大学院教育学研究科 IB教員養成の取り組み――「IB教師教育(MYP/DP)ⅠA」授業見学

2018.03.08

グローバル人材育成のため、2013年に文部科学省は、IB(国際バカロレア)認定校を200校に増加させることを目標に掲げました。2007年に一条校としていち早くK-12にIB教育プログラムを導入した本学は、文部科学省の試みを受け、2014年4月から玉川大学大学院教育学研究科教育学専攻修士課程に日本で初めての「IB研究コース」を開設し、IB教員の養成をしています。

昨年4月に着任した星野あゆみ教授が担当する「IB教師教育(MYP/DP)ⅠA」の最終日の授業では、IB教員資格を目指す大学院生をはじめ科目等履修生や大学生が、活発に意見を交換し合いながらグループワークに取り組んでいました。

「IB教師教育(MYP/DP)ⅠA」は、IB教育で必要不可欠な「国際的な視野」をどのように育成していくか、そしてカリキュラムの中でどのように取り入れていくかを考えていく授業です。IB教育の歴史や使命、学習者像などを紐解き、欧米や日本の学習理論などをプレゼンテーションとディスカッションを重ねる中で学んでいきます。終盤は学んだ成果を生かして、一人ずつファシリテーターとなり、設定したテーマで授業を展開します。「2030年に自分はどうなっているか」や「保護者会でのIB体験活動」など、グループ学修を通して、IB教育を実践していきます。

最終日のこの日は、鴨長明の『方丈記』の“無常観”を外国人に英語でどのように説明するか、というとても興味深いテーマ。グループごとに思いついた言葉やフレーズを大きな模造紙に書き込み、さらにイラストやチャートなどを描きながら、考えをまとめていきます。そして役割分担を決めてプレゼンテーション。他のグループからの疑問や質問に一つひとつ答えながら、「探究する人」「考える人」「コミュニケーションできる人」「心を開く人」といったIB教育の学習者像を彷彿とさせる学びの時間が流れました。

そこには考えることと学ぶことを楽しむ学生の姿があり、20代から70代という幅広い年齢層の学生が一つの教室でお互いに刺激を与え合っている姿がとても印象的でした。

授業を終えた5人の学生に学ぶ動機や授業の印象について話を聞きました。

  • 白井 由紀子さん 教育学研究科教育学専攻

    母の介護で大変だった時、図書館で偶然出会った小原國芳先生の「全人教育」の本。初めて玉川の教育に触れ、「ここで学び直したい!」と思い、大学院への入学を考えました。というのも私は塾経営、英会話講師を経て、小学校の英語授業のサポートをするようになっていたからです。ところが70歳の私では教員採用の道は断たれています。そこで大学のスタッフと相談し、これまでの経歴を生かした学びとなるIB教員資格の取得を一つの目標として入学しました。星野先生をはじめ、先生方の熱意あふれるご指導と多様な世代の仲間と切磋琢磨しながら、充実した学生生活を過ごしています。来年度は修士論文にチャレンジします。

  • 伊勢田 明弘さん 科目等履修生

    東京都の公立高校で化学を教えています。学校からIB研修プログラムを勧められ、「ぜひチャレンジしてみたい」と玉川大学大学院の科目等履修生として学ぶことにしました。それまでIBプログラムに対しては漠然としたイメージしかありませんでしたが、週1回授業を受けることで、これまでの日本の学校教育が行ってきた「知識ベース」の教育だけではない、「概念理解」の教育の本質を理解することができたと思います。それはまさに、現在、文部科学省の学習指導要領が打ち出している日本の教育が目指す方向性と非常に近いのではないかと思っています。

  • 吉田 ゆりさん 科目等履修生

    小6と中3の子供を持つ母親です。主人の仕事の関係で4年間米国生活を送りました。再度の海外赴任の可能性があるため、子供たちは海外の大学への進学も視野に入れています。そんな折、同じく海外赴任経験のある母親の集まりでIB校で学ぶお子さんのことを知りました。そのお子さんの年齢以上といえるプレゼン能力の高さに感動し、「IB教育の勉強をしてみよう」と決心。実際に学んでみて、IB教育がこれからの社会に必要な真の教育であることを痛感しました。それも子供だけでなく、ビジネスを含めた大人のリカレント教育として有効だということを学んでみて実感しました。

  • 山崎 裕康さん 科目等履修生

    私は個別指導塾で運営を担当しています。文部科学省がIB教育の推進・普及に力を入れて、2020年までに国際バカロレア認定校等を200校以上に増やすという動きを教育産業に携わる者として注視していました。そして従来の学校教育とは理念から異なるIB教育を知るためには自分が学ぶ必要があると思い、玉川の科目等履修生として学び始めました。仕事をしながらの勉学は苦労もありましたが、これからの塾運営へのヒントも多く、収穫が多い1年間でした。次代を担う子供たちにIB教育は必要不可欠…。その思いを強くした学びでした。

  • 西谷 彩さん 教育学部教育学科4年

    大学2年の秋学期に国際教育センターの留学プログラムでアメリカのオレゴン大学へ半年間留学し、現地で触れたIB教育にとても興味を持ちました。帰国後もIB教育への関心はますます高まり、4年生で思い切って大学院のIB研究コースの授業に参加することにしました。ネット情報だけではわからなかった「探究」する授業スタイルを実践することができ、自分の中でIB教育の意義がより明確になりました。4月から私立小学校の英語教員になることが決まっています。この学びを実際の授業に取り入れていけたらと思っています。そして、教員としての経験を積んだのち、できればもう一度IB教育を学び直したいです。

    • 大学生が大学院の授業を受けるにあたっては必要条件があります。

授業を担当し、国際バカロレア機構アジア太平洋地域日本担当地域開発マネジャーも務める星野あゆみ教授は、「教師が授業を設計する時、自分の受けた教育を参考にする傾向があると思います。その点、知識偏重型の教育を受けて来た日本人教師には、じっくりとIB教育の試行と実践と振り返りを繰り返す時間と努力が必要であることも多いと感じてきました。玉川ではそのような時間と機会を提供できればと思っています」とこの授業を振り返ります。

文部科学省が掲げる目標を受け、IB教員を養成するための教育現場が急務でもあります。
「現職教員の研修制度が今以上に整い、一人でも多くの方に”生涯学習者”として、玉川の通信教育課程や免許更新講習と同様、IB研究コースでも新たな学びの場として活かしていただければと願っています」