今夏、産学連携の研究成果がいよいよ実を結びます。小田急との産学連携で、駅での乗降行動の調査を実施。学生たちの最終報告が、小田急本社で行われました。

2016.06.13

玉川大学は小田急電鉄株式会社と「連携・協力に関する基本協定」を締結しています。双方より連携取組テーマの候補を持ち寄り協議した結果、工学部マネジメントサイエンス学科の人間工学研究室(阿久津正大教授ゼミ、現在はエンジニアリングデザイン学科 )による研究「利用者の列車乗降行動と乗車意識からみた分散乗車促進策の検討」が選定されました。これにより、阿久津ゼミでは学生たちが玉川学園前駅で乗客の乗降行動の調査および学生・生徒へのアンケートを実施。2015年4月には小田急電鉄の方をお招きして学内で中間発表が、そして2016年3月25日(金)には小田急電鉄本社で最終的な調査結果発表が行われました。

紺色のスーツを着用して小田急電鉄本社に集まった学生たち。少し緊張した面持ちで社屋に入ると、通された会議室でプレゼンテーションの練習を繰り返しました。小田急電鉄からは旅客事業部や安全・技術部、近隣の主要駅長(登戸駅・新百合ヶ丘駅・町田駅)など、予定以上に多くの部署から担当者の方々が参加し、今日の発表への期待の程がうかがえました。そして16時から、プレゼンテーションがスタートしました。

プレゼンテーションの前半では、阿久津先生が調査方法の詳細や、その結果の発表を行いました。ラッシュ時には決められた以上の乗降時間がかかっていること、階段に近い車輌のドア口を利用する乗客が多いこと。またホームでは人数が多いグループほど、階段からの移動距離が短くなるといったことがわかりました。こうした調査結果はすでに中間発表でも説明されましたが、今回初めて参加した小田急電鉄の方も多く、興味深そうに聞き入っていました。
調査結果を踏まえて、5人の学生が分散乗車促進策の検討・提案を行いました。促進策としては駅の階段やエスカレーターを増設するといったハード面の改善は費用が膨大になるため、今回はソフト面での方策が提案されました。この方策を検討する前提として、停車時間内で何名の乗客が乗降できるのかを把握する必要があります。どの駅でも列車が到着して発車するまでの停車時間は決められています。学生たちはスムーズに乗降を行うためには、一つのドア口を何名の乗客が利用するのが最適なのかを、算出しました。そこから導き出された方策として、ホーム内を線で区切り、列車を待つために並ぶためのスペースと移動するためのスペースを認識させるという提案がされました。このスペースを検討するため、学生たちは一人当たりの適正な乗車待ちスペースを割り出しました。また分散乗車を啓発する方策の一つとして学内での教育活動の重要性についても提案がありました。たとえば学校の教室を利用して、一つのドアに集中して出ようとすると時間がかかることを体感させ、分散乗車の当事者意識を持たせるという教育活動も必要ではないかといった具体的な案も披露されました。プレゼンテーションの最後に、阿久津先生は「今回は人間工学の視点からの提言ですが、実際の導入を検討するとなればより深い検証が必要になります。その際には、本学の芸術学部とのコラボレーションによって、より具体的なプランをご提案することもできると思います」と話しました。

阿久津ゼミによるプレゼンテーションを聞いて、小田急電鉄の担当の方からさまざまな意見やコメントをいただきました。「ホーム内を線で区切るというように、お客さまに制限をかけるような発想は、鉄道事業者である我々からはなかなか出てこない案です。そういう意味でとても勉強になりました。また玉川学園前駅の場合は一つの学園からの利用者が多いわけですから、学校の放送部に協力していただいて駅構内で啓蒙活動を行うと、我々鉄道事業者が行うよりも当事者意識が高まるかもしれませんね」。「駅の構造はその場所の状況に合わせて考えられているので、必ずしも理想通りというわけではなく、日頃ご利用いただいている皆様にはご不便をおかけしているのではないかと思います。そうした中で、我々が普段感じていることを基礎データとしてまとめていただいたことは非常にありがたい。このデータには今後の方策を考えるための多くのヒントがあるのではないかと思います」。

このように小田急電鉄の方々から高い評価をいただき、学生たちもようやく緊張の糸がほどけたようです。今回の調査結果は、今夏7月頃に冊子としてまとめられます。3月に卒業した4年生は、このプレゼンテーションには参加しませんでしたが、調査と卒業研究の両方を担当し、非常に充実したゼミでの活動になりました。そして2年生や3年生にも、とてもいい経験となったようです。鉄道会社にとって、乗降に必要以上の時間がかかることで起こる列車の遅延は、大きな問題となっています。今回の学生たちの科学的アプローチが、ラッシュ時の遅延解消などの大きな一助となるかもしれません。
今夏、玉川大学と小田急電鉄株式会社との産学連携の成果の一つが、このように実を結びます。

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