PLコース12年生、生体認証を学ぶ

2014.07.31

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている玉川学園では、直接、先端科学に触れるためのさまざまなプログラムを実施しています。その一つが、外部講師による講演会です。7月10日には、三菱電機株式会社情報技術総合研究所の監視メディアシステム技術部に所属する松下雅仁氏による講演が行われました。松下氏は大学院修了後に三菱電機株式会社産業システム研究所に入社。現在は情報技術総合研究所にて生体認証について研究を進めています。まさにセキュリティ技術の研究開発の分野で、世界をリードしているキーパーソン。「自分を見分ける生体認証のしくみ」と題された今回の講演に、「SSH情報科学」の授業を受けているPLコース12年生が受講しました。

生体認証とは、事前に登録した生体情報をもとに、認証時に取得した情報と比較することで認証を行うシステムのこと。この生体情報には指紋や静脈、網膜、顔などさまざまな種類があります。パスワードや印鑑のように盗まれることもなく、本人であることを証明する有効な方法といわれています。この生体認証で広く知られているのは、指紋による照合ではないでしょうか。松下氏によると指紋の紋様は大きく分けて渦状紋、蹄状紋、弓状紋があり、その特徴的な部分を照合する手法は、既に100年近く前から確立されていたそうです。現在、指紋の画像照合は世界中の警察機関が採用していますが、その認証システム機器の7割が日本製とのこと。あのFBIでも使われているそうです。講演では、生徒が実際に自分の状紋のタイプをレンズで調べるといったことも体験しました。虫眼鏡を片手に、自分の指紋に目を凝らす生徒たち。指ごとに状紋のタイプは異なりますが、生徒同士でさえそのタイプがマッチする人はなかなかいません。指紋の紋様はマニューシャと呼ばれる端点と分岐点で構成されていますが、その位置が完全に一致する確率は640億分の1。まさに、指紋は個人を判別するために有効な生体認証なのです。

そして松下氏は、現在開発を行っている最新技術についても説明してくださいました。現在の指紋認証に関しては、画像照合から一歩進み、センサーを使って直接的に指紋情報を取得する方法が、さまざまな分野で採用されています。これは光学式指紋センサと呼ばれ、プリズムを使って斜めにライトで照らし、反対側から読み取るというもの。けれども指が汗をかいていたり、紋様がかすれていたりすると読み取ることがむずかしいという欠点があったのです。その解決法はなかなか見つかりませんでしたが、あるとき指の爪側から光を照射してみると、指紋パターンに応じた透過率分布を読み取れることを発見。より精度の高い認証システムが完成したのです。

このように生体認証は本人であることを証明する非常に有効な手段であり、偽造や盗難に遭うことも少ない画期的なシステムですが、認証システムの設置にコストがかかるなど課題も少なくありません。また、その人自体が持つ情報で認証を行うため、万が一その情報が盗まれてしまうと、パスワードのように簡単に変更することもできません。そうした課題の解決にも今後取り組んでいきたいそうです。講演を聞いた生徒から、スマートホンの指紋認証システムについての質問などがあり、それに対してもわかりやすく答えてくださいました。

私たちの生活を変えていき、より良いものにするのは、松下氏が研究しているようなさまざまな科学技術です。今回の講演で最先端の科学に触れた生徒たち。「ぜひ科学に興味を持ってもらって、私たちの会社で活躍してもらいたい」という松下氏の言葉に応える生徒が、今回の講演会から出てくるのかもしれません。