実社会でのデザイン制作に触れる。アクア・アグリステーションの壁面デザインに、芸術学部の学生が参加しました。

2016.05.30

2016年4月から本格的な運用が始まったアクア・アグリステーション。LEDを使って野菜を栽培するSci Tech Farmのように、閉鎖系で水を浄化・循環させることにより海洋生物の養殖を陸上で行う、画期的な研究施設です。ELF Study Hall 2015前の、かつては温室として利用していた建物を大幅に改修したこの施設の壁面デザインに、芸術学部の学生たちが参加しました。

芸術学部ではこれまでにも、Future Sci Tech LabやKEYAKI食堂、朔風館、そしてELF Study Hall 2015などのサインや内装デザインを担当してきました。そうした中でも今回の壁面デザインの「アクア・メディア・パネル」は、規模の大きいものとなります。

デザインは芸術学部メディア・デザイン学科の田中敬一教授と柏原エリナ非常勤講師が担当し、「空間環境造形B」の授業を履修した空間デザインに強い関心をもつ学生3名が記録として参加しました。中でも2年の新川晃子さんは、以前から柏原先生に空間デザインに興味があることを伝えていて、念願がかない今回の参加へとつながりました。他にも4年生の馬込夏帆さん、小俣慶祐さんが参加しました。

アクア・アグリステーションの建築物としての特徴は、かつて温室だったガラス張りの建造物の内部に陸上養殖の研究を行うための本施設が設置された「スケルトン・インフィル」という特殊な構造にあります。内側の本施設部分にデザインを施すことで、外を通る人もガラス越しにデザインをみることができる仕組みになっています。また、壁面といってもインテリアに近いかたちで、自由なデザインワークが可能になります。
こうした中で田中先生・柏原先生が提案したのは、この施設で養殖されるアワビをモチーフにしたものでした。「アワビの貝の内側には、古くからの工芸品である螺鈿(らでん)のような、七色の光沢を放つ美しさがあります。その部分を磨いて、LEDで光を当てようと考えました」と柏原先生。アワビの貝はホタテ貝のように象徴的な造形ではないため、複数の貝をパネルに張り、モチーフとすることにしました。「また光の当て方に関しても貝に向けて外側から照射することも考えましたが、照明機器が貝自体の視認性を損なうと考え、貝の内部にLEDを装着しました」。最終的にはこのパネルを稼働させることで、波をイメージさせるデザインとなりました。

記録を担当した学生たちは、施工会社の方との打ち合わせにも参加し、社会でデザインがどのように行われるのかを目の当たりにしました。「1年次の『光演出』という授業で建築模型制作を体験していたのですが、柏原先生が提案用に制作した模型は細かな部分までデザインの意図が反映されていて、『これがプロの仕事なのか』と気付かされ、とても刺激を受けました」と新川さん。もともとは家具などのインテリアが好きでメディア・デザイン学科に入学したそうですが、より広い空間デザインにも興味がわきました。「これからもこのようなプロジェクトには積極的に参加したいと思っています」と語る通り、春休みもウェアラブルテクノロジーアートを中心に国内外で活躍している柏原先生が携わっているカナダのファッションショーの手伝いで、毎日のように大学に来ていました。

「授業でデザインを指導しても、実際の現場では学んだ通りに物事が進むことはありません。通常、そのことに気付くのは、実際に社会に出てからなのですが、玉川大学のプロジェクト型授業では、在学中から現場を見て学ぶことができます。しかもキャンパスの中で体験できるわけです。教育環境も整っていますし、学生は自分の大学のことなのでモチベーションがぐっと高くなります」と柏原先生。また、アクア・アグリステーションで研究を進める農学部の渡邉博之教授も、「さまざまな形で、学部の枠を超えた学修ができると思っています。たとえば田中先生や柏原先生がデザインの素材として使用するLEDは、私たちも光の野菜栽培で使用しています。また工学の分野ではユニバーサルデザインが注目を集めていますが、それを工学部と芸術学部の学生が共同で研究するといったことも考えられます。そうしたことが可能なのも、『ワンキャンパスの総合大学』という玉川のアドバンテージだと思います」。

アクア・アグリステーション内の最先端水処理装置(右上)とアワビの養殖水槽(左下)

アクア・アグリステーションはアワビの養殖を皮切りに、絶滅が危惧される魚類の稚魚の養殖などにも挑戦していく予定です。こうした施設の特性に合わせて、アクア・メディア・パネル自体も今後進化していくことに。「これから、サンゴを新たなモチーフとして追加する予定になっています」と柏原先生。水産資源の新しい技術を研究する施設「アクア・アグリステーション」。研究とともに洗練されたデザインにも注目ください。

「アクア・メディア・パネル」取り付け時に(馬込さん、柏原非常勤講師、新川さん)