子供は小さな地球市民 ユネスコスクール玉川研修会「ESDと地球市民教育」

2018.01.31

2008年、玉川大学教育学部はユネスコスクールに加盟し、ユネスコ本部、文部科学省に認定されました。ASPUnivNet加盟校として、2009年度より文部科学省「日本/ユネスコ パートナーシップ事業」の委託を受けている玉川大学教育学部では、ユネスコスクールの取り組みが学校現場で生かされるように、2009年から毎年「ユネスコスクール研修会」を開催しています。9回目となる今回は2017年12月16日に行われました。

ユネスコスクールに重なる玉川学園の教育理念

「人類の知的・精神的連帯の上に平和を築く」というユネスコ憲章の理念を学校現場で実践するため、ユネスコスクールはASPnet(Associated Schools Project Network)として、1953年から国際理解教育の実験的な試みを実践しています。現在、日本国内には1,034校、世界では180か国以上の国・地域で10,000校以上が加盟しています。
その理念は玉川学園の教育理念「全人教育」とも大きく重なるもので、玉川大学教育学部では2008年にユネスコスクール、ユネスコスクール支援大学間ネットワークに加盟し、首都圏を中心にユネスコスクールの支援に取り組んでいます。
今回の研修会ではユネスコの二大価値教育プログラム「持続可能な開発のための教育(ESD)」と「地球市民教育(GCED)」の学校現場での展開と、小学校、中学校、高等学校、大学と異学校種間の連携の可能性をテーマに行われました。当日は翌日に開催される「第4回ユネスコクラブ全国サミット」参加の各大学のユネスコクラブの学生をはじめ、教員の方々、政府関係者、地域のNPO、ユネスコ協会など多彩な層から参加者が集まりました。

ESDの実践への寄与を期待される研修会

公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の鈴木佑司理事長

近藤洋子教育学部長の開会のあいさつに続いて、文部科学省の川端和明国際統括官からの「持続可能な開発目標(SDGs)が国内外で注目される中、全ての学習者が、持続可能な開発の促進に必要な知識や技能を習得するために、主体的に交流し、理解を深め、将来の展望に導くことを期待しています」というメッセージが紹介されました。紹介を行ったのは、総合司会の小林亮教授です。小林教授は10年以上教育学部のユネスコスクール担当として携わり、本研修会の実行委員も務められています。
また、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の鈴木佑司理事長からは「国際的なレベルでないと解決できない問題が増える中で、教育の力が武器の力を上回るためには、ESDに関心を持つ人を増やし、世代を超えたモデルを作ってください」と、この研修会への期待が寄せられました。

  • 持続可能な開発目標(SDGs)…2015年に行われた「国連持続可能な開発サミット」にて、採択されたもので、2015年から2030年までに達成すべき、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会などの諸問題に対する17の目標。
開会のあいさつをする近藤洋子教育学部長
今回の研修会のまとめ役であり、当日の進行役、教育学部の小林亮教授

原点に立ちかえるユネスコスクールの意味

吉田敦彦教授はホリスティック教育、シュタイナー教育の日本における第一人者

大阪府立大学副学長、吉田敦彦教授による「ユネスコスクールにおける地球市民教育とサスティナブルな文化の形成」と題した基調講演が行われました。
「ESDと今後のユネスコスクールの展開を考える時に、平和と人権と文化といったユネスコの精神の原点を踏まえることが大切です」と吉田教授。玉川学園創立者の小原國芳も関わった世界新教育連盟の創立など、第1次大戦後から、教育に関する国際組織の変遷や関わった教育者の思想や思いに触れ、ユネスコ精神の源流について触れました。さらに、ユネスコスクールに求められる役割、地域、国、地球を貫く多層的なアイデンティティを作る上でのエンカウンター(=出会い)と対話の大切さを話しました。

学校によって特色のあるESDへの取り組み

筑波大学附属坂戸高等学校の主幹教諭でSGHを担当する建元喜寿教諭。現職教諭のままJICAの青年海外協力隊に2年間インドネシアで環境教員として活動

パネルディスカッションでは、小学校・中学校、高等学校でのESD、GCEDの事例紹介と異校種間の連携についての議論が進められました。

まず、筑波大学附属坂戸高等学校の取り組みを建元喜寿教諭が紹介。同校では前身に農業科があった背景から、大学の支援を受け小中学生への農業指導や給食の食材提供を行っています。さらにインドネシアの小学校での出前授業、現地の姉妹校で日本の大学生の教育実習など、異校種間、国境を越えた連携も続いています。

