科学するTAMAGAWA 玉川大学チーム、RoboCup(ロボカップ)世界大会へ

2016.07.19

世界から35以上の国、約3000人の参加者が集い6月30日に開幕を迎えるRoboCup 2016 Leipzig(第20回世界大会)。この大会に、K-12から2チーム、大学からは2チームの出場が決定しました。大学から出場が決まったチームeR@sers(イレイサーズ)は、3度目の頂点をめざしています。世界大会を目前に、その意気込みを語ってもらいました。

ロボカップ強豪大学としてのプライドをかけて

日本初のロボットアニメ『鉄腕アトム』の舞台は「21世紀の未来」でした。その21世紀となった現在、当時描かれていた以上の技術発展を見せています。ロボットというと、人や動物に近い形と機能を備えたものというイメージが強いですが、産業や軍事などで自動作業を行う機械としての実用から、サービス分野、医療・福祉分野、エンターテインメント分野などでも注目され、さらに、宇宙空間や深海など人間が介在し得ない場所での調査・探索の手段としても活用されています。
本学では、「玉川ロボットチャレンジプロジェクト(TRCP)」として2006年からK-12と大学が協力して本格的な研究がスタートし、ロボット研究発展のために、ロボットを使ったさまざまな競技が行われる大会、ロボカップに参加してきました。その指導を担当するのが、玉川大学工学部機械情報システム学科の岡田 浩之教授です。

「ロボカップは日本のロボット研究者たちが提唱し、『2050年に人間に勝つロボットのサッカーチームをつくる』をコンセプトに、1997年に第1回の世界大会が名古屋市で開催され、翌年にはジャパンオープンも開催されるようになりました。現在ではその規模も参加人数も大きくなり、開催当初のロボカップサッカーのほか、ロボカップレスキュー、ロボカップ@ホームなど競技種目(リーグ)も細分化され、子供たちを対象とした、次世代のロボット開発者を育てるロボカップジュニア部門もつくられています」

過去の大会より

玉川大学では、2006年と2007年にペットロボットAIBO(ソニー 開発)を使った四足ロボットリーグに参加し、2008年より、新たなリーグとして設立されたロボカップ@ホームに参加。ロボットの名前“eR@ser”をチーム名にしたeR@sersがジャパンオープン、世界大会ともに優勝し、ジャパンオープンでは2010年大会まで3連覇、世界大会でも2010年と2012年に優勝、2009年と2012年に2位という華々しい実績を有しています。
「アメリカ合衆国やドイツといった工業先進国が伝統的に強く、さらに近年では中国やシンガポール、タイ、イランなどの台頭も著しく、簡単に優勝できるリーグではない」という岡田教授は、ロボカップ日本委員会専務理事も務めています。

高度化するタスク(課題)複雑化するプログラムに挑む

出場するロボットeR@ser
(トヨタ自動車との共同開発)

eR@sersがエントリーしている@ホームリーグは、家庭や生活におけるさまざまなサービスを課題(タスク)として設定しているのが特徴で、棚に置かれたペットボトルを間違えずに人の元へ運んだり、レストランで注文を受けたり、留守番をしたりといった10種目で競います。課題クリアのためには、部屋の移動やドアの開閉、対象物が置かれた位置の確認、指定された物をつかみ保持する、など複雑なプログラムが必要になります。
「昨年まではロボットそのものも自作していましたが、今年度はトヨタ自動車とのコラボレーションで、共同開発しています。そのぶん、ロボットそのものの性能が上がりました。寸分たがわず同じ動作ができ、動きをコントロールするプログラムも楽になりましたが、メカが複雑になり、情報を読み取るカメラやセンサーの個数も増え、それらを制御するプログラムも多く大変になりました」

プログラムがどうして複雑になるかというと、その80%が「この条件に当てはまらない場合はどうする、課題が実行できないときはどうするといったエラー処理に費やされている」と岡田教授はいいます。
「もちろん、80%あるエラー処理のプログラムのすべてを使うわけではありませんし、使わないに越したことはないのですが(笑)。ロボット研究は失敗の積み重ねで、“上手くいかない=ロボットが予想通りに動かない”という結果でわかります。その失敗の経験があるからこそ成功につながっていくのです。ロボットを動かす手段であるプログラムは、この条件のときにこう動きなさい、という上手いく場合だけをつくればいいわけではありません。それでは、何か一つ条件が合わなかっただけで、動かなくなってしまうからです。この場合はこう、そうでないときはこう、とさまざまな状況を考え、対応することが求められます。心配性の人のほうがロボットプログラミングの適性は高いかもしれませんね」

