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【昨年度冬季を振り返って】玉川学園の伝統的な教育行事の「ハンネス・シュナイダー・スキー学校」を今冬も開催しました。

2017.04.04

毎年開催している、玉川学園4年生、5年生、7年生の児童・生徒によるスキー学校。冬の大自然を体験する教育として、1930(昭和5)年に玉川学園がオーストリアのスキー指導者ハンネス・シュナイダー氏を招聘したことから始まり、現在まで続く行事です。
今年は原点に戻り、「ハンネス・シュナイダー・スキー学校」と名称を新たにし、4、5年生は2017年1月5日から9日まで、7年生は2月3日から7日まで、いずれも長野県の志賀高原にて4泊5日の日程で行いました。
とくに7年生のスキー学校は、「スキー学校実行委員会」を中心に生徒が主体となって運営するもので、次のディビジョン(9年生)へ進学する前に自治活動を体験する重要な行事となっています。

2016年度7年生のスキー学校のテーマは、「自分に挑戦―Try for the top―」


玉川学園の「スキー教育」は、玉川の全人教育で6つの価値に挙げている「真・善・美・聖・健・富」のうちの「健」の教育を深めるためのもので、創立以来の伝統を受け継いでいます。創立者・小原國芳は「一面の銀世界そのものが大宗教であり、大道徳であり、大芸術である」と語り、児童・生徒・教員が寝食をともにしながら冬の大自然の中でスキーの技術を磨き、心身を鍛え、親睦を深める学校行事となっています。玉川学園創立の翌年の1930(昭和5年)には「アルペンスキー発祥の地」とされるオーストリアから第一人者のハンネス・シュナイダー氏を招聘し、一流のスキー技術を学園の児童・生徒・教職員、玉川大学学生に残しました。さらには、玉川学園だけでなく日本各地で講演や講習会等を行い、日本のスキー界にも大きな影響を与えることになった招聘であり、それは玉川学園から始まっているのです。

以来、玉川学園に連綿と続くスキー教育は、現在では4年生と5年生、7年生で行っています。今冬は長野県志賀高原にて、4、5年生は2017年1月5日から9日、7年生は2月3日からの4泊5日の日程でスキー学校を開催。名称を「ハンネス・シュナイダー・スキー学校」と改めて原点に戻り、スキー技術の向上をめざしました。

「とくに7年生は、生徒による『スキー学校実行委員会』を立ち上げて、生徒が主体的に運営する行事であることが大きな特徴です。年ごとにテーマを掲げ、今年の7年生が考えたのは『自分に挑戦―Try for the top―』。スキー学校の開催前からの準備や開催中の集団生活、開催後の反省会を通して、さまざまな場面で大きく成長するために挑戦を続けようと、生徒自らが目標に掲げました」 こう話すのは体育科の小林潤教諭で、さらにこの冬からの新しい試みについても説明しました。
「スキー指導を『国際スキー教師連盟(ISIA:International Ski Instructors Assotiation)』に加盟する日本で唯一のプロスノースポーツ教師の団体である『日本プロスキー教師協会(SIA:Professional Ski Instructors Association of Japan)』の資格を持つ指導員が行う点です。スキー学校の最終日にはSIAスキー検定のバッジテストを実施しました。以前は4、5年生の指導は教員と玉川大学教育学部で保健体育を専攻していた学生が教えていた時期がありましたが、有資格者にしっかりと指導してもらうシステムを導入し、今冬の低学年のスキー学校では4年生は教員の指導、5年生はSIA有資格者による指導としたのです。児童にとっては、『5年生になればインストラクターに教えてもらえる』という一つの目標にもなることでしょう。玉川学園は創立以来『歌に始まり、歌に終わる』と言われるように学園生活と歌は密接な関係にあり、『玉川に音楽ありき』と称されています。スキー教育も同様に創立者・小原國芳の思いを大切にしつつ、『玉川のスキー』を再構築する時期に来ていると考えています。今の時代は資格取得を重視する傾向にあり、国際的に通用する『SIA』の検定資格を有することも、将来国際化社会で活躍するための、一つの経験、一つの目標になり得るのではと考えました」