上尾市立東中学校グローバルシティズンシップ科研究主任の松倉紗野香教諭

中学校は、上尾市立東中学校の取り組みを松倉紗野香教諭が紹介しました。同校では「18歳選挙権実施に向けた社会参画意識の向上」「持続可能な社会の担い手を育成」「多様な他者と恊働できる力の習得」を3本の柱に、生徒が「どうしたら社会で一人の市民として、生きていけるか」を考えることを課題に取り組んでいます。
職業体験を前にした2年生はグループで企業を訪問し3年生はその経験を活かして市役所や児童館と関わりながら、よりよいまちづくりを考えます。当初からSDGsをカリキュラムの柱に据え、持続可能な社会の担い手を育てています。

小山田小学校の教務主幹、百田明弘教諭はユネスコアジアセンターのプロジェクトで韓国のユネスコスクールを訪問。

続いて小学校の現場からは、町田市立小山田小学校の百田明弘教諭が取り組みを報告しました。鶴見川の源流域にある同校は、豊かな自然環境を活かし、農作物の栽培や植林などを体験しながら学び、育てた野菜や米を給食に利用、地産地消でフードマイレージでも成果をあげています。また、学校林の竹から作った竹炭を販売し、収益を海外に寄附したり、留学生から外国の話を聞くなど、国際理解教育を進めています。

共通する課題はどのように継続させるか

会場からも質問や意見が寄せられたパネルディスカッション

各校の報告に続いて、ディスカッションがはじまります。
「山やフィールドでの活動では、大学生、高校生に助けられています。継続性からも大学との連携は大切です」と百田教諭。
松倉教諭は「中学生にとって学んだことを小学生に伝えることは大きな自信になるので、生徒が小学校に出向き、5年生6年生との交流を考えています。高校の先生方が見学に来てくださいますが、お互いに発見があります。」と校種間の交流、連携が新たな気づきを生むことを示唆しました。
「小山田小学校の地産地消ですが、ふるさとに帰ってくる子供を育てるということは今、ESDとして一番大切な課題です」と補足する吉田教授。「大阪では大阪府立大学が事務局となって小中高生のユネスコスクールのネットワークの活動をまとめています。ユネスコスクールに関わりの持った生徒が大学生になって、その事務局で活動し、卒業して教員になりました。このような事例が増えてくると世代間継承ができてくるのかもしれません。」と事例を紹介しながら、世代間交流によるユネスコスクールの継続性についても言及しました。
会場からも「社会のつながりが希薄になった今、学校を超えた縦の連携があれば異年齢間のつながりが生まれ、地域に出れば大人や高齢者とのつながりも生まれます。それが国を超えてユネスコの活動や世代を超えた持続可能な社会につながります」との声が上がりました。

ワークショップでSDGsを身近なものに

前回も好評だった松倉教諭のワークショップ

松倉教諭がファシリテーターとなり、GCEDの学校現場での実践を研修会参加者が体験するワークショップが行われました。
参加者5・6名で一つのグループになり、『持続不可能』な状況や事項を自分の立場や社会の観点から考え出し合います。例えば「車通勤者にとって長時間の車の渋滞」などです。これらを挙げたのち、SDGsのどの項目にこれらが当てはまるのかを見ていきます。どれも複数の課題が入り混じっていることを知る活動です。『一つのゴールだけで解決しない』。いくつものゴールが重なる社会を読み取ってほしい、SDGsやGCEDが身近なところにあると感じてもらえるきっかけにしたいという想いがこもったワークショップでした。

地球市民教育を子供たちから社会へ

盛りだくさんのプログラムを終え、講評と閉会の挨拶がありました。公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター参与の渡辺一雄氏からは「将来教師を目指す学生には目前対応はもちろんのこと大きな視野でものを考えること期待します」と参加した学生にエールを送りました。最後に、「この研修会で私が感じたことは、子供は小さな地球市民ということです。子供の教育を通して私たちの意識を変革し、連帯を進めていく。『子供たちが地球市民になるように』をゴールに、学校づくり、まちづくりを進めることが大切です」という前教育学部長の寺本教授の言葉で会が締めくくられました。

公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター参与 渡辺一雄氏
寺本教授が研修会を総括

世界につながる学生のユネスコクラブ活動

この研修会には玉川大学ユネスコクラブの学生も深く関わっています。ユネスコクラブ主務の小泉遥子さんは、
「今日の話を聞いて、大学生として他の世代ともつながりを作りたいし、全国サミットは同じ大学生としての対話の場なので、限られた時間ではありますが、有意義なものにしたい」と話してくれました。

翌日には、ユネスコスクールの大学生が集まる「第4回ユネスコクラブ全国サミット」が行われ、研修会で得た見地を取り入れながら、各大学の学生とともに小学校の出前授業などに使える教材を作りました。持続可能な社会を実現するためにユネスコスクールの活動が現場で花開いていくことを実感する機会となりました。