科学するTAMAGAWA より質の高い教員養成をめざして 教師教育リサーチセンター3年目の成果に迫る

2014.09.25

 

少子高齢化が進み社会構造が変化した現在、
より質の高い教員の養成が強く求められています。
そのニーズに対応して、玉川大学教師教育リサーチセンターでは
教育改革を実行し、教職課程の新たな試みをスタートしています。

全学部でより質の高い教員養成を

“質の高い教員養成”を目的に「教師教育リサーチセンター」が玉川大学に設置されたのが2012年4月。その経緯に関しては、当時の「ひと。ゆめ。まなび。」でもお伝えしました。あれから約2年。社会では以前にも増して質の高い教員の養成が強く求められていますが、そのニーズに教師教育リサーチセンターはどのように対応してきたのでしょうか。そして、玉川大学の教員養成はどのように変わったのでしょうか。前回と同様、教師教育リサーチセンター長の森山賢一教授に、その後の動向を聞きました。

「教師教育リサーチセンター(以下センター)は、教職課程を受講する学生の支援ならびに、現職教員の研修の場としての役割、また、教員養成に関する研究の役割も担う、非常にユニークかつ先進的な機関です。センターのこの2年間の成果は大きな注目を集めており、学校や教育委員会、海外からの問い合わせも多くいただくようになりました」と森山教授は話します。

「前回はセンターの初年度の取り組みとして、主に教育学部の教職課程支援についてお話しさせていただいたと思います。ただし、あくまでもセンターがめざすのは“全学的”な質の高い教員の養成です。教育学部でも他の学部でも、教員免許状の重みに違いはありません。したがって一昨年よりその範囲を教職課程が設置されている7学部すべてに広げ、カリキュラムの改革に着手しました」。

教職課程をカリキュラムの中に明確に位置づける

それは具体的にどのような改革なのでしょうか。森山教授は次のように説明します。「玉川大学では、半期(1セメスター)で履修できる単位数を16単位に制限するキャップ制を導入しています。大学の学修は授業とその予習・復習から成り立っているため、各科目をしっかり理解するには、履修量におのずと限界があるからです。したがって、4年間で履修できる単位の上限は128単位。これは、教職課程受講者も同様です。つまり、教育実習を含む教職科目すべてが、その学部・学科の卒業単位に含まれるということです」。

一般的に教職科目は、学部・学科の卒業単位とは別にカウントされることが多いといいます。「他大学で教職課程を受講する学生は、4年間で150単位くらいを履修することが多いようです。しかしそれでは、前述の通り予習・復習の時間をとることが難しく、各科目の理解が疎かになる恐れがあります。そこで教職科目を卒業単位に組み入れることで、各学部・学科の専門科目と同様に、教職科目も深く理解してもらうというねらいがあります」。

しかし、単に教職科目を卒業単位に組み入れただけでは、別の弊害が出ると森山教授は続けます。「教員の質を高めるには、各学部・学科で学ぶ専門分野の力と、教職課程で学ぶ教員としての力の両方を高める必要があります。しかし履修登録には上限があるわけですから、そこに教職科目を組み入れれば、専門科目の割合が減少します。当然『専門の学びが疎かになるのでは』という議論が出るでしょう。そこで玉川大学では、すべての学部・学科のカリキュラムを再検討し、専門科目と教職科目を両立するのに最適な履修モデルの構築に取り組みました。これにより、専門課程の学びと教職課程の学びを両立することができるようになったのです」。

この改革を開始してから、教員を志望して入学してくる学生の割合は年々増加しているそうです。「今年度の1年生の教職課程受講者は、全学部合わせて716名(2014年5月現在)で、1学年約2,000名が在籍していますから、大学全体の規模で考えると他に類を見ない受講者数です。また、玉川大学では通信教育課程を開設していますが、その受講者約4,300名のその多くが教員免許状取得希望者となっています。これは、我々の教育改革が広く浸透してきている証であると考えています」。

1年次から教職課程に取り組む意義

このように、“教員養成の玉川”に大きな期待をもって入学してくる学生たちに対応するべく、1年次から教職科目の履修をスタートさせていることも、大きな特徴となっています。「開放制の多くの大学では2年次から教職科目の履修が始まりますが、これでは、せっかく高いモチベーションをもって入学してきた学生のやる気に水を差してしまうことになります。また、教職科目を履修してみてから『やっぱり自分には向かない』と進路を変える学生もいますが、その時期も2年次以降になってしまいます。ですから、1年次の早い段階で教職科目に触れてもらうことは、非常に大切だと考えています」。

  • 開放制…「開放性の教員養成」制度のこと。
        大学で教員免許状取得に必要な所要の単位に係る科目を履修することで教員養成に携わることができる制度を示す。

