ANA総合研究所代表取締役副社長・河本宏子氏を講師に迎えた学友会寄付講座「一人ひとりが輝く 〜ANAダイバーシティ&インクルージョン」

2018.02.09

さる1月18日、玉川大学1号館で観光学部1年生を対象とした学友会寄付講座「一人ひとりが輝く ~ANAダイバーシティ&インクルージョン」が開催されました。この講座は、学友会が在学生支援の一環で行っているものです。講師は全日本空輸株式会社(以下、ANA)に客室乗務員として入社し取締役専務執行役員まで務められ、現在は株式会社ANA総合研究所代表取締役副社長の河本宏子氏。講演は以下の3パートに分かれ、1時間以上にわたって、ユーモアを織り交ぜながらも熱く学生たちに語りかけました。

1)「ANAの歴史と私のキャリア」

まず河本氏はANAの創業からの歩みを解説されました。第二次世界大戦後、日本はアメリカの占領下におかれ日本人のパイロットによる飛行機の運航が一時禁止される中で、1952年にANAは農薬散布などのヘリコプター事業として出発。当時の創業メンバー28人は、すでに世界に羽ばたく航空会社となることを夢見ていたと言います。1955年には国内線で初飛行を果たし、翌年には女性客室乗務員の採用を開始。スチュワーデスと呼ばれ、当時の女性にとっての花形職業になりました。
河本氏はボーイング747(ジャンボジェット)など大型航空機が導入されるに伴って、客室乗務員の大量採用が始まっていた時期に入社されました。
当時は国のルールによりANAは国際線の定期運航が許されていませんでした。
1986年にANAが国際線に決まった時、河本氏は自ら大阪からの異動を希望して初期国際線のメンバーを務めます。それはANA社内で客室乗務員は異動しないというそれまでのルールがかわった瞬間でもありました。
「その当時、女性は結婚・出産を機に退職するのが大勢であり、また女性が自分の意志をはっきり主張するのはためらわれた時代です。でも、私はチャレンジしたいことがあるのなら、自分でアピールしたり、手を挙げなくてはいけないということを学びました」
当初は赤字続きだったANA国際線が世界最大の航空連合スターアライアンスに加盟し、2004年を境に黒字に転換。日本の航空会社ならではの「おもてなし」が世界各国の乗客から高く評価されました。その当時、現場の第一線で活躍された河本氏は「誠実に、手を抜くことなくお客様サービスに努めれば、世界のどこでも通用する…。そんな自信が私たちに生まれてきました」と当時を述懐しました。

2)「ANAのダイバーシティ&インクルージョン」

組織内に多様な人材がいることをあらわす「ダイバーシティ」。近年、多くの企業が、経営戦略としてこのダイバーシティ推進に取り組んでいます。河本氏はそれに加えて多様な人々が対等に関わり合いながら一体となって働くことができる「インクルージョン」こそが重要であると言います。
ANA時代の河本氏は、女性の力をより積極的に活かすために、上司の意識改革を図る「イクボス・セミナー」や女性管理職のネットワーク「ANA WINDS」などさまざまな制度や仕組みづくりに尽力。育児と仕事の両立支援の一環として社員の子どもを職場に招待し、親の働く職場を見学してもらう「きっずでい」も実施したそうです。
こうした一連の取り組みなどによって、ANAは外部評価でもダイバーシティ推進に積極的な企業として高く評価されています。
「単なるカタチや制度で満足するのではなく、ダイバーシティ&インクルージョンは誰もが夢を求め挑戦する企業には必要不可欠」と河本氏は語り、ANAの取り組みが全社的なチームスピリットの醸成に好影響を与えていることを紹介しました。

3)「ANA総合研究所の取り組み」

昨年4月より河本氏が副社長を務めているANA総合研究所は、地方自治体などと連携した「地域活性化」、航空関連の中長期課題等に取り組む「調査・研究」、観光業界や航空業界などに関わる「人材育成」などの事業を展開しています。
たとえばインバウンド対応として、海外の人々と接する機会の多い客室乗務員ならではの視点での「おもてなし講座」開催や地域情報のプロモーション、未来の航空産業や観光を支える人材育成のための大学等での講義など、ANAグループのナレッジ・ノウハウを活かした、ANA総合研究所による幅広い地域貢献事業が紹介されました。

最後に河本氏はANA創業と同じく終戦後まもなく(1947年)に最後の旧制大学として開学し、新しい教育の「夢」を追い求めた玉川大学へのシンパシーについて語っていただきました。そして学生たちに向けて「Comfortable Zone(居心地の良い場所)に安住せず、そこから抜け出す挑戦を楽しんでほしい」「学内外で幅広く交流の輪を広げながら、自分の考えを“発信する力”を身につけてほしい」とエールを送りました。
講演後、学生からは講演内容だけでなく、航空業界に関する質問も挙がり、河本氏は一つ一つ丁寧に答えてくださいました。観光学部の1年生にとって、今後の学生生活、そして未来への指針となる中身の濃い時間となりました。