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11月28日、「第8回 玉川大学 国際バカロレア教育フォーラム」を開催しました。

2016.01.14

グローバル社会の進展に伴い、グローバル人材の育成が急務となっています。そのために文部科学省は国際バカロレア(IB)教育の導入・拡大を推進し、2018年までにIB認定校200校を目指しています。IBプログラムは、若者が常に知的好奇心と自発性をもって、生涯学習者となるために不可欠な学びの姿勢を身につけていけるように働きかける教育です。

「玉川大学学術研究所 K-16一貫教育研究センター」主催の「玉川大学 国際バカロレア教育フォーラム」は今年度で8回目を迎え、「IBとアクティブ・ラーニング-研究と実践-」をテーマに、講演会と分科会の2部構成で開催しました。当日は北海道から沖縄まで300名を超える参加者があり、日本の教育界におけるIBへの注目度の高まりを実感するものとなりました。

「IB教育の理念」を理解するための5つの講演

開会にあたり小原芳明玉川学園長・玉川大学長が登壇。「玉川学園が創立以来取り組む『全人教育』は、IBの理念とも共通するところが多く、8年前に本学へ導入するきっかけにもなりました。同時に国内の教育機関に先駆けて、玉川大学ではIB教育研究グループを発足させ、IB教員養成にも積極的に取り組んでいます。本フォーラム開催も日本におけるIB教育の普及と推進をみなさまとともに考えるもので、今年度のフォーラムも各学校でIB教育を推進するための参考になると考えています」と挨拶しました。

次に文部科学省大臣官房国際課の小林克嘉氏の講演「日本へのIB教育の導入の現状と展望」では、IB導入の背景に始まり、「我が国に長く続いた学力観を転換し、成熟した社会へと進むにはグローバル人材の育成は必須のこと」と話しました。今後の文部科学省の取り組みとして、11歳から16歳までを対象とするDP(ディプロマプログラム)※1において、一部の科目を英語だけでなく日本語でも実施可能にする日本語DPの普及や学習指導要領との対応関係、教員養成と確保、IB認定校の今後の見込みなどについての説明がありました。

次に登壇したのは、国際バカロレア機構アジア太平洋地域の星野あゆみ氏です。「学習のあり方を変えるIBワールドスクールへの道」をテーマに、IBの歴史や使命、IBの学習者像※2といったIBの教育理念について解説。途中、21世紀型スキルとは何かを参加者とともに考える時間を設け、参加者が周囲にいる初対面の人や知人と話し合いました。どのような場面でも自分の意見を伝えること、他人の意見を聞くことなど、人的交流が盛んになるグローバル時代のコミュニケーション力を考える力の重要性を実感しました。また、認定までのプロセスについての説明があり、候補校に対するサポートを約束しました。

3番目の講演者は、玉川大学学術研究所 K-16一貫教育研究センターのカメダ・クインシー講師。玉川大学大学院教育学研究科でIB教員養成を担当し、本フォーラムのまとめ役でもあります。「高大間における国際バカロレア教育の連続性」をテーマにした講演では、「世界的に広がりを見せるIB教育は、学び方を学ぶことを重視し、日常生活にも結びつけ、自律した生涯学習者であるためのスキルや概念などを学ぶものです。日本においては、これまでの教員による一方通行の『教え』から、『学び』への授業づくりを意識することが重要。教員も学習者であり、学びを育むファシリテーターです」と話しました。

休憩をはさみ登壇したのは、奈良教育大学教育学部教授の渋谷真樹氏。テーマは「日本の学校教育に活かす国際バカロレア」。IB教育を導入することは、既存の日本の教育を否定するものではなく、「日本の高校の親密性と平等性、共感力を活かしつつ、IB教育の目標や方法を明確にして、高校生を若き市民として信頼し、彼らを多様性の渦巻く世界へと解き放つための一つの教育」と話しました。

午前の部の最後に登壇したのは、広島インターナショナルスクールの美術教諭であり進路指導を担当する黒川礼子氏です。「IB使命の実践」をテーマに、DPでの美術についてCAS (Creativity/Action/Service:創造性・活動・奉仕)の視点から語りました。IBにおける美術とは、作品づくりの方法などのスキルを身につけること、そして自分の作品を他者に伝えることで、生徒自身が自主的に決め、教員はコーチであるとしました。IB教員の役割は豊かな知識をもとに、各生徒に合った学びを支え、育てることが大切であると結びました。

  • 1国際バカロレア機構(IBO)が提供する教育プログラムは、3歳~12歳を対象としたPYP(Primary Years Programme:初等教育プログラム) 、11歳~16歳を対象としたMYP (Middle Years Programme:中等教育プログラム)、16歳~19歳を対象としたDP (Diploma Programme:ディプロマ資格プログラム)で編成されている。
  • 2「IBの使命」を具現化したもので、IB認定校が価値を置く人間性を以下の10の学習者像として表している。
    探求する人/知識のある人/考える人/コミュニケーションができる人/信念をもつ人
    心を開く人/思いやりのある人/挑戦する人/バランスのとれた人/振り返りができる人

