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健康教育研究センター主催「スポーツと教育2018」ワークショップ「ブラインドサッカーから学ぶ障がい者スポーツ」を開催しました

2019.02.05

玉川大学教育学部健康教育研究センターでは、「スポーツと教育」をテーマとしたシンポジウムを実施してきました。2017年度はパラリンピック競技であるゴールボールのワークショップを開催。2018年度もワークショップ形式で「ブラインドサッカーから学ぶ障がい者スポーツ」を開催しました。

パラリンピック種目のブラインドサッカーは目が見える人と見えない人の連携によってプレーが進行していくのが大きな特色といえるでしょう。
コートとボールはフットサルと同じサイズで、ボールは転がると音が出る専用のものを使用します。アイマスクを着用したフィールドプレーヤー(4人)が、ボールの音と選手間の声のコミュニケーションでプレーを行い、ゴールキーパーだけ目が見える人(晴眼者または弱視者)が担当します。5人の選手と指示を出す監督に加え、ゴール裏には選手にゴールの位置(距離や角度)を教える役割のスタッフ「ガイド(またはコーラー)」がおり、「8(m)、60(度)、シュート!」などと声でシュートタイミングを伝えます。また、ディフェンダーは相手のボールを取りに行く場合に「ボイ!(スペイン語で「行く」)」と言う掛け声で自分の位置を知らせないと反則となる独自のルールがあります。

今回指導していただいたのは元ブラインドサッカー日本代表選手で、国内チームの松戸・乃木坂ユナイテッドに所属する葭原(よしはら)滋男氏とNPO法人日本ブラインドサッカー協会職員の髙山ゆずり氏です。まず記念体育館内の教室で視覚障がいとブラインドサッカーに関するレクチャーを受けました。

葭原滋男氏は56歳。10代で網膜色素変性症と診断され、病気が進行した現在は白杖なしには外出できません。しかし走り高跳び、自転車競技、スキー、サーフィンなど多くの種目でパラリンピックに出場しメダルを獲得しているスーパーアスリートであり、走り高跳びに関しては世界記録保持者でもあります。
会場に集まった教育学部保健体育専攻の学生をはじめとする来場者は、葭原氏と髙山氏のガイドで、まず目をつぶって光を感じたり、掌で目を覆ったり、指で輪を作って視野を狭めたりといったさまざまな視覚障がいの体験をしました。また「この中でサッカーをやっている人は?」などの質問に、葭原氏は挙手の代わりに会場の拍手の音で人数を把握。視覚障がい者の聴覚の鋭さに気付かされました。世界記録をマークした走り高跳びの練習では、踏み切り位置もバーも見えない中、つねに同じ歩幅で助走し、跳ぶタイミングを身体に叩き込むという驚異的な練習方法について説明。葭原氏は、ブラインドサッカーを知る前に「目が見えない」とはどういうことなのかを自身の体験を通して、集まった学生たちに教えてくれました。

続いて髙山ゆずり氏がビデオで国際大会の試合を流しながらブラインドサッカーについて具体的に紹介しました。目が見えないフィールドプレーヤー同士がパスをつなぎ、ゴールにボールを叩き込むハイレベルなプレーに会場からは何度も溜息が洩れます。葭原氏によると「音が3割、残り7割は頭の中のイメージ」に従ってプレーしているそうです。
高山氏は「ブラインドサッカーは目が見える人と見えない人が協力して勝利を目指すスポーツ。目が見える皆さんも十分楽しめる競技です。そして目が見える人は競技を通して街中で出会う視覚障がい者へのサポートも考えられるようになります」と競技の魅力と社会的な意義を解説します。葭原氏も「ブラインドサッカーを通じて見える人と見えない人が当たり前に混ざり合う“共生社会”を実現したい」と会場の人々に語りかけました。

レクチャーの後は、全員で体育館2階の競技場へ移動。仮設のゴールポストと専用球を使ったブラインドサッカー体験会が始まりました。
初めに葭原氏がパス交換、ドリブル、シュートの模範演技を披露。目が見えないことが信じられない正確かつスピーディーなプレーの連続に大きな歓声がわき起こります。
学生たちにアイマスクが配られ、アイマスクをして見えない人と見える人が連携してストレッチ・体操を行い、見えない人の立場を考慮したコミュニケーションの基礎トレーニングを行いました。
次に見えない状況での簡単な実技体験がスタート。「ボールを止めて蹴る」「数メートルのドリブル」「カラーコーンにボールを当てる」……目が見えていれば簡単にできることも、アイマスクをしていると誰かの助けなしにはまったく不可能であることを学生たちは痛感。また助ける側も目が見えない人へのサポートの難しさに気づきます。それでも前向きに取り組む学生たちへ、葭原氏から「玉川の学生さんは見える人と見えない人の協力が自然にできていて素晴らしい」と賞賛の言葉が送られました。

そして最後にゲーム形式のブラインドサッカー体験で、学生たちが葭原氏に挑みました。メンバーを代えて行った2戦は「0対0」と「0対1」で葭原氏の勝利。日本代表だった葭原氏のプレーに接した玉川大学サッカー部のゴールキーパーは「通常は相手選手と目を合わせてシュートをセーブするのですが、葭原選手とは目が合わないのでタイミングがわからず、シュートも鋭く怖かったです。将来は体育科教員を目指しているので今回のブラインドサッカーの経験を子供たちへの教育に生かしてみたい」と話してくれました。

また、初めてブラインドサッカーを観たという女子学生は「アルバイト先でも視覚障がい者と接することがあり、今までどう接するべきなのか不安だったのですが、ブラインドサッカー体験を通してどのようにサポートしたらよいか、大きなヒントをいただきました。アイマスクをして見えなくなったときの怖さを忘れないようにしたいです」と話しました。

葭原氏も最後に「アイマスクをしたときの怖さを体験した皆さんには、ぜひ街中の視覚障がい者に声を掛けてあげてほしい。信号や横断歩道などで戸惑っている人に『どう手をさしのべてあげようか』と考えることはとても素敵なことだと思いませんか?」と学生へ語りかけました。

なお、2月9日・10日にはブラインドサッカーのクラブチーム選手権「KPMGカップ2019」が神奈川県川崎市の富士通スタジアム川崎で開催。また3月19日から24日まで、東京都品川区の区立天王洲公園で、日本やアルゼンチンなど世界ランク20位以上の8カ国が対戦する国際大会「ブラインドサッカーワールドグランプリ」が開催される予定です。生で触れてこそわかるブラインドサッカーの魅力と迫力をこの機会にぜひご堪能ください。

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