科学するTAMAGAWA 第2期目を迎えるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)

2013.08.23

「科学技術立国」を掲げる日本。そうした明日の日本を支える人材、
これからの科学系技術人材を育てる取り組みであるSSH。
玉川学園は2期連続して文部科学省より指定を受けており、
2012年度までの第1期(5年間)の経験とノウハウを
第2期目に活かす取り組みが始まっています。

第2期目を迎えたSSHは基礎固めから発展段階へと進化

子どもたちの理科離れは近年における教育の課題といわれています。科学技術が発達した時代に生まれたために、ユーザー・消費者としては積極的に関わるものの、科学技術の探究までには関心をもたないことも一因とされています。これは日本だけの問題ではなく、先進各国においても同様の傾向が見られます。そうした状況に歯止めをかけるため、各国では科学技術政策の重点課題として理数系教育の充実を図り、科学技術分野の人材の育成と確保に力を入れています。

日本においては、課題研究を含む先進的な理数教育を実施するとともに、高大連携での共同研究、国際性を育むための取り組みなどを推進する「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」が、文部科学省による支援・協力のもと2002年度より開始されています。
玉川学園では、2008年度よりこのSSHに取り組み、2013年度より第2期目がスタートしています。 SSHの担当であり、高学年の理科の担当でもある森研堂(もり けんどう)教諭に、玉川学園における第1期(2008年度~2012年度)および第2期(2013年度~)SSHの取り組みやその目的、課題や今後の取り組みなどについて話を聞きました。

「玉川学園でも、SSHの理念・目的である“先進的な理数教育・科学技術教育を通じた将来の科学者の育成”をめざしていることは変わりありません。その中にあって、課題研究や高大連携での取り組み、実践研究など独自のプログラムで、“生きていくために必要な力を伸ばす”のが玉川のSSHだと考えています。SSHでは、科学分野の最先端に触れる機会に恵まれます。早期から触れることで、現在学んでいることが今後どう活かせるのかを意識することにつながり、将来のビジョンをある程度、明確化していけるメリットがあります。一方で、与えられた課題をクリアすることに追われることもあり、どこに問題があるのか、どう解決すべきかといった“考える”時間やプロセスが不足していたのではないか、ということが第1期目の反省でもあります」

創造力と批判的思考力を学習と日常生活の両面から修得

第2期目は、これまでのカリキュラム開発を基礎として、より実践的な研究開発を行う「実践型」として指定を受けています。本学が5年間を通して取り組む研究開発課題は“国際バカロレア教育を参考にした創造力と批判的思考力を育成する学び”です。
「玉川学園では7年生(中学1年生)からIB(国際バカロレア)クラスを導入しています。SSHにおいても、その指導法や評価基準を参考に、“疑問を解決するにはどうしたら良いのか?”を自らが考えて身につけるプログラムを展開していきます。授業はもとより研修などの中にもSSHを取り入れ、考える力を多くの実践から身につけられるよう、明確な目標を提示します」

では、研究開発課題として掲げている「創造力」と「批判的思考力」の育成には、何が必要なのでしょうか。森教諭はこう答えます。「まずは、自分自身の意識や行動を客観的に把握する能力(メタ認知能力)が必要となります。そして次に、客観的にとらえて習得した知識や理解を文字などで表現する力です。自分で考えるというプロセスは自分自身のキャパシティを広げることにつながります。」

玉川学園では、具体的に4つの研究課題を重点に置き、以下の 科目の中で、創造力と批判的思考力の育成をめざしていきます。

課題研究 学びの技、SSHリサーチ科学、SSHリサーチ脳科学、知の理論
教科連携 数理科学(数学ⅠA+Ⅱ 物理基礎)、理系現代文、PL英語表現Ⅰ(PLコース※1
構成主義的授業 理科(生物・物理・化学)
高大連携 玉川大学・脳科学研究所との連携、玉川大学をはじめ、他大学および企業の研究者による講話、研究施設見学
  • 110~12年生(高校1~3年生)を対象に、理数系と英語を重視したカリキュラムによる特別コース
「学びの技」ポスターセッション
「SSHリサーチ脳科学」授業風景

「課題研究に挙げている9年生(中学3年生)の学びの技は、毎年11月に発表会としてポスターセッションを開催しています。そこでは、問の立て方や情報収集、発信・表現・プレゼンテーション、ディベートなどの探究スキル向上を目的として実施しています。また、選択科目のSSHリサーチ科学とSSHリサーチ脳科学では、これまでとアプローチを変更し、生徒が選んだ研究テーマに対して、生徒自らが計画を立てて進められるよう工夫していきます。教科連携は、簡単に言うならば複数科目のコラボです。数理的なものの考え方で現代文を理解する“理系現代文”のほか、数学と物理を組み合わせた科目など、授業だけでなく教材化も視野に準備を進めています。構成主義的授業は、カリキュラムの明確化を企図したものです。どのような目的で何をどう学ぶのかが見えることで、理解度を高めていきます。高大連携については、これまでも玉川大学農学部や玉川大学脳科学研究所 などとしっかりと連携を図ってきましたが、さらにその連携を強化していく予定です」と語る森教諭。

玉川のスケールメリットが育む“社会で生きていくために必要な力”

重点に挙げた4つのうち、とくに課題研究と高大連携については“学園としての懐の深さ”が問われるもの。幼稚部から大学院までがワンキャンパスにあり、大学や大学院ではそれぞれの分野で最先端の研究が最新の設備機器のもと行われ、生徒が研究員から研究アプローチや実験手法を教授や研究員から直接指導を受けることができるという、玉川ならではの環境が最大限に活かされます。また、SSHリサーチ科学やSSHリサーチ脳科学、さらには科学系のクラブ活動など、学びたいこと・研究したいことを多彩な選択肢から選べることも、玉川がもつスケールメリットでしょう。大学農学部の体験授業として毎年開かれているサイエンスサマーキャンプでは、2013年度は大学6号館(Science Hall)にて、『カフェインの抽出、精製と分析』『ミツバチの学習体験』が実施されました。 興味深いプログラムで、参加希望者も年々増えています。

サイエンスサマーキャンプ「カフェインの抽出、精製と分析」
サイエンスサマーキャンプ「ミツバチの学習体験」
「SSH生徒研究発表会」練習風景

また、10年次(高校1年次)に参加したサイエンスサマーキャンプをきっかけに、1年以上もの研究を重ね、8月上旬に開催されたSSH生徒研究発表会で、多くの高校生や研究者を前にその成果を発表した生徒もいました。他にもコンテストに向け論文作成をする生徒、クラスメイトや後輩たちに向けた発表のために実験・研究を続けている生徒など、一人ひとりがそれぞれの進め方で学びたいことを極めています。

そんな生徒たちを見守るのが森教諭をはじめとする教員スタッフ。
「研究内容やテーマは個人個人によって異なりますが、物事を前に進めるためのプロセスや探求するおもしろさ、考える楽しさと大切さを知る機会になっていると思います。そのような機会をSSHでも増やしていきたいと思っています。社会で生きていくために必要な力とは、今、自分に必要なものを見極める客観的な目であり、自らが主体となって創造していく力であり、自分の意見を述べ文字として表現できる力でもあります。そうした力を身につけてもらうために、教員スタッフが一人ひとりをサポートし、生徒の理科への関心を高め、理科教育をますます充実させていきたいと考えています。」