科学するTAMAGAWA 子供たちの主体性を引き出すMMRC

2015.07.24

「自学自律」を教育理念の一つに掲げる玉川学園では、
アクティブ・ラーニングが注目される以前より、
児童・生徒が主体的に学ぶ活動に力を注いできました。
その拠点となっているのが、学園マルチメディアリソースセンター。
総合情報図書館・情報センターとして2006年にオープンし、
以来、日々の授業や自由研究、自学自習に大いに利用されています。
今回はマルチメディアリソースセンターの機能と、それを活用した学習活動についてご紹介します。

学園全体の学習支援施設として

玉川学園では小学校から高校までを従来の6・3・3制ではなく、子供の発達段階に応じた4年ごとの区分(低学年=小学1〜4年生、中学年=小学5〜中学2年生、高学年=中学3〜高校3年生)としており、それに幼稚園(kindergarten)を加えたK-12というしくみで、学年間の連携を図りながら教育を行っています。そのK-12の運用開始と同時期に誕生したのが、学園マルチメディアリソースセンター(以下、MMRC)です。K-12の学習を総合的に支援する施設として設置されたと岡田洋介学園マルチメディアリソースセンター長は話します。

「MMRCには幼稚部から高学年までの多様な教育活動に対応できるようエリアがデザインされています。また、現在はマルチメディアの時代であり、学校図書館は静かに読書をするためだけの場所ではなくなってきています。そこでMMRCには、意見交換をしながら協同学習できるスペースを用意し、さらには音や映像などのメディアを活用できる新しい機材が豊富に用意されることになりました。これらのツールを子供たちがうまく使えるように、そして先生方が授業や自由研究の場としてMMRCを活用できるよう支援を行っています」。

こうした設備や機材を活用して行われているのが、探究学習やアクティブ・ラーニングといわれる学びだといいます。
「特にここ数年、玉川学園では『主体的に学んでいく力=ラーニングスキル』を育成する目的で『学びの技』という探究型の授業を、幼稚園から12年生までの全学年で展開しています。
そして、MMRCは学びの技の研究センターとしての役割も担っており、その授業に必要な機材の導入、ユーザーズガイドの作成、施設の使用ガイダンスなど、多岐にわたるサポートを提供しています」。

ラーニングスキルの育成を支援する施設・機材

学びの技は、生徒自らが調べ、まとめ、それを人にわかりやすく伝える経験を通して、ラーニングスキルを育てることを目的としています。
「もともとMMRCもラーニングスキルを育てることをコンセプトに設計されており、学びの技を実施するのに非常に適した環境が整っているのです」と語るのは、MMRCの伊藤史織司書教諭です。

「たとえば、マルチメディアシアターという部屋はガラス張りになっています。これは“空間から学び合う”ことを狙いとしていて、 中で行われている授業を外から児童・生徒が見たときに『先輩はこうやってPCを使っているんだ』ということがわかったり、あるいは、教員が他の授業のやり方を見て参考にできるようにとの配慮です。また、防音の部屋も用意されていて、静かに本を読む学習と、ディスカッションやプレゼンテーションの練習、映像を使った学習などが両立できるようにもなっています」。

ほかにも、グループ・ワークがしやすいようにすぐに移動できる机が用意されていたり、ホワイトボードやプロジェクタのスクリーンとして活用できるグラスボードが設置されるなど、各所に工夫が凝らされています。
「ノートPCも70台用意されており、無線LANが館内のどこでも使えます。従来は本を読むなら図書館、PCを使うならPCルームといった場所の移動が必要でしたが、MMRCなら場所に限定されず、調べ物もディスカッションも教え合い学習も映像学習も対応できるよう、利用者主体のデザインになっているのです」。

すべての学年・教科の教員が、学年に応じて
読んでほしい本を100冊ずつ紹介している。

もちろん、書籍や検索データベースも充実しています。蔵書は5万冊を超え、分野ごとに分類しています。同じテーマのものが近くに並ぶので、もっと知りたいと思えば上級学年対象の本も借りることができます。
「また、選書についても司書教諭・国語科教諭を中心とした図書・読書委員会での選定だけでなく、先生や生徒からのリクエストはもちろんのこと、シラバスや自由研究・学びの技のテーマ一覧をあらかじめ入手し、関連図書を準備して、生徒が探しに来た時にはすぐ手にとれる体制を整えておくことを目標としています」。
「データベースは9件登録しており、利用頻度は一般の大学よりも活用されている件数が多いとデータベース管理会社からお話しを聞いたときはびっくりしました」。
また伊藤教諭は、稼働以来MMRCの利用者は確実に増加しているとも話します。
「たとえばマルチメディアシアターは、約7割の稼働率を誇っています。さらに放課後には、調べ物や課題に取り組む児童・生徒の姿もよく見られるようになりました。特に、世界を舞台に活躍できる人材育成を目的に設置されている国際バカロレア(IB)クラスの利用率は非常に高く、英文データベースを活用した授業を行ったり、StudyHall(自学自習)の時間を利用して自分の研究課題に取り組む生徒も非常に多くいます。このように、MMRCの充実した施設・機材を活用した探究型の学習を展開することにより、児童・生徒の主体的に学ぶ力は着実に養われていると感じています」。