さまざまな教科を体験して考えるIBとアクティブ・ラーニング

午後は体験型ワークショップとして、8つの分科会を開催しました。分科会のテーマは以下の通りです。

  • 分科会1 国語 西多美保氏(東京インターナショナルスクール)
         「児童が学習過程を振り返る学びとは」
  • 分科会2 技術 馬田大輔氏(東京学芸大学附属国際中等教育学校)
         「ラックでデザインバトル!~デザインにおけるルーブリックの必要性を考える~」
  • 分科会3 国語 遠藤みゆき氏(大阪インターナショナルスクール)
         「ミラー作『セールスマンの死』の授業」
  • 分科会4 英語 小松万姫氏(東京学芸大学附属国際中等教育学校)
         「ビジュアルインタープリテーションを授業に取り入れる~広告から学ぶ説得の技法~」
  • 分科会5 模擬国連 後藤芳文(玉川学園 担当教科:国語)
         「交渉の基礎」
  • 分科会6 理科 岩佐大助(玉川学園 担当教科:理科)
         「人間の知覚の信頼性」
  • 分科会7 地理 宅明健太(こどもこのさきプロジェクト)
         「多角的に見る世界~アフリカゾウのこと、ご存知ですか?~」
  • 分科会8 歴史 堀謙一(立命館守山中学校・高等学校)
         「高校世界史をProject Based Learningの観点から Jigsaw学習で運営する」

グループ・ワークで授業を体験しながら考えるIBDPのコア

上記分科会の中から、玉川学園5年生から12年生の理科を担当している岩佐大助教諭による約30名が参加した「分科会6」を紹介します。前半は「知覚を主題としたIB授業の提案」で、岩佐教諭によると、「IBDPの『コア』の一つである『TOK:Theory of knowledge(知の理論)』のねらいは、生徒が自分なりの物の見方や、自分と知識を共有しているさまざまなグループの物の見方を自覚できるよう促していくことにあり、そのために生徒が普段何気なく認識していることの前提に今一度立ち返り、再認識したうえでさらに考えを深化させる機会を与えることが教師に求められている」として、普段当たり前で意識されることのない人間の「知覚」を題材に、参加者に紙皿が配られ、目隠しをして中に入っているもの(じつはお菓子)を味わい、それが何かを当てるアクティビティを行いました。そしてこのことを通じて何を感じ、何を学んだかをグループで共有しました。

後半は、玉川学園10年生から12年生で実施している、アクティブ・ラーニング型授業「科学英語―Science English―」について、実際の授業例として「ゴム動力ヘリコプターの作成と条件による飛行の変化の予想」を紹介しました。参加者一人ひとりが、ゴム動力ヘリコプターを厚紙やストロー、ゴム、クリップなど使い、岩佐教諭の英語での解説を交えながら作り、飛ばしてみました。楽しみながら英語で学べる授業に参加者も非常に興味深く取り組んでいました。さらに「科学英語―Science English―」の効果の検証と評価について、10年生においては、理科が得意で英語が苦手という生徒の多くからも「意義のある授業」という回答が得られたことを紹介。岩佐教諭は今後の課題として、「教材・内容のさらなる改善」「2週間に1回程度のイベント的な授業にせず、生徒の取り組む姿勢をより積極的なものにするための工夫」「プリントの管理や予習がしやすくなるような教材配布の方法」を挙げました。

日本の教育にIBを根付かせるために協同的な研究を継続すること

最後にこのフォーラムのまとめ役である、学術研究所 K-16一貫教育研究センターのカメダ・クインシー講師に今回のフォーラムのねらいや来年への展望について聞きました。
「フォーラムを開催した当初は、まだIBへの認知度はもとより、IBとはいったいどういう教育システムなのかという理解がほとんどない状況でした。しかし、現在は文部科学省がIB認定校を200校に増やす構想を発表し、導入する学校が増えてきています。そのため、フォーラムの役割もIBの知名度を上げることだけでなく、IB教育を日本の教育に根付かせるために、教育関係者とともに、研究を進めていくことに移行しています。
そこで、今回の講演会はIBの理念について、しっかりと理解していただくことを重点に行い、文部科学省の日本におけるIB教育の取り組みから、次第に具体的に現場での実践へともっていきました。

グローバル人材=英語力、あるいはIB=エリート英語教育という捉え方が多くみられますが、本来のIB教育の理念はまず母語を大切にすることで、自分のアイデンティティの確立が重要です。分科会ではここに注目し、日本語での授業や生徒数30~40人の一般クラスと同等の生徒数といった環境の中で実践している授業を体験することにより、参加者が自身の学校に持ち帰って実現できるものにしたいと考えました。
2016年度は11月に開催することが決定しています。次回は日本語DPを見据え、日本語による各教科の教員が参加し、協同的に研究を進めることを大きな目標にし、玉川学園やIB認定校での実践の紹介や情報交換を行いたいと考えています。各学校の教育理念や価値を大切にしつつ、よりよい教育を生徒たちに提供することを参加者とともに考える機会にしたいと思っています」。本フォーラムの開催が、日本におけるIB教育へのさらなる理解を深めるとともに今後の普及につながることを願っています。

[予告] 第9回 玉川大学 国際バカロレア教育フォーラム
日時:2016年11月26日(土)
会場:玉川学園
※事前申込制(参加費:無料)
※詳細は9月中旬に本学HPにてご案内いたします。

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