科学するTAMAGAWA 「強く、楽しく、美しく」がテーマの 玉川大学陸上競技部女子駅伝チーム

2012.12.25

玉川大学陸上競技部に女子駅伝チームが結成されて15年。
大学女子駅伝日本一を決定する全日本大学女子駅伝対校選手権大会には
結成翌年の1999年度の第17回大会に初出場。
以来、14回連続で出場を続けています。

チームのテーマは「強く、楽しく、美しく」

女子駅伝チームの部員は現在37人(4年生4人、3年生11人、2年生14人、1年生8人)。全日本大学女子駅伝対校選手権大会では、いまや欠かせない存在となりました。白いユニフォームとピンクのタスキをトレードマークに、今年も杜の都・仙台を駆け抜けました。 今回は、結成時からチームづくりに関わってきた川崎登志喜部長(教育学部教育学科 教授)と山下誠監督(学術研究所/体育・健康科学研究センター 准教授)に、ゼロからスタートしたチームづくりのエピソードや白いユニフォームに込められた想い、指導の特徴やトレーニング方法などについて紹介してもらいました。

ゼロからのチームづくり

川崎: 学長より玉川の特色を生かした新しいスポーツ活動として、女子駅伝チーム結成の提案があったことが、そもそもの始まりです。私はやり投げの選手をしていましたが、駅伝は素人。そこで私と同じ大学の出身で、箱根駅伝の選手としても活躍した山下君の経験と人柄を見込んで監督就任を要請し、2年間かけて彼を口説き落として、陸上競技部に女子駅伝チームをつくったのです。

山下: 結成に先立ち、どんなチームをめざすのかということを二人でよく話し合いましたね。当時は大学生らしさをあまり大切にしないスポーツ活動も見受けられる時代でもありました。しかしながら、玉川大学は全人教育を掲げる大学です。何でもかんでも勝てばいいというのではなく、大学生らしく勉強にもまじめに取り組んで学生生活を充実させながら、同時に女性らしさも兼ね備えた競技者を育成したいという思いが川崎部長にも私にも強くありましたね。

川崎: そうした思いは今も変わりませんね。玉川大学の女子駅伝チームのテーマは「強く、楽しく、美しく」です。しかし、15年前の結成当初は、その順番が今とは違っていて、「楽しく、強く、美しく」だったんです。確か、全日本大学女子駅伝に出場して3回目の2001年度の大会で3位になったあたりから、「強く」がいちばん最初に来るようになったと記憶しています。

山下: 「楽しく走る」ということは、私の佐倉高校時代の恩師である小出義雄監督から教えていただいたことです。つらい練習もいとわないで楽しく走れる選手でなければ強くはなれないという意味で、私が今でも大切にしている教えです。強くなればさらにいっそう楽しく走れるようになりますから、全日本大学女子駅伝での3位入賞をきっかけに、チームとしてより高い目標を見据えて「強く、楽しく、美しく」に変わっていったのです。

白いユニフォームへの思い

川崎: 白いユニフォームにもさまざまな想いが込められています。白は、純粋でひたむきなイメージを与え、クリーンな印象を与える色。また、白は始まりを感じさせる色でもあり、女子駅伝チームのゼロからのまっさらなスタートを表現する色として最もふさわしいと考えました。さらに、白はどの色とも調和する性格を持った色です。玉川大学にはいろいろなタイプの選手がいます。私たちはその一人ひとりの個性の色を何よりも大切にしたいと考えていますし、白であればどんなタイプの色とも美しく調和します。そうした思いから上下白のユニフォームを採用し、結成以来全日本大学女子駅伝などの大きな大会で代々着用してきました。

山下: 白いユニフォームの胸のロゴは、玉川学園の創立者・小原國芳の「玉川大学」の手書き文字です。創立者の書き方には特徴があり、「川」の字は縦三本の真ん中の一本から書き始めます。昔の卒業生の中にはそのことをよくご存知の方も多いようなので、胸のロゴを見て創立者を思い出される人もいるのではないでしょうか。また、駅伝のシンボルであるタスキは女性らしいピンクですが、ここにも創立者の手書き文字を使っています。このタスキにはセントクリストファーコインが縫い付けられていますが、これは結成当時の学生たちが学長からお守りとしてもらったものです。女子駅伝チームの選手たちは、全日本大学女子駅伝でタスキをつなぎながら、同時に創立者や学長、そしてテレビの前や沿道で応援してくれる多くの玉川学園関係者や卒業生の心と心をつないできたともいえるのではないでしょうか。

