LED野菜とミツバチ。玉川が誇る学術研究所を舞台に、本年度二回目のK-12親学講座が開催されました。

2016.10.05

玉川学園K-12では、保護者の方を対象に、毎年「親学講座」を複数回開催しています。9月14日(水)には本年度二回目となる親学講座を開催しました。今回は「玉川大学学術研究所の見学・体験」と題して、生物機能開発研究センターとミツバチ科学研究センターの紹介・見学を行う2コースの講座が行われました。

食料生産の未来を大きく変える、LED野菜が持つ可能性 〜生物機能開発研究センター〜

環境保全や食料増産などを生物科学の面から研究する生物機能開発研究センターでは、Future Sci Tech LabとSci Tech Farm(LED農園)の紹介および施設見学が行われました。施設紹介を担当したのは、センターの主任で農学部でも指導を行っている渡邊博之教授です。テレビなどで紹介されることも多いLED野菜の栽培工程を見られるとあって、集まった保護者の皆さんも興味津々の様子です。
まずは渡邊教授による説明が行われました。「最近のように秋の長雨が続くと野菜、特に葉物野菜の収穫量が落ち込み、価格が高騰することがあります。これは消費者にとってデメリットですが、安定的な生産が行えないという意味で、生産者にとってもデメリットといえます。こうした中、さまざまな室内型の農場が進められています。室内型農場のメリットは安定的な野菜の栽培だけではありません。広い土地を必要とする従来の農場に比べ、栽培するスペースを垂直に積み上げていくことができるので、狭い土地でも大量の野菜を栽培することができます。現在、Sci Tech Farmでは12段で栽培を行っていますが、植物工場の高層化も実現できるでしょう。また、都心から離れた場所で生産し、トラックなどで輸送している野菜を、室内型の農場であれば都心でも栽培でき、これまでにない形の地産地消が実現します」。
Sci Tech Farmでは室内で発芽から収穫までをオートメーションで行うため、たいへん清潔な状態でパッキングされ、出荷することが可能です。「パッキングされた状態であれば、通常の野菜よりも長い期間シャキシャキとした食感を維持できます。一般的にスーパーマーケットでは仕入れた野菜の7割程度を販売し、残りは値下げしたり廃棄するのですが、このLED野菜は9割以上を完売しています」。

こうした室内型の農場は徐々に増加していますが、玉川学園のSci Tech Farmの大きな特徴について渡邊教授は「現在、LEDを用いて葉物野菜を生産する植物工場は増えてきていますが、そのほとんどは電力コストを考えて蛍光灯からLED光源へと変更しているものです。それに対してSci Tech Farmが行っているのは、LEDの光の波長を変えることで、植物の潜在能力を引き出すというもの。緑色、青色、赤色といった三つの光の量を調節することで、高機能な野菜を作ることをめざしています」と話しました。また、「Sci Tech Farmは葉物野菜を栽培することからスタートしましたが、今後は、イチゴやトマトなどの果菜類や医療用の薬草などにも挑戦していきたいと思っています」と渡邊教授。未来の社会では「野菜や薬草は工場で栽培」が、当たり前の世の中になっているのかもしれません。
説明を聞いた後、実際にSci Tech Farmを見学して回った保護者の皆さん。「日にちが経っても食感だけでなく栄養価も維持できるのか?」「タネについている雑菌は問題ないのか?」「事業として成り立っているのか?」などの質問に、渡邊教授は一つひとつにていねいに答えていました。

生態系の重要な役割を担うミツバチを深く掘り下げる 〜ミツバチ科学研究センター〜

一方のミツバチ科学研究センターは、国内で数少ないミツバチに関する総合研究機関として、1979年に設置されました。玉川大学学術研究所の中でも最も長い歴史を持つ研究機関のひとつです。玉川大学農学部におけるミツバチ研究は1950年にスタートしましたが、これは当時の昆虫研究では食物に害をおよぼす害虫の研究が中心だったのに対し、益虫も研究すべきとの考えから始まった研究です。当初は養蜂に関する研究が中心でしたが、次第に社会性も備えたミツバチを総合的に「ミツバチ科学」として捉えて取り組んできました。そして現在では、基礎生物学分野の研究と応用研究の分野をバランスをとりながら研究を進めています。
ミツバチと聞くと「ハチミツを採取するための昆虫」というイメージが強いですが、地球上の植物の90%が花粉を媒介してくれる生き物に依存し、私たちの食料となる作物の76%がミツバチを含むハチ類などに依存しています。また欧米では蜂群崩壊症候群が発生し、我が国でも交配用のミツバチの不足が起きるなどして、ミツバチの研究はこれまで以上に重要度を増しているといえるでしょう。
ミツバチへの関心の高さを示すように、この日の講座も定員を超える応募がありました。

今回の親学講座では、ミツバチ科学研究センター主任の中村純教授が講演を担当しました。当日は雨天で、「雨が降るとミツバチが巣箱から出ない」ため危険と判断され、残念ながら当初予定されていたミツバチの巣箱の見学は中止に。
中村教授の講演では、まず生物学や生産物、花粉媒介機能など、ミツバチ科学研究センターで行っているミツバチへの多角的なアプローチについての説明がありました。また私たちとハチミツの関わりや、養蜂の歴史、さまざまなハチミツの種類などについての話も。「ミツバチの祖先が誕生したのは今から約5000万年前、そしてハビリス人(原人)が登場したのが約250万年前といわれています。養蜂は約5000年前に古代エジプトで始まりました。このように人類とミツバチの関わりは非常に長いのですが、ヒトが登場する以前のサルや類人猿も、道具を用いてミツバチの巣を壊し、さらに別の道具を使ってハチミツを舐めていたのです」。そんなエピソードに興味深く聞き入る保護者の皆さん。「進化し、大型化した脳のエネルギー源として重要な役割を果たしていた」というお話に、人類の進化の歴史にはミツバチとハチミツが深く関わってきたのだとよく理解できます。
また、蜜源(花・植物)ごとに固有な特徴を持つ単花ハチミツについての説明もありました。アカシアとソバでは、採取されるハチミツの色も味も、まったく違ってきます。「料理によって単花ハチミツを使い分けるといった使用法も考えられます」とのお話に、保護者の皆さんは興味深く聞き入っていました。
講演の最後には、保護者の皆さんから質問が寄せられました。「蜂に刺されたらどうすればいいのか?」「よく聞くローヤルゼリーやプロポリスとは何なのか?」「2回刺されるとアレルギー反応が出てしまうのか?」など。中には「ニホンミツバチを飼っているが、分蜂するにはどうすればいいのか」といった専門的な質問もありました。
残念ながら巣箱を見ることはできませんでしたが、この日の中村教授の講演で、私たちの生活に密接に関わり非常に重要な役割を担っているミツバチのことを楽しく知っていただくことができたのではないでしょうか。

今回の親学講座はこれまでとは異なり、玉川大学で行われている学術研究の内容に触れる機会になりました。今後も親学講座では、さまざまな講座を企画していきます。