英語を学ぶ"環境"にまでこだわった「ELF Study Hall 2015」

2016.03.24

玉川大学では2013年から、「ELFプログラム」という新しい英語教育を導入しています(全学部への導入は2014年より)。ELF(English as a Lingua Franca)とは、「共通の母語をもたない人同士が意思疎通するための英語」を意味するもので、ELFプログラムでは、いわゆる“ネイティブスピーカー”に合わせた英語ではなく、世界中の人々とコミュニケーションするための、共通語としての英語を身につけます。

2016年4月から利用開始する『ELF Study Hall 2015』

その学修拠点となるのが、2016年4月から利用開始する『ELF Study Hall 2015』です。5大陸をモチーフとした赤・青・緑・黄・黒の5色を配したデザインが印象的な建物で、ELFプログラムを学ぶ教室のほか、学生同士や学生と教員の交流の場となる「ELFラウンジ」が設置されています。
実はこの教室やラウンジで使われているイスやソファは、ELFセンター長を中心に3名の現場の先生方が学生の学修効率を重視して半年以上時間をかけて選定したもので、ELFプログラムの授業に合った特性を備えています。その大切にした選定ポイントや、それらを使ってどのような学びが展開されるのかを、選定を行ったメンバーの1人である祐乗坊 由利 ジョディー助教に聞きました。

社会人に求められる国際スキルを大学で育成

玉川大学のELFプログラムの指導教員は、“ネイティブかノンネイティブか”ではなく、「自身に外国語習得の経験がある」、「英語教育に関する修士課程を修了している」などを条件としています。その結果、現在では13の国籍、14の母語という様々なマルチリンガル教員で構成されるようになりました。
祐乗坊助教はニューヨーク生まれの日系2世。アメリカの大学で国際関係を専攻後、日本の大学に研究生として留学し、日本語と比較法学を学びました。修了後は、日本の国際的な企業でグローバル人材開発の仕事に携わりました。その際、同時に大学院で英語教授法を学び修士号を取得しました。企業での人材開発の経験から、社会人に備わっていてほしい 「グローバル・コンピテンシー・スキル」が足りない人が多いという実状に着目するようになりました。

「グローバル・コンピテンシー・スキルにはさまざまなレベルがありますが、例えば社会人1年目であれば、英語でプレゼンテーションやグループディスカッションができるコミュニケーションスキルが求められます。しかし実際には、その段階に達している人が少なく、『プレゼンでは下を向いて原稿を読んでしまう』『ディスカッションをしても自分の意見を言わず、リーダーの意見に流されてしまう』という現状を目の当たりにしました。それはつまり、大学においてグローバルスキルを磨くトレーニングの必要性を提示していると言えます。大学でしっかりトレーニングを行うことで、国際的な企業での仕事にスムーズに入っていける人材を養成できると考え、大学教員になりました」

既存の教室はコミュニケーションにふさわしくない

では、国際的なコミュニケーションスキルを磨くためには、どのようなトレーニングが必要なのでしょうか。祐乗坊助教はコラボレーションによるアクティブ・ラーニング学修が効果的だと話します。
「他者とコラボレーションすることで、そこにクリエイティビティやクリティカルシンキングが育まれます。ELFプログラムでいうと、グループで英語を使って商品開発などに取り組むProject Based Learning (PBL)の学修がそれにあたります。
例えば、清涼飲料水の新しいフレーバーを考えるとします。まず、課題を発見し、それに対して独自のアイディアを議論することで問題意識がうまれてきます。それを振り返り、分析し、グループディスカッションとプレゼンテーションを行うことで、コミュニケーションスキルが育まれるのです。まさに、今、社会が大学教育に求めるグローバル人材とはこのようなスキルを持ち合わせた人なのです。

こうした学修は、大学によくあるイスもテーブルも前を向いて固定されているスクール形式の教室では、取り組みにくいことは明らかです。
「グループで作業をしたくても、イスもテーブルも動かせない。全員が前を向いている状態では、お互いにディスカッションをすることも困難です。プレゼン用のポスターをつくるにしても、用紙が固定机上の学生の前にあるうちは、他の学生には手が出せません。」