玉川大学女子駅伝チームの特徴

川崎: 結成時の部員は4人。先が見えない中でのスタートでした。強豪校のように特待生制度もなく、寮もない。しかし、選手にはやる気がありましたし、何より心強かったのは、実業団チームのコーチ時代、オリンピックや世界選手権の女子マラソンでメダルを獲得した選手の指導経験があり、その後箱根駅伝の常連校でもコーチ経験を積んだ山下監督の存在です。結成当時、彼と二人で全国の大会を見て回りながら勧誘活動を行いましたが、その頃の私のセールストークは「玉川には寮がないから一人暮らしができるぞ! それに山下という素晴らしく優秀な監督もいるんだ!」というようなことばかり話していたように思います。

山下: 今は部員が37名います。チーム結成翌年に全日本大学女子駅伝に初出場し、以後14年連続出場を続けられているのも、選手一人ひとりの頑張りや大学のサポート、多くの方々の応援があったからこそと感謝しています。玉川大学の女子駅伝チームには今でも寮がありませんが、それはむしろプラス要素になりうるものだと考えています。選手全員が寮で生活を共にし、栄養士の方に考えていただいた食事をとって体重管理をしていくという方法もありますが、大学生の場合は女子駅伝も教育の一環です。走るだけでなく、食事も自己管理し、そしてもちろん学業にも真剣に取り組んでもらいたい。大学での4年間がゴールではありません。人生はまだまだ続くわけですから、何事も自己管理しながら主体性や自律性を養い、「生きる力」を大学時代にしっかりと身につけていってもらいたいと思います。

練習環境と指導方法

川崎: 練習の中身については山下監督に100%任せています。私は学業や生活について選手の相談に乗ったり、監督が指導をしやすいようにサポートすることが務め。チームには女性2名(小島絵梨、日吉萌)のコーチングスタッフがいて、女性の立場から選手一人ひとりに対してきめ細かなバックアップを行っています。

山下: グラウンドには500メートルの走路があり、学内に3キロのロードのコースと専用のクロスカントリーコースも設けています。キャンパスですから信号はありませんし、適度にアップダウンもあります。グラウンドとロードを組み合わせた練習が一つのキャンパスの中でできるというのも広いキャンパスをもつ玉川大学ならではですね。また、コンディショニングのために学内のプールを使わせていただくこともあります。練習では小人数のグループを作り、毎日、トレーニングの目的や体調に応じて流動的にグループ分けし、個人に合わせたトレーニングを行っています。

川崎: 山下監督の指導を見ていると、選手一人ひとりを本当によく見ているなと感心します。指導のポイントもたくさんあって、私自身も非常に勉強になります。本当に選手一人ひとりに寄り添った指導をする監督なのですが、全員を集めてミーティングをするということを実はあまりしていません。

山下: 方針は全員に伝えますが、それ以外で選手全員に共通する話というのは多くありませんね。チームにはいろんなタイプの選手がいますので、やはり個別の指導というものが重要になってきます。そのためには普段から選手一人ひとりをよく見ていないとだめですし、練習では一人ひとりにできることから始めて、徐々にレベルを上げて行き、その結果、大会で一人ひとりが力を出し切れるようにする。それが監督としての務めですからね。

川崎: 在学中に伸びる選手もいれば、トライアスロン競技で北京オリンピックとロンドンオリンピックに出場した井出樹里さん(文学部2006年卒業 所属:チームケンズ)や今年の全日本実業団ハーフマラソンで優勝した田中智美さん(教育学部2010年卒業 所属:第一生命保険株式会社)のように、卒業してからさらに強くなる選手もいます。井出さんも田中さんも、最初から強い選手であったわけではありません。井出さんの場合は、入部してきたときは30分走れなかったと聞いています。しかし監督は、彼女の練習に対する取り組み方を見て、この選手は将来必ず伸びると確信したそうです。一人ひとりを大切にして、個別の指導をていねいに続けた結果、彼女はオリンピックに2度も出場するほどのアスリートに成長しました。4年間がゴールではないという監督の言葉を見事に証明してくれた選手の一人でもあるわけです。

山下: ベースとなる持久力をきちんとつけることが練習の基本。彼女の場合はそれを根気よく続けられたことが将来の活躍につながりました。高校時代はバスケットボールやバレーボールをやっていて、玉川大学に入学してから駅伝を始めた選手もいます。井出さんや田中さんのように最初は目立つ選手ではなかったけれど、こつこつと力をつけて、卒業後に大きく開花した選手もいます。 玉川大学の女子駅伝チームは、どんな人も基本的にウエルカムのチームです。今年の全日本大学女子駅伝は、28チーム中15位の成績でした。関東大会では歴代チーム最高のタイムを記録していただけに、本当に残念でした。雨が降る悪コンディションの中、選手は大いに健闘したと思います。私の采配ミスが原因でこういう結果になってしまいましたが、大会の翌日から来年に向けて学生たちは走り始めています。最近は女子駅伝に力を入れる大学も増えてきましたが、これからも「強く、楽しく、美しく」をモットーに学業とスポーツを両立させたチームとして、玉川大学らしく上位争いを展開し、優勝争いに加われるように挑戦を続けていきたいと思っています。