星野あゆみ先生第2回 IB都市伝説 その1

2017.08.23

これまでIB教育に関わってきて、世の中にはIBに関して間違った認識があることに気付きました。

IB都市伝説①『IBをやると英語ができるようになる』

IB教育は語学教育ではありません。ではなぜこのように思われるようになったのでしょうか。
IB教育はより良い、より平和な世界の構築に貢献できる若者を育てることを目標としていますので、大事にしていることの中に母語と第二言語の学習があるのは事実です。しかしながら、学習の目的は言語獲得や言語習得ではありません。IBの公式言語は英語、フランス語とスペイン語です。例えばDPでは世界中に英語で学んでいる生徒のみならず、フランス語やスペイン語で学んでいる生徒がいます。スペイン語で学んでいる生徒の母語がスペイン語で第二言語がフランス語であるならば、その生徒は全く英語を学習しないでDPを修了します。ですからIBをやったら英語を学んでいるというのは思い込みです。MYPにおいては指導言語の指定がありませんので、学校は何語で授業をしてもいいのです。それではなぜ「英語で勉強するのがIBである」「IB導入するということは授業を英語ですることだ」という固定観念が生まれたのでしょうか。一条校でIBを導入してきたパイオニアの学校(例えば加藤学園や玉川学園)においては、「国際学級」のような一部の学級で英語でIBのプログラムを実施してきたからではないかと推測します。加藤学園は日本における英語イマージョン教育のパイオニアでもあります。このイマージョン教育を行う暁秀中学校・高等学校「バイリンガルコース」でIBを実践しています。玉川学園も中学部・高学部に設置されている「国際バカロレア(IB)クラス」でIBを実施しています。このIBクラスも指導言語は英語です。これらの学校の様子をみて、IB教育とイマージョン教育が混同してしまったのではないでしょうか。
IB教育はより良い、より平和な世界を築くことに貢献する探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目指す国際教育のプログラムです。現在一条校の認定校は20校ですが、そのうち10校は日本語を指導言語として使用している学校(一部科目での使用を含む)です。文科省がIBの推進政策を打ち出し、DPの最終試験を日本語で受けられるようになった今日では「IB=英語教育」という構図が成り立たない学校が増えてきています。IBは何語で勉強しても世界に貢献できる若者を育てるのが使命なのです。