科学するTAMAGAWA 自学自律の力を育む幼稚部の活動

2014.04.25

3〜5歳くらいの時期は、自分で考えたり、人と相談して課題を解決したりするような、
自学自律する力が芽生えるとても大切な時期です。
玉川学園幼稚部では、これまで積み重ねてきたノウハウを活用し、
子供の自学自律を後押しする活動に力を注いでいます。

自学自律する力を育てる

「子供が何かに全力で没頭するのは、その子が自発的に『これをやりたい』と思ったときです」と玉川学園幼稚部長の櫻井利昭教諭は話します。「そのような子供の自発的な活動を、教員の方で完全にコントロールすることは不可能ですし、そうするべきでもありません。子供が、自らの手で興味あることを開拓していけるような環境を整え、子供を後押ししてあげることが、私たち教員の仕事であると考えています」。

櫻井教諭が言うように、玉川学園幼稚部では、子供が自発的に何かに取り組める機会を豊富に用意しています。その積み重ねはやがて、自学自律する力を育み、その後の学習をより実りあるものへと変え、社会に貢献できる力を身につけることへとつながっていきます。今回は、そんな幼稚部の取り組みと、その意義についてご紹介します。

子供の成長に見合った道具立てを

「子供が本当に自発的に取り組むための環境を用意するのは、簡単なことではありません。しかし、教員が自分の考えだけで『これが楽しいはずだからやりなさい』では、子供の自学自律する力にはつながりません。『楽しい』とか『わかった』という感情は、人から与えられるものではないからです」と櫻井教諭。そこで、玉川学園幼稚部では、これまで積み重ねてきた教育のノウハウを活用し、子供が自分から活動に取り組めるような道具立てを用意します。

「例えば、あるとき恐竜ごっこに夢中になっている子供たちがいました。そこで、玉川大学農学部からダチョウの卵を譲り受けて園庭に置いておき、子供たちを何気なくそこに連れて行ったのです。教員がするのはそこまで。卵を見つけた子供たちは、『これは恐竜の卵だ』『いや違うよ』『温めてみようか』と自発的に議論をはじめます。もちろん、温めても孵化(ふか)するわけではないので、最終的にはその卵を使ってホットケーキをつくり、みんなで食べました。そうすると、子供たちは満足して、次の興味へ向けて進んでいけるのです。このように、ただ与えられた課題をこなすのではなく、自ら考えたり、他人と議論したり、いろいろ試したりして、その結果満足するような経験が必要だと考えています」。

5歳児合宿の様子

もちろん、教員が用意した環境に、必ずしも興味を示すわけではありませんし、自発的に取り組んでもうまくいかないことも当然出てきます。「玉川学園幼稚部では、年長児が園に1泊する5歳児合宿が恒例になっていて、食事やお風呂、寝具の手配などを、グループに分かれて子供たちが担当します。もちろん、安全面などには教員が配慮しますが、計画自体は子供たちに考えてもらっています。ある年の朝食グループは、『パンがいい』『ご飯がいい』と、最後までメニューが決まらずにいました。結局、買い物に行くときになっても決まらず、最終的には一方の子供が『じゃあ、もういいよ』と折れる形になりました。このように、うまくいかないときに、気持ちを切り替えることを学ぶのもとても大事です。こうした経験を積むことで、“問題が起きたとき、どうすれば解決できるか”が、わかってくるのです」。

チャレンジ精神を伸ばす取り組み

玉川学園幼稚部では、小学校への進学を控えた年長の9月から週3回、チャレンジプログラムという取り組みを用意しています。これは、主に「言語面のスキルアップ」、「運動感覚の育成」、「数量的思考の獲得」の3つを目標に、子供たちの知的欲求を満たし、小学校の学習につなげる取り組みです。「この頃になると、子供たちは自分で目標を設定し、そのハードルを越えることに喜びを見出すようになります。そこで教員の方で課題を提供し、子供の自発的なチャレンジを後押しするわけです。小学校に上がれば、否応なしに授業に取り組まなければなりません。『国語が嫌いだからやらない』とはいかないのです。こうして教員から与えられた課題にチャレンジする経験を積むことで、小学校から始まる学習への準備になるわけです」と櫻井教諭。

「例えば、言語面ではしりとりや逆さ言葉などに取り組みます。あるときは、『しりとりのだいすきなおうさま』という絵本を読んで、実際にしりとりをしてみようということになりました。最後に『し』ではじまって『ん』で終わる食べ物を答えることになったのですが、順番が回ってきた子は思いつきません。すると『みんなに聞いていい?』といって、相談をはじめました。ああでもないこうでもないと議論していると、ある子から『白いごはん!』という答えが上がり、みんなが納得して終えることができました。このように、この年代の子供たちは、自分たちで努力したり相談したりして、問題を解決する手段を探るようになります。教員としては、それに見合った課題を与えてあげることが、とても大切だと考えています」。

ワンキャンパスで学ぶメリット

玉川学園の特徴の一つに、幼稚部から大学院までがワンキャンパスで学んでいる点が上げられる、と櫻井教諭は話します。「大学のミツバチ科学研究センターではちみつを搾る様子や、芸術学部が取り組む太鼓パフォーマンスの見学、中高のブラスバンド部の演奏を聞く機会など、さまざまな交流の機会を用意しています。もちろん、ミツバチを見に行った子が農学部へ進む、というほど単純なものではありませんが、その子の心に何かしら残り、それが後になって学びや進路につながっていくこともあるはずです。実際、いま中学校でハンドベルをやっている生徒の中には、『幼稚部で中高生のハンドベルの演奏を聴いたときから、自分でやろうと決めていた』という子もいます」。

幼稚部と小学部で教員の異動があることも、メリットのひとつになっています。「玉川学園では幼稚部から小学部4年次までをひとくくりとして、教員が行き来しています。したがって、多くの教員はお互いの教育内容や意図を理解していますので、幼稚部から小学部への非常にスムーズな移行が可能です。また、子供たちにとっても、小学部の教員と普段から交流があるため、小学校進学時に安心して臨めるという利点があります」。

この時期にしかできない保護者のかかわり方

最後に、教育のスタートとなる幼稚園の選び方について櫻井教諭に聞くと、次のような答えが返ってきました。「幼稚園だけで選ぶのではなく、子供の一生を見たときに、その子が本当に自分で考え、行動できる人間になれるかどうか、そのスタートとしてふさわしいかどうかということを、考慮していただきたいと思います。また、現在長時間保育ができる施設を選ぶケースが増えていますが、子供の自学自律する力の芽生えとなるこの時期に、保護者が関わらなくて本当によいのかという点も、考えていただきたいです。玉川学園幼稚部では、保護者の方に送り迎えやお弁当の用意もしていただいており、そのご負担は大きいと思います。ただ、子供と手をつないで歩ける時期は、そう長くはありません。3年間で約600回、子供と手をつないで歩いた経験が、子供の成長に意味がないはずはありません。この時期にしか、できないことがあるという点も、よく考えて幼稚園を選んでいただければと思います」。

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