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科学するTAMAGAWA 自然を直に感じ、本物を経験することで、 子供たちの成長を促す林間学校

2014.08.22

玉川学園小学部では、3〜6年生で宿泊学習を行っています。
その中で、4・6年生が取り組む玉川伝統の林間学校は、
大自然を直に体感し、本物にふれる活動を通して、
子供たちを一回り成長させる貴重な機会となっています。

子供たちの成長の場として

玉川学園の小学部では、3年生から6年生までのすべての学年で、宿泊学習の機会を設けています。ただし、それらはたんなる思い出づくりなどではありません。大自然の中に飛び込みその厳しさや美しさに触れ、また、周囲の人たちと助け合いながら過ごすことで、子供たちが人間として一回り大きく成長するための、大切な行事なのです。

 

その中で今回は、7月に行われた4年生・6年生の林間学校を取り上げます。そこではどのようなことが行われているのか、子供たちはそこでどう成長していくのかについて、4年生担当の溝口広久教諭、6年生担当の飯塚克仁教諭にそれぞれお話を聞きました。

主体性を重んじる4年生

4年生の林間学校は、八ヶ岳の麓にある富士見高原にて行われます。「4年生の林間学校の目標は、自分自身をしっかり律しながら、周囲の友達のことも考え、また、先生とも協力してさまざまなアクティビティに挑戦することです」と溝口教諭は話します。「同時に、ふだんから学校でも意識して学んでいる『自然環境』について、八ヶ岳の麓という大自然に、直に触れて学んでほしいという思いもあります。また、4年生はこのあと1月に、5年生と合同でスキー学校も行います。そこは、−10℃を下回る厳しい世界。その前段階として、この林間学校を通して心身ともに鍛えていくというねらいもあります」。

現地では、13の体験活動コースを用意しています。子供たちはその中から興味に応じて1つのコースを選び、2日間を通してじっくり取り組みます。「たとえば、ダイレクトに自然と触れあう『リバー・トレッキング』というコースがあります。高原を流れる川に入り、登りと下り合わせて約2時間のトレッキングを行います。そのための装備も、指導者から説明を受けて自分たちで準備します。水温は3℃。装備をしっかり整え、仲間とも連携しながらでないと、かなりきつい行程です。トレッキングを終えると『やればできるんだ!』と、子供たちは胸を張りますよ」。

ほかにも、藍を使って布を染め自分だけの作品をつくる藍染めコースや、自分たちで野草を摘み、植物の特性を学びながらドライフラワーをつくる園芸コース、黒曜石を使った矢じりやペンダントづくりなどを通して、縄文人の生活を疑似体験する縄文体験コースなどが用意されています。「3年生の宿泊学習では山中湖の自然をみんなで一緒に楽しみます。その体験をベースに、4年生では自分でコースを選び、主体的にアクティビティに取り組むことを重点に置き、このような豊富なコースを設けているのです」。

リバー・トレッキング
園芸
縄文体験

小学校生活の集大成となる6年生

一方、6年生の林間学校は、群馬県の丸沼で行います。関東地方で最も高い白根山登山や、尾瀬ヶ原のハイキングなどに全員で挑みます。「玉川学園小学部では、ふだんから環境を意識した学びを展開していますが、その完成となるのが6年生の林間学校です。したがって、尾瀬ヶ原の環境はどのように守られているのか、そこに自分たちはどう関わればいいのかといった、環境学習の側面も強くあります。林間学校に行く前には、大学の学生環境保全委員会のメンバーを招き、水や湿原の重要性、そこに住む生物などについての学習も行っています」と飯塚教諭。

そこで大切なのは、本物を自分の目で見て、自分の手で触れることだと続けます。「4年生の縄文体験などもそうですが、いくら歴史を勉強しても縄文時代の暮らしがどんなだったか、たとえば、黒曜石のナイフがどれだけ切れるのかは体験してみないとわからない。環境学習についても同じです。尾瀬の林道や白根山の登山道は、現地の人々がボランティアで整備しています。それがいかに大変なことなのか、どれほど価値があるものなのかは、自分たちの足でそのつらさを体験してみなければわかりません。このように、子供たちにはできる限り本物を体験させたいと考えています」。

