「ChangeはChallengeから生まれる」。パラリンピアンの上原大祐さんによるK-12父母教養講座が開催されました。

2018.12.06

K-12父母会では、学内外の先生や社会の第一線で活躍されている方をお迎えして、子育てや教育について学んでいくK-12父母教養講座を定期的に開催しています。10月15日(月)には、パラリンピックのパラアイスホッケー競技で銀メダルを獲得し、現在は社会起業家としても活躍されている上原大祐さんを講師にお招きし、「2020年はゴールではなく、スタートだ! ~障害攻略は世の中攻略~」というテーマでご講演いただきました。

生まれつき下肢に障がいがあった上原さん。子供の頃は音楽に興味を持っていたそうですが、地元長野で開催されたパラリンピックでパラアイスホッケーに興味を持ち、大学在学中から専用の橇(そり)に乗って行うパラアイスホッケーに挑戦。2006年のトリノ、2010年のバンクーバー、2018年の平昌と、冬季パラリンピックに3回出場。特にバンクーバーでは銀メダル獲得の原動力となりました。現在はNEC東京オリンピック・パラリンピック推進本部に所属すると同時に、NPO法人D-SHiPS32船長(理事長)、一般社団法人障害攻略課課長(理事長)など、幅広く活躍。また10月からNHK教育テレビジョンで始まった、多様性への理解を深める番組「u & i」の監修も務められるなど、その活躍の舞台はますます広がっています。
そうした活動と同様に、この日のお話の内容も多岐にわたるものでした。障がいがあっても友だちと一緒に遊んだ子供時代。親御さんであれば不安もあったはずですが、お母さんが勇気を出して「いってらっしゃい」と送り出してくれたことで自分自身も成長できたと、上原さんは当時を振り返ります。こうしたエピソードにメモを取る保護者の方も見られました。

そうした経験から、さまざまなことに積極的に取り組む上原さん。一般社団法人障害攻略課では、障がいがある立場に立って「自分がほしいもの」を形にしていきます。たとえば着物を着たいという想いから、石川県中能登町と着物を開発。上下がセパレートになって着脱が容易な着物「KIMONALL(キモノール)」が誕生しました。この商品は障がい者の方が着やすいだけでなく、着物をお土産に買いたいけれど、自分で着付けができないという海外からの観光客の需要にも応えることができます。また日々着物で仕事をする日本料理店や日本旅館で働く人たちも着替えの時間が短縮でき、働き改革にもなります。さらにこうして新たなニーズが生まれると、着物業界にも貢献できます。「誰にでも合うものは、既存の商品の焼き直しでしかないんですね。でも私がほしいと思うものは、世の中にないことが多いんです。そしてそれを形にすると新たな価値が生まれ、社会にイノベーションを起こすことができます」と上原さん。実はライターもカーディガンも、もともとは障がい者の方のために作られ、社会に広まっていったのだそうです。
さらに上原さんは続けます。「パラスポーツも、『障がい者のスポーツ』と限定されがちですが、決してそんなことはありません。私はよくパラスポーツのことをオフスポーツと言うのですが、ブラインドサッカーは目をオフに、車椅子バスケットボールは足をオフにして競技をしているんですね。それらは目や足が不自由でない人でも参加できるんです」。多くの人がパラスポーツに興味を持ち、さらにプレーもしてくれたなら、今よりも練習環境はきっと良くなるはずと、上原さんは語ります。

この日の講演では、こうしたパラスポーツに関することだけでなく、子育てに関わるような話もありました。「私はよく、『ChangeはChallengeからしか生まれない』と言っています。親御さんは、自分の子供に失敗をさせたくないと考えるものです。けれどもそれは、挑戦する機会を奪うことにもつながります。失敗したということは、挑戦したということなんです。だからお子さんが何か失敗をした時は、ぜひ『いい挑戦をしたね』と声をかけてあげてください」。

この日の講演は2時間近くにもおよびましたが、上原さんの軽妙な語り口と明るい雰囲気で、2時間があっという間に感じられました。そして子育てのみならず、前向きな生き方についてのヒントが数多くありました。講演のために、バンクーバーで獲得した銀メダルも持ってきてくださった上原さん。これから2020年に向けて、ますます忙しくなっていくに違いありません。けれども上原さん自身はこの日の講演のテーマのように、2020年をゴールではなくスタートとし、さらにその先を見据えて活動しています。そんな上原さんの想いに触れることができ、保護者の皆さんにとっても有意義な時間となりました。