理科教育にとどまらないプラネタリウム

玉川学園にはプラネタリウム「スターレックドーム」が設置されていて、その運営もMMRCが担っています。そしてここもまた、探究学習、アクティブ・ラーニングの場となっていると、MMRC非常勤研究員でプラネタリウムを担当する樋泉あき研究員は話します。

「プラネタリウムがある学校は全国に多くありますが、玉川学園ほど多く活用されている学校はめったにないでしょう。というのも、玉川学園では私のような専門職員はもちろん、理科の教員もプラネタリウムを使って天文の授業を行いますし、児童・生徒が自らプラネタリウムを操作する授業や自由研究も展開しているからです」。
では、具体的にどのように授業や自由研究を行っているのでしょうか。樋泉研究員は続けます。

「プラネタリウムには操作をしながらその場で解説するライブ番組と、ナレーションを録音し、動きをプログラミングして再生するオート番組があり、自由研究では、中学年でライブ番組を、高学年ではライブ・オート両番組の制作を行っています。解説するストーリーは、日本神話をテーマにしたもの、地球温暖化を解説するもの、宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』を題材にしたものなど、子供たち自身の興味によってさまざまです。月食がある年にはそれを題材に、月食の時にどうして月が赤く見えるのかを科学的に解説したり、昔の人は月食をどのように捉えていたかという民俗学的なテーマで番組を構成する子供もいました。プラネタリウムというと天文の学習に特化した施設だと考えられがちですが、玉川学園ではこのようにさまざまな教科を横断する形で活用されています。それも、自らテーマを決め、見る側の視点に立ってストーリーを考え、暗闇の中で星と自分の声だけで内容を伝えるわけですから、プラネタリウムは探究学習の教材としてまさに最適だといえるのです」。

他にも、幼稚部から大学院まで様々な活用をしています。幼稚部や低学年の子供たちが夏や冬の星座を学びに訪れたり、中学年では、6年生・8年生が理科の授業で活用。高学年では、自由研究での活用がメインですが、12年生では天文学に特化した選択授業もあります。大学では、1年次セミナーで見学にくる学部も。そのほかにも地域の幼稚園・保育園・小学校等に開放し、年間延べ5000人が利用しています。
「どのような取り組みでも、どの学年でも、プラネタリウムを使った学習に子供たちは大喜びで取り組みます。学年があがると理科離れが進むといわれますが、こういうワクワクするような体験をしていると、学年があがっても“天文現象は楽しい”という感覚をもったまま、成長してくれるのではないかと思います。実際、プラネタリウムでの学習を経験した高校生で、『下校中、西の空に浮かぶ月の形や高さの変化に気づくようになった』と話してくれた生徒もいます。プラネタリウムでの経験が、実際の空に興味を抱くきっかけになっているのです」。

さらなる学習支援の充実に向けて

プラネタリウムには、この8月に最新鋭のデジタル式映像投影システムが導入される予定で、さらなる活用が期待されています。
「新しい機器は解像度が従来の2Kから8Kに上がる(より鮮明になります)うえ、コントラスト比が向上したことで、黒がより濃く見えるようになります。これにより、街の明かりが一切ない山の中で、美しい星空と対峙するような空間を再現できます。“本物を経験させる”ことは玉川学園の教育方針の一つですが、まさにそれを実現できる施設になると思います。また、NASAがもつ地球環境関連データや気象情報などがプリセットされているため、社会科などの学習にも、より効果を発揮するようになるでしょう」と樋泉研究員。

他にも、プラネタリウムを投影しながら、その中にPCの画面を表示できるライブキャプチャー機能や、タブレットに表示した画像をスクリーンに向かってスワイプすると、画像がその方向に表示されるドームスロー機能など、授業に活用できるさまざまな機能も追加されるとのこと。
樋泉研究員は「これにより、今以上に多くの教科で活用できる施設に生まれ変わると思います。操作もより感覚的になるので、ぜひ多くの子供たちに操作する機会をもってもらい、プラネタリウムで遊びながら、天体への興味や、さまざまなラーニングスキルを培ってほしいと思います」と話します。

一方、MMRC自体は今後どのように運営・発展していくのか。岡田学園マルチメディアリソースセンター長は次のように語ります。
「引き続き学習支援に力を注ぎ、授業でも、自学自習でも、より便利に活用できる施設にしていきたいと考えています。資料・インフラ面の充実はもちろんのこと、学びの技を中心としたラーニングスキル育成ための研究活動も展開していきます。そのために最新のタブレット端末をどのように授業に取り入れていくかなど、新しい機材の導入方法も検討していきます。また、MMRCは学校図書館の役割を担っているため、デジタル書籍をどのように導入していくかもここ数年の検討課題です。
MMRCを利用する子供たちの様子を見ていると、紙とデジタルを区別することなく、当たり前のように双方のメディアを使いこなしています。そういう今の子供たちのニーズを汲み取り、子供たちが何かを調べたいと思ったときにすぐ調べられる環境、何かを使いたいと思ったときに使える環境を整えていきたいと思います」。