「教師教育リサーチセンター」による『玉川大学 教師教育フォーラム』を開催しました。

2015.12.02

開設4年目を迎えた「教師教育リサーチセンター」が主催して実施していた『玉川大学 教員養成フォーラム』。今年は本学の「教育学研究科教職大学院」と「IB研究コース」と共催し、名称を「教師教育フォーラム」と新たにして、10月25日(日)に本学大学教育棟 2014にて行いました。メインテーマに「質の高い教員養成に向けた大学の取り組みと教育実践」を掲げ、午前の部に分科会を、午後の部に教育界で活躍されている方々をお迎えしたシンポジウムなどを開き、多くの参加者とともに“教員養成”について考えた1日をご紹介します。

分科会で示された、教科をはじめとした「教育実践」から考える問題点と解決への道筋

10月25日(日)、今年4月に完成した本学大学教育棟 2014を会場とした『玉川大学 教師教育フォーラム』には、休日にも関わらず大勢の教育関係者ならびに教職をめざす学生が集いました。今年のメインテーマは、「質の高い教員養成に向けた大学の取り組みと教育実践」。午前中には、「教育実践」について12の分科会を開催しました。各会のテーマと担当教員は以下の通りです。また、分科会によっては教育現場の先生方をお招きしてご登壇いただき、事例発表を通した討議がなされました。

特別支援教育
小学校英語教育
数学
  1. 「特別支援教育」 教職大学院 安藤正紀教授
    神奈川県のインクルーシブ教育の推進――大和市の先進的システムと中央林間小学校の特別支援教室(サポート・ルーム)――
  2. 「小学校英語教育」 教職大学院 佐藤久美子教授
    子どもの意欲を高める英語教育とは
  3. 「国語教育」 教職大学院 松本修教授
    読みの交流を促す<問い>をめぐって
  4. 「道徳教育」 教職大学院 山口圭介教授
    教科化時代の道徳教育の在り方を巡って
  5. 「IB研究」 教育学部教育学科 江里口歡人教授
    IBにおけるラーニング・アウトカム
  6. 「幼児教育」 教育学部乳幼児発達学科 田澤里喜准教授
    養成校と幼保実践現場の連続した教員養成・育成
  7. 「英語」 文学部英語教育学科 工藤洋路准教授
    中高の英語教師に求められる能力をどう養成するか~能力向上を目指した具体的手法の提案~
  8. 「国語」 リベラルアーツ学部リベラルアーツ学科 中村聡教授
    漢字・漢文教育
  9. 「社会」 教育学部教育学科 寺本潔教授
    社会科こそアクティブ・ラーニング:伝え合う力が育つ社会科授業
  10. 「数学」 工学部マネジメントサイエンス学科 菅原昭博教授
    数学の教材開発
  11. 「美術」 芸術学部芸術教育学科 高橋愛准教授
    学生のチカラをひきだし、ひろげる芸術学部のとりくみ
  12. 「音楽」 芸術学部芸術教育学科 野本由紀夫教授
    音楽鑑賞授業のこれから~音楽教師に求められる総合力~

各分科会では、「教科書だけでは子供の興味は湧かない。子供の日常に落とし込んだ体験や経験が重要であり、そこが教師の腕の見せどころである」(小学校英語教育・佐藤久美子教授)、「教師こそ“確かな学力”を実践していかなければならない。教師は折にふれて、教師自身の数学的なものの見方や考え方を示したり、生徒に語ることが大切である。……教師の教材研究は、教科書の問題を解く中学生や高校生のレベルでなく、生徒が自然な拡張ができるように、その問題の本質をしっかり把握したものでなければならない」(数学・菅原昭博教授)など、教師の人間力に関わる言葉が強調されていました。活発な質疑応答もあり、参加者一人ひとりの問題解決の糸口になったに違いありません。

二つの講演から考える、教員養成改革の必要性

午後の部は、小原芳明学長の挨拶と講演から始まりました。講演のテーマは「PDSAと改(かい)」。現在各大学で取り組んでいる「教育の質保証」は、高校、中学、小学校に対しても問われる時代が近づいており、教育界全体での「改革」の必要性を訴えました。そのためには、「既得権や法令を変えることも視野に入れて取り組まなければなりません」と結びました。
続いて、文部科学省文部科学審議官の前川喜平氏による講演「教員養成改革の今後と展望」です。前半は「今なぜ教育再生か」について、子供をめぐる現状と課題についてさまざまなデータから世界各国と比較した学力レベルや学習意欲にふれ、日本の教育において「学習意欲」は一番重要な問題をはらんでいるとしました。

