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科学するTAMAGAWA プロジェクト型授業から生み出された食堂「朔風館」のガラス面およびメニューサインデザイン

2015.03.25

大学教育棟2014に隣接する食堂「朔風館」を実際の学びの場として展開された芸術学部の学生によるサインデザインプロジェクトが完成。
ゼロからものをつくり出す苦悩、思いを表現できないもどかしさ、異なる意見や考え方と折り合う難しさなどに直面しながらも創出されたデザイナーの卵たちの作品が、2015年4月のオープンとともに、1年間の学びの成果としてお披露目されます。

クライアントの思いを感じ、果たすべき機能を考え、見る人をワクワクさせる価値を付加するデザイン

私たちは多くのモノに囲まれて暮らしています。毎日手にするものや目にするものを例にとっても、スマートフォンやテレビのリモコン、バッグ、文具、信号機、お店の看板、駅の案内板……枚挙にいとまがありません。それらに共通するのが、“色や形状、使いやすさなどがデザインされていること。そんな“デザインの世界”に、「情報デザインC」の授業を通じ、芸術学部の3年生が挑みました。
授業を担当した中島千絵(なかじまちえ)准教授によると、プロジェクトとしての始まりは、2014年1月だったといいます。

「当時建設進行中の大学教育棟 2014において、学生がデザインに関われることはないかと打診をいただき、学生の若い感性を生かし、遊び心を持って作れるものを考えました。そのなかで出てきたのがガラス面に貼付する衝突防止サインと配膳カウンター上部のメニューサインでした。『情報デザインC』では、毎年テーマを変えてさまざまなデザインの実務を学んでいます。過去には商品のパッケージや企業キャラクターのデザインなどを行ってきました。これまでは、ある程度の段階まで学生が進めたところで、最後の実用ワークについては、プロのデザイナーにバトンタッチして委ねることが多かったのですが、今回は、履修者を3〜4人のチームに分け、それぞれが協働するという学修スタイルは維持しつつ、最後まで関わることができました。デザイン、プレゼンテーション、試作、納品といった一連の流れを実践することができました。」

チームごとに衝突防止サインとメニューサインの2つのデザインを行うこの授業で、もっとも原動力となったのは“特別感”だといいます。
「どちらのデザインも採用されれば数年にわたり使い続けられるものですし、実際に自分で目にする機会も多い、ということは学生の大きな意欲喚起となりました。とにかく既成概念にとらわれず発想してほしいと伝えました。」と中島准教授。建設中で実際の建築物の様子が見られないなか、期日は決まっているため、なんとかデザインを前に進めなくてはなりません。「第1次のプレゼンテーションまで約1か月半という短い期間ながらも、学生たちはチームワークやリーダーシップ、“ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)”の大切さを学ぶ機会になったのではないでしょうか」
そうして迎えた最終授業が第1次プレゼンテーション。4チームそれぞれがメニューサイン、衝突防止サインのコンセプトを発表しました。

若い感性とセンスから生み出されるものとハプニング

「衝突防止サイン」1案スマートフォンで撮影すると
スライドショームービーが再生される

再生されるスライドショームービー

「7月中旬の第1次プレゼンによって、衝突防止サインとメニューサインともに2案が採択され、最終プレゼンに向けて準備を進めたのは夏休みでした。そんななか、3週間、デザイン事務所にインターンシップに出向いた学生もいました。そこでデザインの現場とプロの仕事を目の当たりにでき、かなり刺激になったと思います。授業に講師としてお招きしている卒業生が第一線で活躍している企業で、具体的なアドバイスを受ける機会もあり、各チームは期限ギリギリまでブラッシュアップを重ね最終プレゼンを迎えました。
衝突防止サイン案のひとつは、ガラスに貼られた96枚の画像をスマートフォンで撮影し『Flipagram』というアプリを用いてスライドショームービーにするというものです。学内のさまざまな場所をハチが飛び回る10秒のアニメーションを楽しむことができます。そしてもう1案は、ハチの巣をイメージした六角形のモチーフの中に『玉川学園の花マップ100選』から抜粋した花のイラストと、英語での学名表記したもの。どちらか1案を選定する予定でしたが、衝突防止サインについてはどちらの案も甲乙つけがたく、2案とも採用されることになりました。メニューサインは英文の文字を力強く使い視認性に優れた案が採用されることになりました」
採択後、『玉川学園の花マップ100選』を使った案では農学部の先生に、学術名やイラスト化した花の形が適切かどうかなどを検証してもらいました。玉川大学だからこそできる学部を越えた連携も生まれ、さらにブラッシュアップを進めることができました。

