科学するTAMAGAWA 「国際教育」の理念に基づく英語教育で、真の国際人材を育成するELFプログラム

2013.05.24

English

今や経済だけでなくさまざまな分野でグローバル化が進展する現代。
ますますその勢いは増し、人材のニーズも大きくなっています。
教育においてもグローバル化に対応できる人材の育成が求められています。
玉川学園では、『Tamagawa Vision 2020』の一環として、
教育の質を保証するための取り組みが始まっています。

玉川がめざす英語教育とグローバル人材育成

創立以来、「国際教育」を教育信条に国際通用性を備えた人材を育成している玉川大学では、2012年度より『EFL(English as a Foreign Language=英語を母語としない人への英語教育)プログラム』がスタートしています。2013年には、EFLプログラムをさらに発展させ『リンガ・フランカ(Lingua Franca=共通の母語を持たない人同士のコミュニケーションに使われる言語)』の考えのもと、英語を使いこなすための科目群を強化し、名称も『ELF(English as a Lingua Franca)』と変更しています。
そうした、玉川大学の英語教育の中心的役割を担うELF運営委員会委員長の小田眞幸(おだまさき)文学部教授に話を聞きました。

“ネイティブ”はイメージ先行で誤解されている!?

「『ELFプログラム』は、教養と専門の両科目の連動を図る『ユニバーシティ・スタンダード(US)科目』に位置づけられるものです。2012年度には経営学部国際経営学科と観光経営学科(2013年度より観光学部に改組)、そして、文学部比較文化学科の新入学生を対象にプログラムをスタートしました。2013年にはリベラルアーツ学部を加えると同時に、その他の学部でも選択科目として受講できるようになりました。さらに順次導入学部を増やす予定です。このプログラムの実施にあたり、最大の問題は“ネイティブスピーカー”の考え方でした。そもそもの意味は、現地の言語を母国語として話す人なのですが、こと英語教育の文脈では、“英語を話す白人の外国人”ととらえている人も多いのが現状です」という小田教授。アメリカやイギリスの英語は発音がキレイで、それら以外の国の英語はキレイでないといった誤解・誤認も問題の一つとして指摘しています。

「英語は世界の共通語と認識されていますが、世界で通用する英語はネイティブスピーカーのそれに合わせたものではありません。日常英語を使う人の約8割がネイティブスピーカーでないという調査結果(Graddol 1997)もあるくらいですから、ノンネイティブ同士が英語でコミュニケーションする機会は当然多いわけです。それなのに、特定の英語に向かった学習をするのは効率が良いとは言えません」
小田教授は、米国・セントマイケルズ大学やジョージタウン大学の大学院で言語教育や応用言語学を学び、アメリカおよびイギリスの大学で教える立場も経験されています。同じ英語であっても、アメリカやイギリス、オーストラリアなど国によってそれぞれ異なる点があることを肌で感じているのです。

さまざまな国籍をもつマルチリンガル教員


玉川大学は創立以来国際教育を推進しながらも、じつは語学研修のプログラムは決して多くはありません。それは、英語を学問として学んで終わりにするのではなく、コミュニケーションツールとして身につけるものとの考えからです。こうした英語をツールとして身につける教育は、他のいくつかの大学でも実施されています。では、玉川大学と他大学とでは何がどう違うのでしょうか?
「大きく異なるのは、20名の教員スタッフの顔ぶれでしょう。教員については、現在、9の母語、11の国籍の専任・非常勤講師が指導にあたっています。教員採用に際し、“ネイティブ”かどうかは問いませんでした。代わりに、TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages=英語を母語としない人たち向けの英語教授法)あるいは応用言語学の修士課程を修了し、英語を母語としない学習者に教えた経験を有することを条件としました。また、母語以外に1か国以上、日常会話程度以上に使える言語学習の経験があることも加えました。さらに、学生からの様々な学習相談に応じるために、若手の講師陣がチューターとして交代で研究室に待機する体制を整えました。面と向かっての相談はもちろん、予約やその確認などメール、電話もすべて英語。学生にとっては、授業以外でも英語でコミュニケーションする機会がさらにもてることになります」
ネイティブ、ノンネイティブの区別をつけず、言語学習の有無を条件にしたのは、自身も語学のマスターに苦心したことでこれから学ぶ学生の気持ちや苦労するポイントが理解できるという理由からだそうです。

個々の学生に必要な授業を提供し、ステップアップを図る

「もう一つ異なるのは、応用言語学の見地からの教育システムです。英語を学ぶことで次の何かを学ぶきっかけになるでしょうし、多言語を学ぶことで、“1つの言葉を異なる言語で置き換えて考える”という思考のオプションができます。言語学習の意味や価値を考えられるようになればいいと思っています。授業では、新入学生を1クラスが最大でも25名以上にならないようにクラス編成し、英語のリーディング、リスニングを中心とした内容を実施しています。とはいえ、一律にというわけではありません。英語が堪能な人もいれば苦手な人もいます。そうした状況を加味し、それぞれに応じたスタートラインから学習を始められるようにしています。例えば、ELF101という授業科目から始めた人は、その次に102、201…、201からスタートした人は202、301…というように、それぞれがその先を学べるよう授業を配置しているのが特徴です。2013年度の受講者は約1000名で、クラス数は55になりました」と小田教授はいいます。
まだ始まったばかりのプログラムなので、はっきりとした成果として表れるのは数年先になるのでしょうが、現在担当する2-4年生混合の「応用言語学」の授業で、学生にレポートを書く言語として英語または日本語を選択させると、ELFプログラム導入前に入学した現4年生のほとんどは日本語でレポートを作成するのですが、ELFを受けた2年生はその約7割が英語でレポートを書いているそうです。やがては日常の会話に抵抗なく英語が使われるようになるかもしれません。

TOEICスコアと英語力は必ずしもイコールではない

現在日本では、小学生段階からの英語教育が本格的に始まっています。さらには、提案段階ながら高校や大学の卒業・入学要件にTOEFLの成績を導入しようという動きもあります。
「英語力を測るものとして、日本では英検(実用英語検定)やTOEIC、TOEFLなどが多用されています。しかし、それぞれ目的も問われる内容も異なるテストです。そのため、“英語ができる人はTOEICのスコアも高いが、TOEICのスコアが高いからといって英語の能力が高いわけではない”となってしまうのです。幸い、玉川大学には、英語教育を変えていこうという高い意識を持った教員がそろっています。週2回の授業では足りないこともあるでしょうが、授業外でいかに英語の学習を定着させられるかがポイントになるでしょう」。
「前述のチューター制度も、予約が数週先まで埋まっているケースもあるので、今後もさらに実施する学部・学科を拡大し、さらに担当教員を増やしていく必要があります。」こうした体制を整えていく小田教授の目下の期待は、「卒業論文を英語で執筆する学生がどれだけ増えるかが楽しみ」とのことです。