寺本先生:地図力を子どもに育てよう!Vol.2:ピアジェによる発達心理って知っていますか?

2013.11.25

有名なピアジェという心理学者が実験した、いわゆる三つ山の認識実験というのがあります。子どもが三つの峰を持った模型の山の見え方について、人形の目に代わって自分からは見えない地点を想像できるようになるための実験です。人形の目に代われるには経験知が獲得される必要があります。積み木遊びで自分の住む近隣を表現したり、大き目の床地図上で街を再現できたりする経験が、心理学でいう具体的操作の段階に必要です。ピアジェによる発達心理は大まかな意味で子どもの空間認識の発達過程に示唆を与えてくれましたが、個人差が大きい現代っ子ではむしろ、経験知を調べた方がベターでしょう。乳幼児が箱と箱の谷間に置かれた透けたガラス板の上に乗りたがらないことも同様です。落ちてしまうと怖がることはむしろ経験知が獲得されていることを示しており、ガラス板が丈夫であり割れないことを確かめて渡る行為はさらに経験知が蓄積されていることを示します。感覚運動段階から具体的操作段階への発達する心理は、同時にいかに具体的な生活場面で空間を経験化できるかにかかっています。いたずらに幼いころよりパソコンなどの液晶画像に写し出された地図を眺めさせることは無理なのではないでしょうか。3次元の世界、つまり現実の場面に応じて地図を操作できる経験を積む学習機会がやっぱりもっと必要なのです。
(教授 寺本潔)