SGH「グローバルキャリア講座」で高井研さんの特別講演を実施

2017.11.16

「グローバルキャリア講座」は、2014年度よりスタートしたスーパーグローバルハイスクール(SGH)プロジェクトの取り組みです。毎回、様々な国際的な課題について、各界の専門家の講話を通して、生徒たちがグローバルな課題への関心と具体的なイメージを得ることを目的として開催しています。今回はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)プロジェクトの生徒と共同での発表のほか、海洋研究開発機構(JAMSTEC ジャムステック)の微生物地球学者である高井研さんをお招きした特別講演を実施しました。

地球環境・気候変動をめぐるSGHとSSHの生徒たちによる発表

10月20日(金)8時30分、玉川学園大体育館に9〜12年生の全生徒が集合。12年生の司会のもと、開会の言葉と本日の進行予定、そして特別講演のゲストである高井研さんが紹介されました。

最初に登壇したのは、「SGH玉川学園模擬国連会議(TMUN)」に参加する生徒たち。発表テーマは「寒冷化状況下での食料安全保障」でした。地球温暖化については広く知られていますが、一方で地球は寒冷化に向かっているという説も唱えられています。生徒たちは寒冷化のメカニズムやそれがもたらす食料生産・利用などへの影響を考察し、国の代表としてどのように判断すればよいのかを発表しました。

続いて登壇したのはSSHの課題研究でサンゴ研究に取り組む生徒たち。彼らは玉川学園内で飼育したサンゴを石垣島の海に移植する活動を続けています。今回の発表テーマは「サンゴの白化」。「白化」とは高水温などで強いストレスを受けたサンゴが白っぽくなって、弱ったり、死滅してしまう現象のこと。昨年、石垣島のサンゴの大規模な白化が問題となり、専門家が調査に乗り出しました。生徒たちは白化の原因を調べると共に、生態系や漁業、観光でサンゴが果たす役割について考察。温暖化が進む中でサンゴを守るためには、科学者だけの力では解決できず、行政機関との連携が大きな課題となると結論付けました。

「文系と理系」「科学と社会」をめぐる本音のディスカッションを展開

続いて、発表を行ったSGHとSSH両プロジェクトの生徒とゲストの高井さんによるパネルディスカッションが行われました。
はじめに「科学の特長と問題点」および「現代社会の特長と問題点」、それぞれの論点整理を行った後、会場の「文系」「理系」の生徒たちにお互いをどのように思っているかを聞きました。「文系の人はなぜ数学があれほど理解できないのか?」「確かに理系の人は数学が得意で頭の回転が速い」「でも、理系の人は論理的で細かいので時々疲れてしまう」「文系の人だって何かと人の意見に反論するのが好き」など、生徒たちの本音が次々に飛び交いました。さらに数学教員、英語教員がそれぞれの科目を学ぶ意義についてこちらも本音でアピール。最初はやや戸惑い、緊張していた会場はすっかり和やかで闊達とした雰囲気に包まれました。

さらに高井さんが「(現在科学者である)私は高校の頃は国語が得意だった。実は科学するために最も大切なのは自分の考えをきちんと語ることができる国語能力。語るべきことを持っていない人は、何をやってもダメだと思う」という発言に深く頷く生徒や教員の姿が多数見られました。

このようなパネルディスカッションは初の試みということもあり、生徒たちによる議事進行は慣れていない部分もありましたが、このディスカッションを通して「文系と理系」あるいは「科学と社会」が、私たちの社会にどちらも必要不可欠であることへの理解が深まり、最後に「玉川学園の中でもSGHとSSHが連携して何かできないか?」という課題を全員で共有することができました。