生徒自らの手で運営する玉川学園7年生のスキー学校

7年生のスキー学校の最大の特徴である「スキー学校実行委員会」を中心とした生徒が運営するシステムは、7年前に始まりました。今年は、7年生レギュラークラスの4クラスと国際バカロレア(IB)クラスの2クラスから各クラス4名の実行委員を選出。選出にあたっては事前に現8年生が昨年度のスキー学校実行委員会のメンバーが行事の概要や生活などを伝える講演を行い、実行委員会の活動に興味を持った生徒が立候補し、各クラスで立候補者が理由や目標をスピーチで訴え、認められると就任します。また集団生活をスムーズに送れるようにさまざまな係の生徒が、実行委員がリーダーとなり主体的に活動します。その係とは下記の通りで、生徒の多くが何らかの形でスキー学校の運営に関わり、「生徒自らの手で実施」することにこだわりました。

部屋長係…部屋でのルール決め、整列の仕方等 風呂係…入浴の順序や入り方等 日直係…起床時と就寝時前の放送等 開閉会式係…開会式・閉会式の内容の決定や進行等 レク係…集会時のレクリエーションの企画や進行等 記録係…スキー学校期間とその前後の撮影や記録、CHaT Netでの配信等 掲示係…スキー学校開催までのカレンダー作成や、7年生校舎フロアでの掲示物の企画や作成等 食事係…食事の順番決めやアルコール消毒対策等 労作係…スキー学校期間中の美化コンクールの企画等

「4、5年生は教員が用意したルールなど、レールからなるべく逸れないように走って行く行事であるのに対して、7年生では生徒たちで作り上げる自治活動の一つととらえ、自治活動が増える高等部に進学する前に体験させたいと考え、7年前から導入しました。宿や交通手段の手配等は教職員が行いますが、スキー学校の行事を成功させるためのルール作りなどのさまざまな準備を生徒がゼロから始めます。昨年9月の体育祭準備が始まった頃から、今年2月のスキー学校実施に向けて週に1回集まって会議を開き、ルール作りでは『スキー学校の目標ってなんだろう』から討論が始まり、お菓子や携帯電話を持参してもよいか、宿泊中に自動販売機でジュースなどを購入してもよいか、自由時間のテレビは見ることはできるが見るチャンネルはどうするか、お小遣いはいくらにするか、ゲームは持ってきてよいのか等々、『こんなことまで自分たちで決めていいのか』と生徒が驚くほどじつに細かくルールを設け、なぜよいのか、なぜだめなのかという理由も実行委員会で考え、話し合って決め、各クラスに伝達します。結論にたどり着くまでは時間がかかりますが、これをやり遂げると大きな成長が待っています」

こう話すのは、体育科の大澤誕也教諭です。実行委員を務めた生徒たちは、次のディビジョン(9年生)へ進学するとペガサス祭など大規模な行事でも力を発揮するようになるようです。小林教諭は生徒への影響だけでなく、教員が教育の原点に立ち戻るきっかけになると話します。
「生徒たちが『自分たちでできた』と感じるには、教員はどうサポートすればよいか、生徒たちの力を引き出すためのアドバイスや見守り、引き際など、『エデュケーション』の語源である『能力を引き出す』という意味を考えさせられる、教員にとっても重要な行事なのです」

ハワイ州プナポウ校の一行も参加し、大いに盛り上がった志賀高原での日々

7年生のスキー学校は2月3日の午前に出発し、午後に志賀高原へ到着後は開校式を行い、さっそくスキー講習を始めました。宿では部屋割は各クラス内で生徒たちが話し合い、仲よし同士だけでなく新たな友だちづくりにも挑戦したといいます。労作を大切にする玉川学園のスキー学校では、期間中に「美化コンクール」が催されます。集団生活の中で共同で使用する部屋を整理整頓することは基本中の基本。スキー講習時間中に教員が各部屋の整理整頓状況を判定し、きれいな部屋は何パーセントかなどと分析まで行います。
「散らかしたままの部屋があり、生徒の自主性を促すために、非常にきれいにしていた部屋の写真を撮り生徒たちに見せると、『ここまでやるんだ』と驚いていました。整理整頓の仕方は、私たち教員が模範を示す訳ではありません。創立者・小原國芳は、労作の『作』は作業の作ではなく、創作の作であり、『自ら考え、自ら体験し、自ら試み…』としています。部屋に入った瞬間に『気持ちよいな』と思える片づけを、生徒一人ひとりが考えて実行に移すことが大事なのです」(小林教諭)