また、いましかできないことを経験してほしいともいいます。「6年生の宿泊学習というと、たとえば日光の戦場ヶ原や華厳の滝、東照宮をめぐる修学旅行が一般的です。でも、それは家族旅行や大人になってからでも十分できます。でも、この時期に、関東で最高峰の白根山に登る経験は、いましかできません。約3時間をかけての登山は、6年生にとっては相当きついはずです。それにチャレンジし、仲間と助け合いながら登り切ることは、その子にとって大きな自信になるでしょう。卒業生に話を聞くと、この6年の林間学校のことを良く覚えていることが多くあります。そのくらい心に残る小学校生活の集大成となるのが、この林間学校なのです」。

学生環境保全委員会による環境学習
白根登山
尾瀬ヶ原のハイキング

原点にあるのは玉川学園の塾教育

この林間学校を経験すると、子供たちには大きな変化が見られるそうです。「4年生の場合自分でコースを選ぶので、違うクラスの子とも一緒にアクティビティを体験します。すると、そこに新しい人間関係が生まれます。3年生くらいだと、たとえばどっちが2段ベッドの上に寝るかで喧嘩したりするのですが、4年生になると、『私が下でいいよ』といった譲り合いの場面も見られます。このように林間学校は、子供たちなりの人間関係を学ぶ場にもなっています。また、生徒と教員との距離も変わります。学校の中では、教員は生徒と対面で話すことが多いですが、林間学校では、生徒も教員も同じ目線で自然を体験します。そうすると、子供と教員の距離が一気に縮まり、その後の学習にも良い影響が生まれます。林間学校後の日記に『恐い先生だと思っていたけど、林間学校で話をしたら、やさしい先生だということがわかった』と書いていた子もいましたよ」と溝口教諭。

6年生になると、子供たちの態度もぐっと大人になると飯塚教諭。「お互いに譲り合ったり、登山のときには『あと半分だぞ!』と声をかけ合うシーンがよくあります。やはり、3年生から経験してきた積み重ねがあるからでしょう。自分の気持ちを押し通すだけでは、物事はうまくいかないということを知っているんです。逆に3・4年生のうちは、大いに失敗してほしいと思っています。そういう経験が、子供たちの成長の糧になるのです。こうした教育の原点にあるのは、玉川学園の塾教育です。玉川学園にはかつて塾があり、教師と児童生徒が24時間の生活を共に過ごす中で『人を育てる』教育を行ってきました。林間学校のような宿泊行事にはそういった玉川教育の原点があるのだと考えます。集団で生活を共にするということは、わがままも許されませんし、お互いに助け合うことがどうしても必要です。そのように日常レベルの生活をともにすることで、教室の中だけでは見えない人間性、根っこの部分が見えてくる。それがお互いの刺激になり、子供たちの成長を促してくれるのだと考えています」。

伝統を継承しさらに発展させるために

林間学校は玉川学園の伝統行事であり、特に丸沼での林間学校は50年近く続けられていると飯塚教諭は話します。「当時の教員が林間学校に適した宿を探し、以来ずっとその宿に宿泊しています。登山は22年間同じ方にガイドをしていただき、現在はそのお弟子さんがガイドを務めてくれています。4年生のアクティビティでも、藍染め、園芸、林業などの専門家に依頼し、本物の経験ができるよう継続して担当していただいています。これだけ積み上げてきたノウハウがあるからこそ、この林間学校は実現できるのです。ほかの学校で同じことをやろうとしても、その実現には長い年月がかかると思います」。

それは安全管理にしても同じだと溝口教諭は続けます。「4年生の林間学校では、エリアを大きく2つに分けて、それぞれ万が一のときに搬送する病院や夜間診療ができる病院を確保しています。また、各エリアに強い地元のタクシー会社を手配し、緊急時にはすぐに搬送できる準備もしています。このように、長い年月の中で培ってきた安全管理についてのノウハウを私たちはもっています。いまでこそ白根山に登る小学校もありますが、その先駆けとなったのは玉川学園ですからね。このノウハウを若い世代の教員に伝えていくことも、とても大切だと考えています」。

最後に、これからの林間学校の展望について飯塚教諭は次のように話します。「近年では安全管理、危機管理の問題もあり、あまり冒険的な企画はできなくなってきています。もちろん安全面は万全を期さなければいけませんが、その上で、できるだけハードな経験を子供たちにはさせていきたい。それが子供たちの成長につながると考えています。そのためには、我々教員も自然を直に体験して、自然のことを知る必要があります。ですから、毎年必ず若い教員と一緒に行き、伝統を次の世代に伝え、それを発展的に継承していくことが年長教員の務めだと考えています」。

4年生林間学校 13の体験活動コース紹介 6年生林間学校 行程

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