科学するTAMAGAWA アメリカの東海岸で大きく花開いた、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科学生による「アメリカ桜祭り公演」

2015.05.25

2003年から始まった玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科の和太鼓・創作民俗舞踊チームの「アメリカ桜祭り公演」は、今年で12年目を迎えました。公演を通して、現地の人々と交流し、また学生の成長をうながすプロジェクトの魅力について、指導する小山正教授に話を聞きました。

今年の春も、美しい桜の花が私たちを楽しませてくれました。各地の桜祭りには大勢の人出がありましたが、それは海外でも同様です。とくにアメリカのワシントンD.C.やフィラデルフィアの桜祭りは数万人規模で賑わう、春の一大イベントとなっています。その両都市の桜祭りに、玉川大学芸術学部の学生が参加し、和太鼓演奏と創作民俗舞踊を披露しています。

2003年以来、毎年恒例となった「アメリカ桜祭り公演」。今年は『TAIKO&DANCE2015』と名付けた巡回公演を3月26日からの21日間に、フィラデルフィア、ニューヨーク、ボストン、ワシントンD.C.の4都市で実施するとともに、桜祭りでのパレード参加や、大学・高校・アートセンターでの舞台公演など、全14公演を行いました。帰国後の4月25・26日には、アメリカ巡回公演の締めくくりとして玉川学園講堂にて凱旋公演を行い、1000人あまりの観客に向けて心をこめたパフォーマンスを披露し、万雷の拍手をいただきました。

「現地の方に評価されてこそ、本物のパフォーマンスである」――歴代学長に背中を押された海外公演

「アメリカ桜祭り公演」は、芸術学部パフォーミング・アーツ学科の3,4年生が受講する『海外特殊研究』のプロジェクトの一つです。和太鼓と舞踊チームの指導を担当するのは、花柳伊三郎の名で日本舞踊家としても活躍する小山正教授。公演の演出・構成・振付を手掛がける小山教授に、海外で上演する目的や意義について話を聞きました。

「玉川大学舞踊団が初めて海外で創作舞踊を披露したのは、1961年のメキシコ・ユカタン州知事から招待を受けたメキシコ親善使節団の訪問にさかのぼります。初の海外上演を前に創立者の小原國芳先生は、『父母兄弟、友人知人のいない場所でパフォーマンスをして評価を得ることこそ、本当のパフォーマンスである』と言っていました。玉川大学舞踊団の心をこめ体で表現する舞踊は好評を博し、その後のヨーロッパ、ギリシャ、カナダ、アメリカ各公演に続くことになりました。玉川大学の学生だった私も72年ギリシャ公演から参加しましたが、日本舞踊家の家に育ち先達の模倣を一番大切にしてきた者にとって、身体を使って自由に表現する踊りが海外のお客様の心をつかめることに衝撃を受け、大きな転機になりました。
一方、大学では3,4年ごとに海外の各地で大きな公演を実施してきましたが、ある土地で毎年継続できる公演をできないものか模索していました。小原芳明学長から『評価が得られる、というのは“来年また来てください”という要望、招聘をもらえることにポイントがあるのではないか。とにかく1回行ってきなさい』と背中をおされたこともあり、フィラデルフィア市の日米協会を通して『フィラデルフィア桜祭り』への和太鼓と創作民俗舞踊チームの参加が叶ったのです」。

2003年からフィラデルフィア市の桜祭りで和太鼓演奏と創作民俗舞踊を披露するとともに、周辺地域の高校・大学・アートセンターなどでも舞台上演やワークショップを重ねてきました。その評判がアメリカの桜祭りのルーツであるワシントンD.C.の桜祭り主催団体に伝わって招聘を受けるまでになりました。
「劇場の観客は、現地のアメリカ人が8割、在住日本人や日系人、アジア系が2割という比率です。しかもネット上でチケット販売の告知があるとすぐに反応があり、多くの劇場で完売になってしまうこともあるそうです。今や来年の訪問を要請されるだけでなく、“和太鼓演奏の演目『感謝(クンサー)』と舞踊の『じょんがら』は絶対に上演してほしい”と、演目へのリクエストもあるほどです。私たちのパフォーマンスを現地の方が評価し、受け入れてくださっている証しです。公演を媒体にした日米交流が根づいているのだと考えています」。

厳しく濃密な稽古を通して、身をもって教えることの大切さを学ぶ

「アメリカ桜祭り公演」には、毎年40人あまりの学生が演者・スタッフとして参加。今年参加したのは新3,4年生39名(男子12名、女子27名)で、和太鼓チームは日ごろから授業開始前の朝練で腕を磨いている男子学生たち、舞踊チームはオーディションで選ばれた女子学生たちで構成。4年生メンバーの9割は2年連続で参加しているとのことです。
「できるだけ2年連続で連れて行きたいと思っています。1年目は、海外のお客様の反応に新鮮な驚きを感じるだけで精一杯でしょう。2年目になると余裕が出て、初参加のメンバーの指導やメンタル面でのサポートができるようになる。このプロジェクトには、そのような教育的な意義もあるのです」。
稽古は2月上旬の春休み期間から始め、35~40日程度。稽古日は午前10時から午後5時まで太鼓と舞踊の練習やミーティングを重ねてきました。公演が間近に迫ると稽古はさらに激しくなり、朝から夜の9時頃まで続くこともあります。30日あまり集中して稽古することで、メンバーの息がぴたりと合い、一糸乱れぬ和太鼓演奏や舞踊になるのだそうです。「外国のお客様が感動するにふさわしい公演を作り上げるには、それだけ集中した時間が必要」と小山教授は話します。

