近藤先生:子どもの健康と成育環境についてVol.3:子どもの病気と予防接種

2014.01.21

今回は、幼児健康度調査の中から、子どもたちの健康の保持増進に直接関連のある病気や予防接種についてとりあげてみたい。

アレルギー疾患の増加

幼児全体では、これまでに病気(感染症以外で医師に診断された病気)がある割合は、1980年11%、1990年26%、2000年24%、2010年29%であり、年を追って増加していた。病気の内訳をグラフに示したが、2010年で有症率が最も高い疾患は、食物アレルギー9%、ぜんそく8%、アトピー性皮膚炎7%であり、いずれもアレルギー疾患である。年次変化については、選択肢が年によって異なるので比較が難しいが、「ぜんそく」が1980年2%から2010年8%へと増加している。「アトピー性皮膚炎」は2000年9%から2010年7%とやや減少しているものの、1980年には湿疹(4%)の中にカウントされていたことをふまえると、この30年で増加していることが推測される。これらの結果から、幼児の慢性疾患の中ではアレルギー疾患が最も多く、近年増加していることがわかる。

診断された病気

変わる感染症のかかり方

幼児期は、集団の中でさまざまな感染症にかかり、免疫を獲得していく時期である。5-6歳(年長児)時点で、これまでにかかったことがある感染症の推移をグラフに示した。麻しん(はしか)、風しん(三日はしか)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)については、年を追って罹患率が減少している。特に、麻しんと風しんは1980年にはそれぞれ48%、26%であったが、2010年にはいずれも1%へと激減していた。一方、水痘(水ぼうそう)と手足口病についてはこの30年間で罹患割合の増加がみられている。

感染症のかかり方

予防接種の普及

前述の感染症のかかり方に大きく関わっているのが、予防接種(ワクチン)の普及である。グラフには5-6歳(年長児)の接種率を示したが、麻しんと風しんの接種率が著しく増加していることがわかる。麻しんのワクチンが定期接種になったのは1978(昭和53)年であり、次いで風しんが1989(昭和64)年から乳幼児期の定期接種に加えられた。その後20年が経過した2010年にはいずれのワクチンも就学前には9割以上の接種率が得られている。ちなみに、昨今30代における風しんの流行が問題なっているが、グラフにおける1990年の接種率の低さがこの世代の免疫力の低さを証明している。
このように、病気のかかり方の経年変化をみることで、アレルギー疾患の増加という新たな健康課題を確認することができるとともに、日本の母子保健制度が整備され、感染症予防のための対策が進められてきた過程を読み取ることもできる。

ワクチンの接種率