岡田浩之 研究室

岡田 浩之 工学部 教授

認知発達ロボティクス  博士(工学)

赤ちゃんとロボット、異色のコラボで知の創成の謎に迫る

2018.4掲載

研究室が目指すこと

人の認知プロセスの発達メカニズムを解明することを目的として、幼児やロボットを使った認知発達ロボティクス研究に取り組んでいます。乳児の言語獲得からロボットの音声認識システムまで、幅広いテーマに興味があります。乳児の発達研究とロボティクスのような一見無関係な分野をつなぎ、柔軟なインテリジェンスの枠組みを理解し創造することを目指しています。

赤ちゃん研究とロボット
一見関係ないこの二つを繋ぐもの
それは、しなやかな知性の仕組み
人にやさしいロボットを創ることは
人を理解する鍵となる
そう信じて研究を続けている
ロボット研究の先に見える人の心
人の心を解き明かしたい

研究内容

人工知能研究と家庭用サービスロボットへの応用

私たちの研究室では、家庭環境などで人の生活を支援するサービスロボットの開発を通して、機械学習のアルゴリズムについて研究しています。家庭用サービスロボットは、それらが動作する環境が大きな不確実性を持つという点で、工場のラインなどで作業するロボットと大きく異なります。工場ではほとんどの場合、製品がラインを通過するタイミングや位置、向きなどは、予め正確に決まっているため、ロボットは同じ動作を正確に繰り返すことを求められます。一方、家庭環境では、テーブルに常に同じ物が置かれているとは限りませんし、昨日は閉まっていたドアを今日は誰かが開けっ放しにしているかも知れません。このような環境の中でロボットが物を運んだり人を案内したりするためには、センサのデータから重要な情報を抽出し、適切なモータの制御値をリアルタイムに決定しなければなりません。あらゆる状況に対応する制御則を網羅的にプログラムすることはできないので、ロボットが自律的に学習することが必要となります。

研究室では、強化学習というアプローチをベースに、ロボットに様々なタスクを経験させ、失敗や成功を繰り返すことで最適な制御則を見つけ出す、効率的なアルゴリズムを開発しています。また、ロボカップ@ホームへの参加などを通して、開発したアルゴリズムの実証実験を行なっています。

視線から探る鑑賞教育の効果

美術教育に効果があったかどうかをいろいろな方法で検討しています。美術教育は算数や理科、国語などの主要教科のように教育効果を測定する方法が確立されておらず、教育評価の基準も明確には決まっていません。特に、美術教育では学習者が絵画や彫刻などの美術作品を見る力を身に着けたかどうかを測る方法が十分に確立されていないことが長年問題とされてきました。このような問題を解決する上で、視線は大きな手掛かりになります。視線は学習者が美術作品を「じっくり観察する」過程をそのまま反映します。このような視線を測定すれば、学習者が絵画を見る力の重要な要素を評価することが可能になるかもしれません。

現在、私たちは学習者の視線が鑑賞教育の前後で変化するかどうかを実験して、視線を利用した美術教育の評価方法を提案しようとしています。このような研究を積み重ねることで、学校だけでなく美術館や博物館など幅広い教育場面での教育評価が可能にすること、そして、教育をより良く発展させるための基盤を作ることが私たちの研究の目標です。

「小説を楽しめるのはなぜ? 身体性と比喩理解からのアプローチ」

小説を読み、理解し、楽しむという行為は改めて考えてみると不思議に思えてきます。小説を読むとき、読者への入力情報は白黒の模様(文字)だけです。それにも関わらず、私たちはそこから豊かなイメージを抱き、登場人物に共感し、強い情動を感じることができます。人間は、バーチャルリアリティで用いられるような五感への精緻な擬似情報の入力がなくても、文字だけで別の世界を構築し没入し現実感を感じることができるのです。こういった言語による物語理解、物語への没入がどのような認知的な機構によるのか、私たちは二つの観点から研究を進めています。一つは物語理解をある種の現実世界のシミュレーションと考え、このシミュレーションの機構を、読者の身体感覚の変化に注目して調べる研究です。もし登場人物をシミュレーションしているならば、読者の身体感覚が登場人物類似に変化する可能性があります。これを実験で調べ、将来的には神経基盤を含めたモデル化を目指しています。もう一つは比喩の研究です。「椿のような風」といった物理的には遠い関係の二者を関係づける認知的機構が、言語による物語の仮想を可能にする認知に関連する可能性があると考えています。

略歴

東京農工大学生物システム応用科学研究科生体機構情報システム学専攻博士課程修了。博士(工学)。1986 年(株)富士通研究所入社。Real World Computingプロジェクトにおいて柔らかな情報処理の研究に従事。2002 年東海大学理学部助教授を経て、2006 年より玉川大学に勤務。現在、脳科学研究所応用脳科学研究センター・教授。学術研究所先端知能・ロボット研究センター主任、工学部情報通信工学科・教授。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構アドバイザー。赤ちゃんの発達とロボットを融合させた研究に興味をもつ。ロボットを通じて、人間を知ることが目標。2008 年、2010 年ロボカップ@ホームリーグ世界大会優勝。日本認知科学会、日本赤ちゃん学会、人工知能学会、日本ロボット学会などの会員。