「11年間継続している公演のレベルを落とすわけにはいきませんし、来年の招聘がなくなることも許されませんから、メンバー一人ひとりが責任感というプレッシャーを抱え、必死の思いで練習に打ち込んできました。メンバーの心を一つにするにはどうすればいいのか、自分で感じて考えなければなりません。先輩だからと偉ぶっていたら誰もついてこないでしょう。苦しくても、『私もここまで頑張るから、皆も頑張ろうよ』と言わなければならない。身をもって教え、引っ張り、次の代へつなげていくことを、学生たちはこのプロジェクトを通して学ぶのです。この公演に参加し、スタッフワークをきちんと務めることができれば、今後の人生に必ず役立つと思っています」。

プロではない、アマチュアでもない、
学生らしい喜びがあふれる舞台を披露

上演するプログラムは、男子学生によるダイナミックな和太鼓演奏と、女子学生による優美な民俗舞踊の演目を交互に披露することで、観客が飽きることのない構成になっています。その構成も上演時間や劇場の規模、昼夜公演の有無等で、変更しています。



「代々の参加メンバーが蓄積してきたノウハウを、今のメンバーもきちんと受け継いでいるので、学生自ら演目の時間を計算し、構成しています。私は演出・構成・振付をしていますが、毎年私の役割がどんどん軽くなっているんですよ。なかでも舞踊については、創作民俗舞踊のゼミの卒業プロジェクトがあり、学生が研究したいものを国内各地で取材し、踊りを現地の人から教わり、舞台化するまで作り上げます。古くから伝わる民俗舞踊は、基本的に祭祀を目的とした練り歩きなので、それを山車や劇場の舞台という空間で魅せるための工夫が必要なのです。今年は2014年度の先輩2人の卒業プロジェクトから山形の『花笠おどり』を採用。先輩方も稽古に来てくれ、私と一緒にアメリカ用に少し手を加え完成した結果、学生が感じて作り上げた、学生らしいイキイキとしたエネルギーを感じる舞踊だと、アメリカでも大好評でした」。
「学生らしさ」という意味では、「和太鼓演奏は学生の時にしか叩けない太鼓がある」といいます。「和太鼓と舞踊のこのチームは、プロフェッショナルではないけれど、アマチュアでもない、濃密な時間の中で太鼓や舞踊の稽古を積み重ね、アメリカでも現地スタッフと真剣に舞台づくりに携わってきた、“大学生の大学生による”公演です。舞台上で、そして舞台裏で見せる学生たちの喜びの表情が、現地の人たちの心をとらえ、『また来年も……』と継続につながってきたのでしょう」。
現地の学生をはじめとする人びととの交流も盛んで、一緒にランチにでかけたり、本屋に連れて行ってもらったり。ネットでもつながり、もっと日本文化を学びたいと日本への留学を決めたアメリカの学生もいるのです。「公演という媒体を通して、現地の人との触れ合いもこのプロジェクトの目的の一つ」と小山教授。「来年も待っているよ」という現地の人びとの思いに応えるエネルギッシュな舞台づくりが、これからも続きます。

瀬下 喬弘(せしも たかひろ)さん 4年

高校生の時にオープンキャンパスで本学を訪れ、その際の和太鼓演奏に感動して受験を決意。入学したら必ず「アメリカ桜祭り公演」のメンバーに加わりたいと考えていました。2年目に和太鼓チームのチーフを務め、チームのカラーを言葉ではなく、太鼓の音や振り、表情で出していけるよう真摯に取り組んできました。2年連続で公演に参加したことで、お客様に感動を与えられる観せ方を少し理解できたように思います。この経験を活かし、ミュージカルの舞台に立つという、子供の頃からの夢を必ず実現させたいと考えています。

根本 真子(ねもと まこ)さん 4年

2年連続で参加し、舞踊チームのまとめ役を務めました。公演最終日は昼夜2回公演だったのですが、昼公演開演前からメンバー全員ボロボロ泣いていました。30数日間の厳しい稽古、現地でのタイトなスケジュールなどを思い返し、「これで終わりなんだ」と涙があふれました。一方、帰国後の凱旋公演は一転して、みんな笑顔。「やりきった」という達成感でいっぱいで、うれしさから笑顔になったのだと思います。公演に参加して、自分は人と関わることが好きなんだと気づかされ、何かしらの形で、指導や育成に携われたらと考えています。

関連記事:芸術学部『和太鼓チーム』世界大学総長協会総会で「玉川太鼓」を披露

凱旋公演動画