ユーモアの中に熱い思いが込められた「なぜ学ぶのか?」という高井さんの問いかけ

休憩をはさんで、いよいよ高井研さんの登場です。
“微生物ハンター”また“ミスター深海調査”などと呼ばれる高井さんは、日本が誇る潜水調査船「しんかい6500」に搭乗し、高温高圧の過酷な環境下の微生物を調査し、地球に生命が誕生した謎にアプローチされています。生命の起源は深海の熱水にある──そんな仮説をスタートラインとしたその探究は、今や地球を飛び出して土星の衛星エンケラドゥスでの地球外生命探査計画にまでおよんでいます。

この日、自ら考案した講演タイトルは人気アニメにちなんだ「アナタ自身のワンピースを求めて」。「高校生として、高校生だからこそできること、考えることがある」という高井さんは、まず「なぜ勉強するのか?」というテーマで、持ち前のユーモアを繰り出しながら生徒に向けて語り出しました。
特に印象的だった発言をピックアップしてみましょう。

「学校の勉強や受験勉強だけが学びではない。人は死ぬまで学び続けるもの。お父さんとお母さんから『勉強しなさい』と言われたら『お父さん(お母さん)は、今、何を勉強しているの?』と問い返せばいい」

「人は誰かを好きになることと同じぐらい自然の感情として、知らないことを知りたいと望んでいる。それこそが学ぶことなんだ」

「人類の20%は、新天地を求めて旅をしたくてたまらない気持ちになる遺伝子を持っており、その遺伝子が人類をアフリカ大陸から南米の南端パタゴニアまで導いた。今、遺伝子研究でそんなことがわかっている」

「人間の意識なんて脳全体の5%の領域にすぎず、残り95%は無意識下の働き。ほんとうの自分はいろんなことを学びたいのに、5%の“ちっぽけな自分”が無意識の“知りたい”気持ちを邪魔している。だから意識を変えれば、学ぶことは楽しくなる」

「自然や宇宙、生命について考えていると、自分のちっぽけな悩みなんて『しょーもない』と感じられる。科学を学ぶことで、広大な銀河から極小のクォークの世界まで自分のリアルの世界が広がり、目の前の現実を飛び越えたものの見方ができるようになる」

「高校生の今だから感じられる柔軟な感性で学ぶことを楽しんでほしい。それが今日、皆さんに一番お話ししたいこと」

生徒たちを前に「学ぶこと」の意味を熱く問いかけた高井さんは、続けて所属されている海洋研究開発機構(JAMSTEC)を紹介。「しんかい6500」など日本が世界に誇るその研究体制が、今後は施設や装備の規模を誇るハードの時代から、創意工夫で勝負するソフトの時代に移行すると解説。さらに今後はクラウドファンディングなどの手段によって、国民一人ひとりが科学の発展を担うようになることを示唆し、自身も多くの人々の支持と共感を集めるべく、科学をエンターテインメントとして面白く見せる戦略を実行していると話しました。
現在、構想されている土星の衛星エンケラドゥスでの地球外生命探査計画にも触れ、生徒たちの世代が、アニメの「ワンピース」さながらの「太陽系大航海時代」の担い手となることを期待していると語り、「ここにいる皆さんも、ぜひ未知の海に漕ぎだしてほしい」と力強くエールを送りました。

講演終了後は、高学年校舎205教室に場所を移して、希望する生徒と高井さんの懇談会を開催。高井さんは生徒たちの質問に会話を楽しむかのように一つ一つホンネで丁寧に答えていました。懇談会に参加した12年生の生徒は「以前から高井さんを尊敬していたので、直接お話しできて感激しました。今日のお話の中では『好きなことに対してのめり込むだけでなく、遠くから俯瞰して見ることが大切』という言葉が最も心に響きました」と興奮冷めやらぬ面持ちで話してくれました。

現在、高井さんは全国47都道府県のSSH校を巡って授業をすることを目標にされているとのことで、今回、東京都の学校として玉川学園を選んでくださいました。生徒や教員の中からは、「キャンパスの一部は神奈川県なので、今度は神奈川代表としてもう一度玉川に来ていただきたい」という声も聞かれるなど、高井さんの講演内容と飾らぬ人柄は玉川の丘に大きなインパクトを残したようです。