脳科学研究所で「脳科学トレーニングコース」が実施されました

2015.06.23

2015年6月11日(木)~13日(土)、玉川大学脳科学研究所にて「脳科学トレーニングコース」が実施されました。これは、脳科学を志す学部生、大学院生、若手研究員を対象に、研究手法の基礎と応用が学べる実習を行うもの。2011年に開始し、今回で5回目を迎えます。毎年全国から100名を超える応募があり、選考で約30名が実習に参加しています。

今年度の各コース内容は以下の通りです。
 ・ラットのマルチニューロン記録と解析法
 ・霊長類動物の行動・神経計測・解析技術
 ・ヒトのfMRI基礎実習
 ・赤ちゃんの脳波計測と解析の基礎
 ・逆転写定量PCR法による遺伝子発現解析
 ・社会科学実験入門
今回は2つのコースの実習内容について紹介します。

実習レポート「霊長類動物の行動・神経計測・解析技術」

このコースでは、霊長類の脳の神経活動の計測法や、データの解析技術を学びます。1・2日目は、どのような機材を使用して脳の神経活動を計測するかを講義で学び、実際に研究員が行う実験のデモンストレーションを見学します。
3日目は、得られたデータをコンピュータで解析し、脳の神経活動と行動の対応関係を研究します。特徴的なのは、脳の活動を人工知能でシミュレーションし、脳の中で何が起きているのかを数値として捉える点。これにより、記憶や意思決定の際に脳がどのように情報処理を行っているのかを定量的に調べます。

講師を担当した鮫島和行准教授は「同様の研究に取り組んでいる研究所はいくつかあると思いますが、今回の脳科学トレーニングコースのように短期間でその目的や手法を学べる場所は、他にはないと思います。この非常に先端的な知識・技術を全国にいる研究者の卵たちに伝え、脳科学全体の活性化に貢献できればと思います」と話していました。

実習レポート「ヒトのfMRI基礎実習」

このコースでは、人の脳活動をfMRIという手法を使って調べます。1日目は、受講者がお互いに被験者となってMRIに入り、自分の脳の活動を調べます。被験者・実験者双方の体験を通して、実験における注意点をしっかり理解します。
2・3日目は、MRIの原理や脳の基本的な構造についての講義を受けた後、MRIで得られた画像を解析します。まずは自分の脳の活動を解析し、続いて、受講者全員のデータを合わせたものを解析します。解析については、チューターが一つひとつ丁寧に解説しながら、その方法を教えます。

講師を担当した松元健二教授は「今回は、ストップウォッチを5秒で止める課題に取り組んだ際の、やる気に関する脳の活動を調べてもらいました。この実験は反応性が良く、比較的結果が得られやすいようデザインされています。実際に結果が出る喜び、本物の実験における醍醐味を味わってもらい、ぜひ、その先の研究への意欲につなげていってほしいと思います」と話していました。

将来の脳科学を担える人材育成をめざして

脳科学トレーニングコースについて、脳科学研究所所長の木村實教授は次のように語ります。
「脳科学研究所では、レベルの高い研究成果を世界に発信するべく研究活動の充実に努めてきました。一方で、大学に設置された研究所ということで、将来脳科学に携わる優れた研究者を育てることにも注力し、5年前から実施しています。

現在、脳科学の成果は論文で読めますが、データの取り方、解析のしかた、苦労した点まではなかなかわかりません。その点、脳科学トレーニングコースで実際に体験してみることは、とても貴重な機会になると思います。また、脳科学は非常に広範な領域にまたがる研究分野ですから、多領域の研究者と意見を交わせることも、非常に意義あることです。グループ討論の場として「Jam Session」の時間も設けており、新しい仲間との交流を深めることもできます。
新しい技術の導入により、現在、脳科学の研究は変わりつつあります。今後の脳科学トレーニングコースではそのような最新の成果も取り入れ、時流にあった内容を提供していく予定です。また、海外からの参加を含めて脳科学者の育成に貢献していきたいと考えています」。

他4コース:実習の様子

●ラットのマルチニューロン記録と解析法
行動課題を遂行するラットを用いて、大脳の多数の神経細胞の発火活動の同時記録法と解析法(スパイク・ソーティング)を学ぶ。

●赤ちゃんの脳波計測と解析の基礎
新生児・乳幼児の脳波計測に必要な基礎知識と電極装着手技を学ぶ。また、数値解析ソフトウェアを用いた脳波の時系列解析も学ぶ。

●逆転写定量PCR法による遺伝子発現解析
TaqManプローブを用いた逆転写定量PCR法で、ミツバチの社会行動に関与する遺伝子の発現解析を行う。

●社会科学実験入門
経済ゲームを用いた実験計画のたて方、実験プログラム(VB)の作り方、実験の実施方法を学ぶ。