ会議を行い交流の場を設けています。外国の人々と直に触れあうことは、もっと知りたい、そこへ行ってみたいという好奇心を持つきっかけになる経験ですし、異文化を理解することにもなります」

視野は確実に世界に広がっていく


こうした玉川学園の英語教育の成果について小川教諭に尋ねたところ、「数値では表せない“子供たちの関心”につながっていると思います」と答えてくれました。
「玉川が加盟している『ラウンドスクエア』で、世界中の人がこのキャンパスを訪れます。一緒に授業を受け、子供たちはいろいろな質問を英語ですることもできます。5年生でハーカー・スクールとの交換訪問プログラムに参加し、環境学習の一環としてヨセミテ国立公園に行くことも可能です。6年生では留学生とともに箱根を訪れる機会も設けています。身近に外国に触れられる学習環境が整う玉川だから実現できることでしょう。また、小学部で外国人教員5名、日本人教員4名の9名が指導にあたるなど、英語科の教員スタッフが充実していることも成果を後押ししています。加えて、担当教員の英語力の見直しや英語だけでの授業など質の向上も同時に図っています。さらに、海外の大学を含めた幅広い進路に対応できるカリキュラムを取り入れたインターナショナル・バカロレア・クラス(IBクラス)の進学やハワイのサマースクールへの参加、英検の受検など、“自分のやりたいこと”をサポートする体制も整っています。

7年生(中学1年生に相当)以降の生徒たちも多数海外留学を経験しています。2012年度は290名が海外へと出向き、207名の留学生が玉川のキャンパスを訪れています」という小川教諭によれば、読み書きのレベルに口述のレベルが追いついていないのが日本の現状なのだとか。「話す=発信」は、「見る」「聞く」「読む」「書く」を結集した最終的な段階だそうです。そして大切なのは、“空気を読んで理解する”日本語から“主語をしっかりと把握する”英語へのスイッチ・オン。このスイッチを持つことが、英語でのコミュニケーションの本当の第一歩になるとのことです。