幼稚園や保育所での異文化理解を深めるために。大学教育棟 2014で神奈川県立地球市民かながわプラザの方による出張講義が行われました。

2016.02.05

渡辺さん(左)と宮嶋さん(右)

1月8日(金)、幼稚園教諭・保育士の資格取得をめざす教育学部の4年生を対象とした教職実践演習(幼)の3クラスの合同授業において、神奈川県立地球市民かながわプラザ(通称 あーすぷらざ)の職員の方々を招いた出張講義が行われました。ゲストスピーカーは、昨年10月に別のクラスの授業でご登壇いただいた外国人教育相談担当職員の渡辺早織さんと、外国人教育言語相談サポーターの宮嶋ジャネットさんです。「教職実践演習」は、教育職員免許状および保育士資格の取得の必修科目として位置づけられている科目で、教育(保育)現場で起こりうる諸課題を実践的に学ぶこと、また、現職者や関係機関との連携の中で学修内容を策定することが求められる科目です。今回の講義は、若月芳浩教授、宮﨑豊教授、田澤里喜准教授の3名の担当者の協議のもと実現しました。

現在の幼稚園や保育所では、一つのクラスに何カ国もの国籍の子供たちが在籍していることも珍しくありません。また、国籍は日本でも両親のどちらかが外国出身である子も少なくありません。あーすぷらざでは、そうした子供たちを『外国につながる子どもたち』と呼んでいます。当然、言葉や習慣の違いから起こる子供の生活上の困難さはもちろんのこと、保護者との連携、子育て観の共有、意思疎通の難しさも、幼児教育の現場では増えているといいます。玉川大学の卒業生で、学生時代はラクロス部に所属していた渡辺さんは、幼児教育の現場で働く友人からそうした話をよく耳にするとのこと。神奈川県は東京都、大阪府、愛知県に次いで外国人の人口が多く、あーすぷらざにも日々さまざまな相談が寄せられているそうです。今回の出張講義では、そうした現状と対応についてお話いただきました。

あーすぷらざに日々寄せられる相談の中には、日本人ではなかなか気づきにくいものも少なくありません。
たとえば、「子供が遠足に行く際の持ち物リストに『シート』と書かれており、一人用のレジャーシートではなく、大きなブルーシートを持たせてしまった」というものです。同様に、幼稚園で使うものとして「ループ付きタオル」と書いてあれば、保護者も自分が幼稚園時代に使ったものなのですぐに理解できますが、外国につながる保護者からすればなかなかイメージできません。
そんなさまざまな思い違いなどのトラブルは、幼児教育の現場で働く人たちのほんの少しの気配りで解消できると宮嶋さんは説明します。
宮嶋さんは日本で二人のお子さんを育てた、まさに「外国につながる人」として子育てで苦労した経験者。そんな中でも、お子さんが幼稚園時代に担任の先生から渡された運動会の練習の持ち物メモが印象的だったと言います。
今回の講演では大切に取っておいたそのメモを見せてくださいました。そこには、ひらがなとカタカナ、そしてイラスト入りで持ち物がわかりやすく書かれていました。
「外国につながる人と接する際に必要なのは、やさしい日本語」だと渡辺さんも語ります。
「たとえば震災時に『高台に避難して』と言われたり書かれたりしても、日本語をよく知らないと理解できません。けれども『高いところに逃げてください』なら分かりますよね。相手に合わせて言葉を選ぶことが大切です」。
用件を文書で伝える際は、情報を整理することや、箇条書きや表にするといった工夫も重要なのだそうです。そして「こちらが『コミュニケーションをとる気持ちがある』と、相手に感じてもらうこと」が最も大切とのことでした。
宮嶋さんも「『外国人だから分からない』と決めつけるのではなく、一歩踏み込んでほしい。外国につながる家族にとって、子供が学んできた日本の文化は受け入れやすいものです。そうした意味でも、幼児教育者の役割は大きいのではないでしょうか」と語ってくださいました。

受講生の女子学生は、今回の授業の感想を「教育実習で幼稚園を訪れた際も、外国につながる子供がクラスにいたのですが、受け入れの当初にこうした問題があるとは知りませんでした。その子の背景もしっかり理解した上で接しなければと感じました。また4月からは幼稚園教諭として勤務しますが、あーすぷらざにぜひ一度行ってみたいと思います」と語ってくれました。
また、この授業を担当している田澤里喜准教授は「現在の幼児教育の現場で、『外国につながる子どもたち』に関わる問題は非常に多く、今日の授業に参加した学生たちも社会に出たら必ず取り組むことになります。卒業間近の彼らにこうした状況を知ってもらうことが、新たなモチベーションになればと思っています」と話します。
教育学部の4年生にとって、良い気づきの機会となった今回の出張講義。この講義で学んだことが、外国につながる人たちの暮らしやすい社会を形成する大きな力となることを願っています。