農学部の杉本教授が協力するなど
玉川大学ならではの連携も
「衝突防止サイン」2案
「メニューサイン」

デザイン作業において、想定外のトラブルやハプニングが発生する場面もありました。「メニューサインにおいて、最終段階で5種類の文字表記すべてが変わることになったのです。定食ものを『SET』、注文後調理するものを『LIVE』、丼物を『BOWL』、ラーメンを『CHINESE NOODLE』、そば・うどんを『JAPANESE NOODLE』としていたのですが、よりわかりやすい表現に変更しなければなりませんでした。ハチのアニメーション衝突防止サインも、背景の変更を余儀なくされました。これは、当初単色(モノクロ)で進めていたものをよりよいものへ変更しようとのクライアントからの要望で、カラーにすることになったのです。すべて手描きのイラストを作り直しました」
苦労はありましたが、こうしたハプニングのおかげで、さらにチームワークが良くなったという副産物も生まれてきました。

メニューサイン設置イメージを確認
衝突防止サインの位置を検討する
現場でサイズの調整をすることも

2015年春、建物のオープンと同時に、3つのサインも多くの人の目にふれることになります。建物の中でどう見えるのか、クオリティはどうか、見た人がどう感じるかなど、携わった学生がデザイナーとして一番気になることがようやくわかる時を迎えます。今回のプロジェクトを通じて、学生たちの柔軟な発想やアイデアには感心させられました。技術的に不慣れなところはありましたが、何かひとつのものを作り上げる経験が、大きな自信につながることを期待しています。また、多くの人との関わりのなかで、人間力も数段高まったように感じます。それは、学部がめざす“社会との接点をもち、社会貢献できる人材の育成”に通じる成果でもあります。
「建物と比べれば、今回デザインしたものは小さいものですが、そこに詰まった気持ちはとても大きいものです。今後さらに大きなものやクライアントの要求の高いものに挑むことがあるかもしれません。そのときに、今回得た体験を思い出し何度折られようとも、たくましく立ち向かっていってほしいと思います」という中島准教授。デザインという仕事に限らず、クライアントの心や気持ちを形にしていくセンスと、新しいものや価値を創出して積極的にアプローチしていく行動力、言い換えるならば“アートディレクター的な素養”がこれから重要なのかもしれません。

充実感、満足感、達成感、そして課題 プロジェクトを終えて見えてくるもの

さて、実際にこのプロジェクトに関わった学生たちは、どのようなことを得られたと感じているのでしょうか。
メニューサインと花マップ100選をモチーフとした衝突防止サインを制作したチームSのメンバーと、ハチのアニメーション衝突防止サインを制作したチームenのメンバーに話を聞きました。

  • 石井 史将さん(チームS)
  • 「何もないところから案を出す大変さはありましたが、やり遂げてみると達成感と、“自分が携わったものが実際に使われる”うれしさがあります。デザインやクリエイティブ系への就職を考えているので、この経験を生かせたらと思っています」
  • 斉藤 春菜さん(チームS)
  • 「第1次プレゼンの前の中間発表でダメ出しされたこと、また作業のために、放課後の多くの時間をとられてしまったことなどが辛かったです。リーダーとしてみんなの意見を合わせるのに苦労しましたが、意見を言い合えたからこそ仲良くなれたと思います。」
  • 磯部 圭さん(チームen)
  • 「自分で描いた下書きをみて、スキル不足を痛感しました。メンバーに助けられることが多く、リーダーとしては反省ばかりですが、人の話を聞く楽しさを知り、自分はどのような仕事の進め方が合っているのかを確認できました」
  • 井上 智遥さん(チームen)
  • 「教職課程を履修しているので、チームみんなで作業する時間がなかなか確保できなかったのが残念でした。作業量が多く大変でしたが、10秒アニメーションなど新しいことにチャレンジでき楽しかったですし、やってできないことはないということもわかりました」
  • 石井 茜さん(チームen)
  • 「ハチの背景となる建物を特徴的に表現するのが難しかったですが、大学を代表するという気持ちで後々まで残るものを作れた満足感があります。チームワークは単なる共同作業ではなく、一人ひとりの長所や特長をくみながら物事を進めることだと実感しました」

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