コミュニケーションを円滑にする環境とは


グループワークに容易に活用できる様子を説明

そこで今回、『ELF Study Hall 2015』の完成とともに導入されたのが、独創的な左右両利き対応のメモ台付のイスです。
「このイスなら、全員が前を向いて講義形式の授業にもグループワークにも瞬時に対応でき、アクティブ・ラーニングを促進することができるのです。また、レイアウトの変更により集中力アップとチームワークが深まります。イスにキャスターや荷物置きも設置しているので移動時もとても楽です。
また、イスのカラーが5色あることにも重要な役割があります。これを使えば、『ブルーグループ』『グリーングループ』といったランダムなグループ分けも可能です。日本の学生は友人同士でグループをつくりたがりますが、ランダムにグループを毎回作ることによって自ら色々な人と対話をし、自分をよく知ることができます。これはグローバルコンピテンシーの一つ、リーダーシップのレベルアップにもつながります。」

さらに、特にこだわったのがメモ台だといいます。
「イスを向かい合わせたり、横に並べたりしてメモ台同士をぴったりくっつけると、一つの大きなテーブルになります。これなら、ポスター制作のときにもグループの全員が関わることができます。1台あたりの大きさも、A3用紙が載る程度あるため、ノートパソコンと資料を置いてライティングの学修をするのにも不足はありません。

左右両利き対応のイス

また、このタイプのイスのほとんどは右利き用につくられています。したがって、左利きの人は非常に動きづらく、書きづらいものなのですが、教育現場でそのような不利益が生じてしまうのは問題があります。その点、このイスのメモ台は位置を動かせ、左右両利きに対応できるようになっています」

ELFラウンジに導入されるソファの機能を説明

「左右両利き対応のメモ台付きのイスの他、タイプの異なるメモ台およびキャスター付きのイスや机も配置し、さらに特注で左利き用のイスも27人用教室に3脚の割合で導入しています。利き手を不利になることなく、全員の学生に同じ快適な環境で学んでほしいからこそ、ここまで配慮した取り組みを行っているのです」

『ELF Study Hall 2015』の1階のELFラウンジに置かれているユニークな形のソファも、これらと同じ視点で導入されたものだといいます。

「教室がフォーマルな学びの場であるとすれば、ELFラウンジはインフォーマルなコミュニケーションの場です。普通に座っても良いですし、靴を脱いで寝そべってもかまいません。英語を使うのは、なにもフォーマルな場面に限ったことではありませんから、こうしたインフォーマルな場でリラックスしながらコミュニケーションすることも大事なのです。
例えば教室でのグループディスカッションが煮詰まったら、休み時間には気分を変えて、ソファでリラックスして話し合ってみるといった使い方もあるでしょう。

現在、アメリカに本社のある先進的なIT企業を中心に、横になりながら仕事ができたり、食事をしながら会議ができたりする場を、導入する事例が出てきています。こうしたリラックスした環境が、新しい革新的なアイデアを生むために必要であると考えられているからです。大学時代からそのような場に慣れておくことは、これからの先進的な企業で働くうえでも、役立つ経験になるでしょう」

学生も教員もお互いに学び合うという関係

最後に祐乗坊助教は、これから玉川大学で学ぶ学生や、入学を考えている高校生に、次のようなメッセージを贈ります。
「ELFプログラムで学ぶ英語は、高校までに習ってきた英語とは大分異なります。主役は常に自分。先生から一方的に教えてもらうということはありません。自ら主体的に学ぶという姿勢、あるいは、お互いに学び合うという関係性がここにはあります。そのような環境で学んでみたいという人にとっては、ここ『ELF Study Hall 2015』は、日本でも数少ない貴重な学びの場となるはずです」

           ELFセンター長の小田 眞幸 教授と祐乗坊 由利 ジョディー 助教(ELF Study Hall 2015)