また、レクリエーションでは3日目の夜にクラス対抗の合唱コンクールと借り物競走を行いました。合唱コンクールは各クラスで生活の歌(讃美歌も含む)を1曲選び、授業前や昼休みに練習を積み重ねてきました。借り物競走は、各クラス4名が選手となり、お題をもらったら自分のクラスから人を選びます。たとえば、「足の速い人」「一発芸が上手な人」など、クラスメイトのことをよく知っていないとできない実行委員会が創作したゲーム。生徒と教員も一緒に楽しめ、盛り上がったレクリエーションでした。

玉川学園では毎年8年生になるとアメリカ・ハワイ州のプナホウ校への訪問研修があることから、この7年生のスキー学校へプナホウ校から国際交流を目的に生徒16名と教員2名が参加しています。日本語の練習に励み、日本語の歌を披露するなど、日本の冬を満喫しつつ、生徒との国際交流を深めました。

合唱コンクールの様子
プナホウの生徒
プナホウ校の生徒、スキー場にて

今の時代に合わせて「玉川のスキー教育」を発展させていくための課題

今冬も無事に終了したスキー学校は、生徒全員での反省会を行い、来年度の新7年生へと引き継がれていきます。今後の展望について、大澤教諭は次のように話しています。

「1930年に始まった玉川学園のスキー学校は、オーストリアの第一人者を招聘し、その後もオーストリアのスキー国家検定スキー教師を招くなど、単なるスキー学校行事の枠を超えて日本のスキー界の発展に寄与してきました。1999年にはオーストリア国立スキー学校の全面的な協力を得て『スキー学習サポートシステム SKI COSMOS』(玉川学園体育センター編、玉川大学出版部刊)を発売。CD-ROMに映像を収録するなど画期的なスキー指導書を世に送り出しています。この財産を深め、発展させていこうと、2016年にはスキー教育に関わるK-12と大学の教員9名によるオーストリア・スキー研修を敢行し、現地で最新の実技と理論を吸収することができました。これを今後の玉川のスキー教育に活かすためにも、スキー学校実施学年の再検討も議論の一つに挙がっています。現在4、5年生が2年連続で行っているのに対して、9-12年では実施していないなどの課題もあり、3、5、7年生での実施と9-12年生で実施を検討したいと考えています。

また、スキー離れが進む中で、スノーボードやクロスカントリー、テレマーク、バックカントリーなどのスノースポーツという大きな枠組みの中で雪山を楽しむことも考えなければならないのかもしれません。一方、スキー教育の研究面ではスキー教育を実地だけでなくタブレットを利用して行うなども検討課題ですし、1-4年を指導する教員の、研修にも注力する必要があります。時代の変化に合わせて、『玉川のスキー教育』を発展させていきたいと考えています」

小林教諭はスキー学校の教育的意義を再確認するうえで、次のように話しています。

「玉川の教育は『人生のもっとも苦しい場面で微笑みをもって担当する』としていますが、スキーの技術を上げる楽しいひとときがある一方で、スキー学校実行委員会のメンバーに選ばれると責任が生まれ、生徒と教員の間でさまざまに悩むことが多い。それでもこの行事を乗り越えて成長した姿を見せてくれるよう、私たち教員も模索しながら生徒の力を引き出せるよう見守っていきたいと考えています」
まもなく新入学の季節です。新7年生のスキー学校はどのような形になるのでしょうか。期待を持って見守っていきたいと考えています。

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