科学するTAMAGAWA 学園創立者の思いと理念を実践する 玉川大学教育博物館

2014.07.25

貴重な資料の収集・保存・展示を行う博物館の機能と
それらの資料を教育に活用するスペースの両方を備えた
全国屈指の施設「玉川大学教育博物館」では、
この秋に『玉川学園創立85周年記念特別展 
東と西のキリスト教美術―イコン・西欧絵画コレクションから』が開催されます。

優れたものを見て、実物に触れることで
子どもたちの心を育てる

玉川学園のキャンパスには数多くの宝があるのをご存知ですか? そのひとつが学園創立以来、連綿と続く歴史とそこに息づく教育の理念です。さらに、その理念のもとで学ぶ学生・生徒・児童もまた宝に数えられるでしょう。また、最高学府として教育・研究にあたり、その積み重ねられた成果も宝のひとつと言えます。
そして、キャンパスの東側の地にも宝があります。それが『教育博物館』です。博物館法の「博物館相当施設」として指定され、さらにそこに収蔵された、教育史資料、芸術資料、民俗資料、考古資料など約3万点もの資料もまた宝といっても過言ではないものばかり。その教育博物館の特徴や存在意義、行われているさまざまな教育活動と貴重なコレクションを公開する特別展などについて、館長の大西珠枝(おおにしたまえ)教授と主幹学芸員の柿﨑博孝(かきざきひろたか)教授に話を聞きました。

教育博物館には創立者小原國芳の思いが息づいていると大西教授はいいます。「小原國芳は『本物を見よ』ということを常々言っていました。本物は、優れたものや実物ということを意味していたと解釈できます。中でも、子どもたちの感性や美的感覚、情緒を育むため、それらに役立つ資料を多く収集しました。教育博物館の前身となる玉川学園教育博物資料室が設置されたのは1969年のことで、1987年に教育博物館として現在地に開設されています。これまでに収集した資料は3万点にものぼります。その目的は、大学の研究成果を残すことではなく、教育に役立つもの、子どもたちのためになるものを収集することであるというのが、他大学の博物館施設と異なる点だと思います」
玉川学園には幼稚部から大学院までが置かれ、心を育む全人教育が、設置機関のすべてで行われています。その全人教育の担い手の一つであるからこそ単なる「博物館」ではなく、「教育」という名称がつけられています。

所蔵資料の特徴とその活用

では、教育博物館の特徴や果たしている役割とはどのようなことなのでしょう? 大西教授によれば、大きな特徴として2つの側面があるとのことです。「小原國芳は近代の教育史への関心から、そこにつながる近世の資料や筆蹟、江戸時代の昌平坂学問所、藩校などに関する資料を収集しています。また、自身の教育理念の背景ともなっている“私塾こそ教育の理想”との考えから、私塾に関する資料や明治期の教科書、教材、文部省(現在の文部科学省)作成による貴重な資料、戦前に台湾で使われていた教科書などを収集しています。もう一つは、本物に触れる機会を提供するため、優れた美術資料、特に西洋や日本の様々な絵画・彫刻、とりわけキリスト教絵画から現代美術に至るまでを集めています。しかも、美術の教科書に掲載されているようなものが年次を追って並んでいるのではなく、本当に良いと思ったものをまとめて収集しています。ホール中央にあるジョン・グールド鳥類図譜は自然史資料でありながら、同時に美術品のような美しさも備えています。さらに、キャンパス内で出土した土器なども保存・展示しています」

これらの貴重な資料は、展示・公開されているだけではありません。縄文土器や蘭学の教科書は小学部の社会科の授業の一環として実際に児童たちが手に触れられる機会を設け、中学部・高等部の生徒たちも戦前の教科書の実物に触れることができます。K-12には多くの海外交流生が来ますので、彼らにも見学する機会を設けています。大学では全学共通の学びであるユニバーシティ・スタンダード科目として教育博物館を訪れるプログラムが組まれています。さらに、大学の芸術学部や通信教育部で取得可能な資格「学芸員」を養成するために博物館実習のプログラムの一環として、展示の手法や資料の扱い方などの指導にもあたっています。

