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玉川大学 読売新聞社立川支局 共催 連続市民講座 第6回「赤ちゃん期のコミュニケーション─乳幼児期のことば・心・脳・身体─」

2018.09.27

2018年4月より玉川大学では、読売新聞社立川支局と共催の連続市民講座「進む大学研究 最先端の現場から」がスタートしました。この公開講座は玉川大学8学部・研究所の先生方が講師を務め、12月まで全11回、それぞれの分野での“最先端”についてわかりやすく講義します。9月15日開催の第6回のテーマは「赤ちゃん期のコミュニケーション─乳幼児期のことば・心・脳・身体─」。講師を務めるリベラルアーツ学部の梶川祥世教授が、乳幼児期のコミュニケーション能力発達過程における大人の果たすべき役割などについて講義しました。

自律的に学ぶ子供を育てるために必要なこと

玉川大学脳科学研究所には、脳科学や発達心理学などの研究者が乳幼児のことばを中心とした発達の仕組みについて多彩な研究を進める「赤ちゃんラボ」が設置されています。リベラルアーツ学部の梶川祥世教授もその一員として、赤ちゃんのことばの発達、言語と音楽の関係、母子間音声相互作用などに関する研究に取り組んでいます。今回はそうした梶川教授の最新の研究成果を知る講座内容になりました。
国立青少年教育振興機構の近年の小中高生に対する調査で、今の自分を好きと思えない子供が半数近くいるという回答を受け、梶川教授はまず児童・生徒の自己肯定感と自律性について話を始めました。自己肯定感を持つ子供は、学習に際して「勉強が楽しい」「知識を身につけたい」といった“内的調整”を図ることができます。しかし「ご褒美が欲しい」「褒められたい」といった“外的調整”によって学ぶ子供は自己肯定感を持ちにくいという傾向があるようです。このことは第4回の連続市民講座「人間のやる気を脳科学で解明」(脳科学研究所・松元健二教授)の講義内容と重なる部分がありました。

梶川教授は親子の会話が多いと子供の自律的な考え方が発達すると説明します。会話を通して親から認められていると感じることが子供の自律性を育み、子供は好奇心を原動力として自ら行動し、成長していきます。その際、「親は自由に課題を選択させ、少し難しい課題に挑戦する気持ちを促す」ことが大切で、子供の生活(宿題、友人関係、生活習慣など)に関心を払いながらも、過度に子供に干渉せず、新しい課題へ向かう意欲と自信を身につけさせていくことを促し、見守ることが重要です。
幼児の場合は「3歳までは親(または保育者)の話しかけの量と質が、その後の語彙発達と学ぶ力を左右」します。その際、親は「肯定的な語りかけ」「指示するのではなく物事を描写するように話しかける」、そして「子供に積極的に関わり、発語を促し、待ってあげる」ことが大切だと梶川教授は解説します。たとえば子供に対して「お花を取ってはダメ」ではなく「きれいなお花が咲いているね」と肯定的・描写的な言葉で話すことが、子供の自主性・個性を尊重するコミュニケーションで重要なポイントになるようです。

「親と一緒に関わること」を通して発達する言語能力と社会性

赤ちゃんの語彙発達は10カ月ぐらいまでは“意味のある言葉”になっていない前言語期で、1歳半頃に「語彙爆発」という時期を迎え、二語以上の文で話せるようになります。この期間の脳は環境に合わせて急激に変化し、「シナプス」という神経細胞に情報を伝達するコンセントのようなものが作られます。シナプスは必要以上に作られますが、使われないシナプスはやがて取り除かれます。たとえば日本人の場合、日本語では「r」や「l」の音の区別がないため、聞き分けるシナプスは早い時期に取り除かれますが、英語やフランス語など、この音を区別する言語を使っている人々のシナプスは大人になるまでずっと残ります。

このように語彙などの言語発達は環境に大きく左右されます。そして重要な環境の一つが周囲の大人、すなわち親や保育者などの存在です。梶川教授は、さまざまな実験によって、乳幼児は親など大人の言葉を聞くことだけではなく、大人が一緒に関わることが言語発達と社会性獲得において重要であることを指摘。これは音楽を聴いたり、身体行動(絵本を読む、おもちゃで遊ぶなど)においても共通しているそうです。
また、俳優のショーン・コネリーが朗読する『ピーターと狼』の一節の朗読を流し、抑揚や強弱、音長、リズムといった「発話プロソディ(韻律)」が、親子コミュニケーションに大きな役割を果たしていることについても解説しました。日本語は聴覚情報としてのプロソディの役割が幼児期までの語彙体系の形成に大きな影響を与えているそうです。

このように赤ちゃんは様々な感覚を使って周りの世界を吸収し生きる術を学んでいきます。そして周囲の人たちの関わり方がその可能性を広げ、子供の自己肯定感や自律性につながっていきます。

この日の会場には、小さなお子さんを連れた受講者も多く見られました。出席された方々にとって、これからの子供たちへの語りかけについて大きな指針となったのではないでしょうか。今後の研究にさらなる期待がよせられます。

台風12号の首都圏への接近により中止となった7月28日開催の第5回「光技術を使ったおいしい野菜作り─LED植物工場の技術開発─」は、多くの受講者からの要望により、10月6日午前10時から開講されます。

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