その根底には「入学試験に強いられた学び」があるとし、学習意欲を高める教育を推進するための政府の取り組みにふれました。後半は「今なぜ教員政策か」として、アクティブ・ラーニングの視点からの不断の授業改善が必要であり、それには教員を中心にした多様な専門性を持つスタッフと連携する「チーム学校」の実現と、新人教員の養成と現職教員を対象にしたスクールリーダーの養成、さらには学び続ける教員を支えるキャリアシステムの確立が必要であると述べました。

教育現場で活躍するシンポジスト4氏が訴える教員養成大学への期待

休憩をはさんで、シンポジウム「教員研修の充実と教員養成を担う大学の果たす役割」です。八尾坂修氏(九州大学大学院教授)をコーディネーターに、髙岡信也氏(独立行政法人教員研修センター理事長)、坂本修一氏(町田市教育委員会教育長)、濱野裕美氏(東京都公立小学校 校長会会長・昭島市立武蔵野小学校校長)、森山賢一(玉川大学教師教育リサーチセンター長・玉川大学教職大学院教授・教育学部教授)のシンポジストを迎え、それぞれお話をしていただきました。

髙岡信也氏

髙岡氏は茨城県つくば市にある教員研修センター理事、理事長を務めて5年目。お話はセンターの紹介と、センター自体の変革が必要でありその目安となる今年度内発表の中教審教員養成部会の答申についてふれ、研修の充実と大学の役割については「人を育てる人を育てる」のが大学であり、教職課程の先の教育を考えようと結びました。
坂本氏は行政出身の町田市教育委員会教育長として町田市で取り組んでいる教員研修の現状と課題、教員養成を担う大学に期待することなどについて実務的なお話をしていただきました。町田市は、東京都の中でも小学校と中学校数が八王子市に次いで2番目に多く、新規採用は増加傾向であると同時に、産休・育休代替教員や病気・休職対応の非常勤講師などの人材確保に苦慮しているとのことです。

坂本修一氏

町田市独自の研修制度の紹介では、毎年夏期休業期間中に玉川大学で大学教員による「授業力教育課題研修」を実施していることにもふれ、昨年は町田市内の小中学校の教員が35の講座に延べ2200人参加したとのことです。最後に、「子供と積極的に関わろうとする姿勢、素直に指導を受け止めて自分を変えていこうとする姿勢、子供でも大人でも当たり前のコミュニケーション能力をもつ人材に学校現場に来ていただきたい。また大学時代にそれらを高めてほしい。大学には学校現場に新しい風を吹き込むような教員の養成をお願いしたい」と結びました。
濱野氏は校長歴11年目で、たくさんの教員を指導してきた経験からのお話でした。

濱野裕美氏

社会が激変し学校に求められる課題が激増し、一方で経験の浅い教員が増えています。また教員の授業以外の負担が大きく、教員以外の専門職のスタッフとともにチーム学校で教育に取り組まなければなりません。「チーム学校」の一員になるための教員に必要なのは、「総合的な人間力」と「実践的指導力」であるとしています。「総合的人間力」の基盤となる資質は、1.明るさや前向きな姿勢、2.積極性、3.協調性であり、「教員は学校で育てるものだが、育つ資質のある人材かどうかは教員養成中に大学はしっかりと見極めていただきたい」と訴えました。「実践的指導力」では、基本中の基本は大学時代に身につけてほしいとして、1.正しい言葉遣い、2.声の大きさ・声の高さ、3.滑舌、4.表情・笑顔、5.(全体を見る)視線、6.大きな声で叱ることを挙げ、大学の授業でボイストレーニングなどの採用を提案しました。

森山賢一(玉川大学)

「学校が求める教員像を養成する大学側には理解していただきたい」とし、「学び続ける教員を支えるキャリアシステムの実現に尽力したいと思います」と結びました。
森山(玉川大学)は、1.大学で学んだ教育の理論と現場での実践をどのように捉えるか、2.教員研修をどう捉えるか――研究と研修の結合を考える、3.学び続ける教員を支えるために免許制度を含めた大学の今後の役割、4.現職の教員研修に関わる玉川大学の取り組みについての紹介といった4つのテーマで話しました。

八尾坂修氏

最後に参加者からシンポジスト各氏へ、「大学間の教員養成レベルに格差がある。適、不適を評価する第三者評価委員会を導入すべきではないか」「学校インターンシップの制度化を望む」などの質問が投げかけられ、各氏が実例を挙げて応える場面がありました。そして最後に、コーディネーターの八尾坂氏からシンポジスト各氏のお話に対して感想を述べられ、閉会となりました。
多くの現職教員、教育学部学生、学校関係者が一堂に会した1日は、質の高い教員養成に向けた大学の取り組みと教育実践を考え、一層の高みをめざすことを確認できた貴重な時間でした。