また、近年、外部機関からの問い合わせが増えていると柿﨑教授はいいます。「所蔵資料のデータベースを一新するため、ひとつひとつを画像化する作業を進めています。博物館としての基礎データとなるのはもちろん、膨大な資料を整理している段階で、“こんなものがあったのか”という驚きもあります。また、画像はホームページなどで公開しているため、貸し出し希望の問い合わせが増えてきました」
大西教授も続けます。
「教育資料として集めていたものが美術作品として再評価されることもあります。1枚の絵画でも、博物館ごとに収集のアプローチや所蔵の目的は異なりますから、違った視点から注目が集まることによって価値が高まり研究が進むということもあります。研究者視点でいえば、再発見といえるでしょう」

国内最大級とも評される
イコンコレクション

さて、教育博物館の最大の特色といえるのが、イコンコレクションです。イコンとは、ギリシャ語のエイコン(像)が変化した言葉で、主として東方正教会で崇拝されているテンペラ技法*を用いた板絵の聖画像をいいます。イコンについて、大西教授は次のように説明しています。
「イコンは聖堂の中の正面に飾るためのものであり、また、信者の信仰のために描かれたものでもあります。玉川大学は特定の宗派によらずキリスト教を大切にした教育を行ってきました。そうした思いと、イコンに込められた宗教心、篤い気持ちが重なるように思います。さらに、イコンは聖なるものとはどういうものかを具現化したもので、小原國芳の『本物を見よ』という考えに合致するものでしょう。当館所蔵のイコンは、その意を継いで学園創立50周年事業の一環として小原哲郎前名誉総長が収集されました。それから丁寧に修復され、現在は71点のすべてが良好なコンディションで保管されています」

  • テンペラ技法=卵黄やミツロウ・膠(にかわ)などを顔料と混ぜた不透明な絵の具を用いた描画技法。卵を乳化剤として使用する卵テンペラが一般的で、時代が経過しても絵の具の発色が良い状態で保たれる利点があります。

教育博物館では、イコンコレクションを中心に西欧絵画を組み合わせた『玉川学園創立85周年記念特別展 東と西のキリスト教美術―イコン・西欧絵画コレクションから』が11月3日から開催されます。
「2009年に創立80周年記念事業として特別展を開き、全71点を公開しました。これが大変好評で、全国から5000名を超える来場があり、展示資料等について解説を行うギャラリートークには最高で170名の方に参加していただきました。さらに会期終了後にも問い合わせが多数あり、10数点を常設するようにしてきました。今回開催する特別展は、イコン71点と西欧絵画を組み合わせ、前期(11月3日~12月7日)、後期(12月13日~1月25日)の2期に分け、それぞれ異なるテーマを設定しているのが特徴です。イコンはテンペラ技法という伝統的な制作技法が用いられていますが、油絵などの西欧絵画とは発色の具合などに大きな違いがあります。また西欧絵画は芸術家が創造していくものである一方、イコンは修道士が聖なる世界を見える形にしたものです。イコンを模写した西欧絵画やその影響を受けたもの、その逆に、西欧絵画の影響を受けたイコンもありますが、イコンと西欧絵画の両方を比べながら見られる機会はそうあるものではないと思います。イコンには、聖堂の聖障に飾られた大きなものから守護聖人として個人に大切にされた小さなサイズのものまであるとともに、逆遠近法とも呼べるような描画技法が用いられたものもあります」という柿﨑教授。

最後に『玉川学園創立85周年記念特別展 東と西のキリスト教美術―イコン・西欧絵画コレクションから』の見所として、西欧絵画との違いやイコンの1点1点を楽しみながら、聖母や聖母子像などとキリストの生涯をテーマとした前期の展示と、祝祭や聖人などをテーマとした後期の展示の両方が楽しめることを教えてくれました。

玉川学園創立85周年記念特別展
東と西のキリスト教美術 ―イコン・西欧絵画コレクションから


会期:前期 2014年11月3日(月・祝)~12月7日(日)
   後期 2014年12月13日(土)~2015年1月25日(日)
   ※特別展開催中の休館日は不定期です。
時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
会場:玉川大学教育博物館

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取材した当日の展示室の様子をご紹介いたします。ぜひご覧ください。