2016年のロボカップ世界大会は、ドイツ・ライプツィヒで間もなく開幕を迎えます。「この大会には、ロボカップジュニアの部門で玉川学園の2チームも出場が決まりました。K-12と大学が一緒に世界大会に出場することができることは、念願でもあったのでうれしい限りです。世界一からしばらく遠ざかっているので、この大会で結果を出したいです。来年の世界大会は名古屋での開催が決まっています。それに向けてのいい足がかりになることも期待しています」と、抱負を語ってくれました。

チームとしての情熱と個々の思いをもって大会に臨む

その世界大会に臨むチームeR@sers。工学部機械情報システム学科を中心に8名の学生と大学院生が参加します。メンバーの一人、機械情報システム学科3年の岩淵 佳さんは、物体認識のプログラムを担当しています。

「さまざまな物の特徴点を把握し認識させるためのプログラムに関わっています。レストランでのタスクは、注文された品を並んでいる中から選び出し、手に取り注文先まで届けるといった内容です。世界大会はジャパンオープンよりもさらに難易度が上がり、そこにあるものや指定されるものが当日にならないとわからないなど、不安もたくさんあります。それでも、ジャパンカップ同様、世界大会をめいっぱい楽しんでこようと思っています。入学時からロボットに興味はあったのですが、何もわからない自分がそこに足を踏み入れていいのかという不安もありました。それでも、プログラミングの授業などを通して、動かす仕組みを知り、少しずつできることが増えていったと思います。一般家庭にロボットが普及するにはまだ時間が必要でしょうが、将来、そうしたロボットのつくり手として関わりたいです」

同じく機械情報システム学科3年の長瀬 夕佳さんはロボット研究をしたくて玉川大学を選んだといいます。

「ジャパンオープンではロボナースという競技を担当したのですが、朝早くから夜遅くまで連日の作業に追われたものの、思ったような結果が得られず、“もっとできた”という思いが残っています。世界大会は物体認識を担当します。良い結果が得られるよう、今は目の前にあることに集中して取り組んでいます。色や形、文字などを認識するうえで人間が無意識でやっていることをゼロからプログラムしていく楽しさがあります。ただ、エラー表示などもすべて英語でプログラミングしなければならないので、英語力の必要性も痛感しました。ASIMO(本田技研工業 開発)を見て、いつか自分もつくりたいと思ったのがロボットへの興味の原点でした。その思いをもち、いつか人のためのロボット開発に携わりたいと思っています」

玉川大学工学部3名が、東京工科大学との合同チームでロボカップサッカー部門にも出場!

指導する工学部機械情報システム学科大森隆司教授、
黒子さん、有村さん、根岸さん

さらに今回の世界大会には、玉川大学から3名の工学部の学生が、東京工科大学との合同チーム「Hill Stone」のメンバーとして出場します。ロボカップで最も古いリーグの一つであるロボカップサッカー部門の「シュミレーションリーグ」に参加する学生は、工学部機械情報システム学科の黒子 慎平さん、有村 勇紀さん、根岸 涼平さんの3人。
この競技は実機を使わず、PC上の仮想フィールドで、それぞれのチームの人工知能が互いにサッカーの技を競いあうもの。モニターの中で、2チーム各11人のプレーヤーが、パスやドリブルの技を披露しながら、激しい対戦を繰り広げます。
取り組み状況を聞いたところ、「今回のプログラム開発のポイントは、実際に人間のサッカーの様子を分析して、パス戦術を組み込んでいることです。一次リーグを突破することを目標としています」と抱負を語ってくれました。

前列左から

笠 あかりさん(工学部機械情報システム学科2年)、岡田教授、長瀬 夕佳さん(工学部機械情報システム学科3年)

後列左から

永野 秀明さん(大学院脳科学研究科博士3年)、八木 下明宏さん(大学院脳科学研究科修士1年)、市川 竜平さん(工学部機械情報システム学科3年)、松浦 準さん(工学部機械情報システム学科2年)、横山 裕樹研究員(脳科学研究所)、勝俣 優さん(工学部機械情報システム学科4年)、根元 太晴さん(大学院脳科学研究科修士1年)、岩淵 佳さん(工学部機械情報システム学科3年)

「@ホームリーグ」競技内容