玉川大学英語教育研究会(ELTama)主催による「第7回 ELTama英語教育セミナー」を開催しました

2015.09.10

英語教育に携わる玉川大学・大学院の卒業生や現役学生・大学院生が一堂に会する「ELTama英語教育セミナー」。毎年8月に開催される同セミナーは今年で7回目を迎え、世界的な英語教育研究者であるペンシルベニア大学教育大学院准教授・TESOLプログラムディレクターのバトラー後藤裕子氏をお迎えして、大勢の参加者でおおいに盛り上がりました。

教員志望の現役学生からベテラン教員まで一堂に会して英語教育を考える

社会全体でグローバル化が進み、学校教育における「英語教育」のあり方に注目が集まっています。従来の暗記が重視される教育から、「聞くこと、話すこと、読むこと、書くこと」の4技能を高める「使える英語力」を養う教育へとシフトが進んでいますが、それに伴う課題が山積し解決が急務となっています。
一方で玉川大学・玉川大学大学院では、多くの英語教員を輩出し学校教育の現場で活躍しています。

しかし、英語教育の課題解決に必要な情報交換などの交流の拠点がないことから、玉川大学・玉川大学大学院出身者で英語教育に従事している人、英語教員を志望する学生および大学院生、英語教員養成に関わる大学教員の三者が参加する「玉川大学英語教育研究会(ELTama)」を2010年に発足させました。毎年夏には「ELTama英語教育セミナー」を開催し、大学教員、現職の英語教員、現役の学生・大学院生が参加して、現場でのさまざまな取り組みを事例発表し検討するほか、情報交換などを活発に行っています。7回目となる今年は、8月17日に「大学教育棟 2014」で開催しました。

このセミナーの開催について、玉川大学文学部の鈴木彩子准教授に話を聞きました。

「セミナーの前半は例年どおり3つの話題提供で、玉川大学卒業生であり教壇に立つ現職英語教員による事例発表で、テーマはその時々のトピックを取りあげています。後半は、他大学の英語教員をお招きし専門的なお話をしていただいていますが、今回は世界的な英語教育研究者でペンシルベニア大学教育大学院准教授・TESOLプログラムディレクターのバトラー後藤裕子氏による講演です。以前より演者としての希望が多かったこともあり、念願かなっての来校です。最後にフォローアップセッションで、参加者を3つのグループに分けて、各参加者が実践している授業や課題についてざっくばらんに話せる機会になっています。現役学生にとってはベテランの先生から長く培われてきた英語教育に対する考え方を聞くことができます。一方で、ベテランの先生にとっては若い先生から新しい方法を聞く刺激的なチャンスでもあるのです」。

世界的な英語教育研究者であるバトラー後藤裕子氏による講演

セミナーは主催者の小田眞幸玉川大学文学部教授・玉川大学ELFセンター長の挨拶で始まり、続いて3つの話題提供です。今年は、横浜市立奈良の丘小学校・土屋彩野教諭の「小学校英語活動に取り組んでみて」、町田市立第二中学校・渡辺尚美教諭の「公立中学校での英語実践」、玉川学園中学年・酒井健司教諭の「玉川学園K-16プロジェクトについて」。それぞれの話題に基づいた事例発表後に、意見交換や情報交換が行われました。

後半は、バトラー後藤裕子氏による講演です。後藤氏の研究は近年アジア各地における小学校英語教育の実態調査の結果をもとに、今後の日本の英語教育のあり方について貴重な示唆を与えています。テーマは「これからの英語教育と教員養成を考える-東アジアの試みから見えてくるもの-」で、後藤氏は「小学校での英語教育が本格的にスタートすることを受け、小学校英語について考える材料を提示したい」と語りかけ講演がスタートしました。講演は5つの柱(「1.小学校英語の目的とカリキュラム」「2.指導者の養成」「3.指導方法・評価」「4.小学校英語教育と社会」「5.今後の展望」)を掲げ、後藤氏が研究をすすめる東アジアの韓国・中国・香港など国や地域の事例を紹介し、英語教員はどのように考え、向き合うべきかを示唆するものでした。指導者に必要な英語力は小学校の英語のレベルは易しいからといって、指導者の英語力が低くてもよいという考え方は誤りであり、香港では小学校から高校まで英語教員に対する英語の試験の合格基準は同等であることを紹介。英語の指導者が学級担任か専科の教員なのかという議論がおこなわれている現状に対し、韓国では担任の教員にも徹底した英語研修を実施し、近年は教員の英語力が非常に向上していることを教えくださいました。

さらに、日本をはじめとする東アジアではとらわれがちな「ネイティブスピーカー」について、ノンネイティブスピーカーとの授業で生徒がどれだけインプットを得られたかを比較した研究結果では、特別差はないことが判明したことを紹介してくれました。また、児童・生徒の社会経済状況と学力とが比例して格差が拡大しているため、小学校・中学校・高校の各学校間の連携が必要であり、とくに小学校から中学の格差は大きくいかに橋渡しをするかが重要であると強調されました。最後に後藤氏は小学校の英語教育における今後の課題として4つ挙げました。

  1. 応用範囲の広い英語をたくさん聞かせて、ピッチ、リズム、イントネーションに関する語感を養う。
  2. 子どもたちが関心を持っている事柄や物に関する語彙を増やす。
  3. 英語本の読み聞かせ、読書を通じて、英語の物語や独特の言い回し、英語の音と文字との関係に親しみを持たせ、英語の文字世界への関心を高める。
  4. 各児童が自分に合った英語の学び方を教える。

講演後は、「バトラー後藤先生と語ろう!」として、後藤氏から参加者へ「英語教育で疑問に思っていることはありませんか」と投げかけたところ、小学校の教員から「東アジアでの英語を指導する教員の対象について」質問がありました。後藤氏は「中学校・高校の英語教員の免許と小学校の教員免許を持つ人が増えている。韓国でもそれが定着している」と答え、「単に、早期に英語教育を始めるよりも学習時間の量の方が重要であるという研究発表もあり、質の高い授業をたくさん提供できるかが重要である。また学力の格差が広がる小学校と中学校の橋渡しが重要で、そのためにも小学校教員が英語教員の免許を持っていることは有効である」とするなど、活発な質疑応答がありました。この後に「フォローアップセッション」で、参加者の熱のこもった意見交換が行われていました。

英語教育の明日を支える教員の心のよりどころとなるELTamaの活動

参加者に話を聞くと、現役の学生(3年生)は、「後藤氏の講演で、大学の授業では学べない他国の英語教育の現状を知ることができて、日本の英語教育の問題点が浮き彫りになりより一層意欲が湧いた」。教員歴30数年の男性高校教員は「小学校から英語塾に通うなど格差が生まれ、それが中学校の英語教育に大きな影響を与えているのが理解できた。中学校でさらに格差が広がった子供たちがどのように指導を受け、高校へ進学するのか、今後の大きな問題になるだろう。我々もそれに対して準備をしなければならないと痛感した」と話し、なかには他大学出身でもELTamaの活動に賛同し、教え子が玉川大学へ進学したという女性教員も参加しており、「教育現場では学力格差、外国籍の生徒の増加などさまざまな問題が起きている。英語で何ができるかを考えた時に、英語教員だけでは解決できない。学年全体、学校全体で考えていくことが必要だ。玉川大学の卒業生ではないが、セミナーに初めて参加する機会を得て、大勢の英語教員と課題や情報を共有できたのは有意義でした」と感激した面持ちで話していました。
多くの方に参加いただいた「第7回ELTama英語教育セミナー」は盛況のうちに終了することができました。