なかでも特徴的なのは、実際に学校に行って1日の様子を見学する「参観実習」の機会を設けていることです。「いまの社会では、“実践的指導力”のある教員が求められています。それは、机上の学びではなかなか身につけることができません。その意味でもこうしたプログラムを導入し、教育現場を体験的に学べるようにしているのです。それも、1年次の早い段階で経験するというのがとても大切です。それまで“教わる”立場だった学生が、“教える”立場から学校を見る。これは大きなパラダイムの転換になります。大多数の学生が『よりモチベーションが向上した』『めざす教師像が明確になった』と話します。これにより、その後の教職科目の学修に対しても、意欲的に取り組めるようになるのです」。

また、参観実習は単に学校を見学するだけのイベントではないといいます。「その事前事後にはきめ細かい指導を行い、参観実習が最大限効果を発揮するよう配慮しています。たとえば実習前にはお世話になる学校の校長先生を招いて、地域の特徴、教育内容、学校の特色、参観実習にあたって注意すべき点等のお話を伺う機会を設けています。そのインパクトは絶大で、学生の意識は大きく高まります。また、参観実習当日のスケジュールや見学内容などは、学生自らが学校側と交渉して決めます。さらに実習後は、学校にお礼状を送り、報告書を作成します。このように学生が主体性と責任感をもって望むことで、実習の効果が最大限に引き出されるのです」。

参観実習に備える
 参観実習の様子 指導の仕方を書きとめたり、子供たちの様子を観察

昨年度は600名以上の学生が、幼、小、中、高等学校の57校で参観実習を行いました。今年度は人数が増えたため、さらに多くの学校で実施する予定になっているそうです。「これほど多くの学校からご協力いただけるのは、センターが教員養成だけにとどまらず、ふだんから教育委員会や学校と連携して、現職研修や教員免許更新講習などを実施しているからこそだと考えています。こういった面でも、センターの存在意義がとても大きいことがわかっていただけると思います」。

4年間+大学院まで一貫したサポート体制

このほかにも、センターでは4年間を通したサポート体制を構築していると森山教授。「1年次には、読売新聞社と提携した“読む力”を養う特別講座や、元アナウンサーの方を招いて“伝える力”を磨くコミュニケーション講座など、教員にとって土台となる力を身につける機会も用意しています。さらに2年次以降は、学生が積極的にボランティアやインターンシップに参加できるよう、センターの前の掲示板に、学校や教育委員会から送られてくる膨大な数の募集ポスターを掲出しています。おそらく、これほど多くの情報を提示している大学は、日本にはないでしょう」。

 

また、教員採用試験対策に対しても、万全の支援体制を整えているそうです。「模擬試験は1年次から導入しています。実際に試験を受けてみることで、何が苦手なのか、それを克服するにはどうしたらいいかがわかってきます。また、教員採用試験対策講座も、大学独自のもの、外部業者と提携したものを合わせて数多く開講していて、すべて学内で受講できるようになっています。さらにセンターには教職サポートルームを設置しており、そこで保育所長や幼稚園長、小・中・高等学校校長をご経験された先生方により、きめ細かい指導を提供しています」。

募集案内がならぶセンター前の掲示板
教職サポートルームの様子
教員採用試験対策講座

なお、大学院における専修免許状の取得に関しても、先進的な取り組みを始めていると森山教授はいいます。「教育内容の多様化・高度化により、現在大学院レベルの教員の養成が強く求められています。そのニーズに応えるために、玉川大学大学院では、文学、農学、工学の3つの研究科で教職に関する科目を新設し必修としました。これは全国でも先導的な取り組みですが、前述の通り教員の質とは、専門分野の力と教員としての力の両方を合わせてはじめて向上できるものですから、ニーズに対応するためには必要なことだと考えています。実際、私もその2科目を担当していますが、教員をめざす大学院生の意識は非常に高く、水準の高い授業が展開できています」。

“教員養成の玉川”を発展的に継承

現在、玉川大学を卒業して教壇に立っている現職の教員は全国に6000名以上。この“教員養成の玉川”の伝統を、今後も発展的に継承していきたいと森山教授は話します。「少子高齢化や社会構造の変化を受け、学校や教員をめぐっては多くの課題や問題点が指摘されています。それは裏を返せば、大きな期待がかけられているということ。教員養成に対する変わることのない理念をもちつつも、時代の変化に合わせた改革は、今後も続けていく必要があると思っています。我々はさらに質の高い教員、時代にあった教員を輩出していくことをめざしていますので、教員になりたいと考える人は、ぜひ、玉川の門を叩いていただけたらと思います」。

「創立85周年記念 教員養成フォーラム~これからの教員に求められる資質能力と今後の教員養成~」  開催のお知らせ

日時:2014年10月25日(土)13:00~17:00
会場:玉川学園 講堂(キャンパスマップ20)
お問い合わせ先:教師教育リサーチセンター TEL:042-739-7097

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