長野先生:「授業設計」に基づく授業の構築Vol.2:授業の計画

2014.02.17

指導計画

そもそも学校教育は、目的的で計画的な活動である。
そこで、特定の目的を達成するために、地域や学校の実態及び生徒の発達段階に即して、「各教科・道徳・特別活動・総合的な学習の時間」の各領域における教育活動を、「教育課程」として有機的に組織する。即ち、教育課程は、学校教育における全体的な教育計画である。
この教育課程に対して、各領域についての具体的な教育計画を一般に「指導計画」と言う。
各領域には、それぞれに固有の目標がある。従って、特有の目標を達成するために、そこでの指導内容を精選し、分類し、系統づけ、それを効率よく指導するための指導計画が必要である。

指導計画の中で最も基本的なものは、年間の指導計画、単元の指導計画、単元の中のl単位時間である本時の指導計画、の3つである。特に、各教科の授業の計画は、この順序で具体化されていく。

「年間指導計画」とは、その教科等について、各学年ごとに年間の基本的な指導の計画を立てたものである。「単元指導計画」とは、年間指導計画を実施するに当たって、その一つひとつの単元の内容を細案化して、実際にその単元の授業を展開できるように、学習活動の区分に従って時間配分などをして指導計画を立てたものである。
そして、「本時指導計画」とは、単元指導計画を実施するに当たって、その1単位の授業を具体的に展開するために、綿密な指導計画を立てたものである。そして、単元及び本時について指導計画として立案された内容は、通常、「学習指導案」の形にまとめられる。
このような指導計画なくしては、効率の高い授業を展開することは困難である。
生徒に特定の学習を成立させようとすれば、教師は生徒にどのような環境を用意しなければならないかを、授業を実施する以前に明らかにしておく必要がある。また、授業の過程で生徒と環境との相互交渉をどのように調節するかということも、前もって考えておかなければならない。

授業の過程

図3.授業の過程

図3は、学習の指導者として、教師はどういう形で生徒の学習を援助するのかを示したものである。
既述のように、生徒は環境との相互交渉の繰り返しによって、常に何かを学習している。
図で、環境の側から生徒へ向かう矢線は、環境から生徒に何らかの情報が与えられることを示している。次の、生徒から環境へ向かう矢線は、生徒の側からの環境への働きかけつまり何らかの反応である。その働きかけに対して、環境は更に何らかの情報を送り返す。これがフィードパックであり、第3の矢線はこのことを示している。
つまり、環境と生徒の聞には、常に「情報提示」、「反応」、「フィードパック」という相互交渉があり、それによって生徒たちはさまざまなことを学習していくのである。
しかし、このような自然に行なわれる学習だけでは、その学習は不安定であり不確実である。そこで、生徒の学習の充実を意図して、彼らの学習活動を援助する授業の必要性が生まれてくる。
授業における教師の援助とは、生徒に特定の学習の成立が期待できるように、生徒と環境との相互交渉の仕方を調節あるいは操作することである。具体的には、先の、情報提示の仕方、反応の起こさせ方、フィードバックの送り方に工夫を加えることである。

教師は生徒に特定の学習が成立することを意図して、まず、生徒が受容し易いような、あるいは処理し易いような形に情報を整理して提示する。次に、与えられた情報に対して生徒に何らかの反応を積極的に起こさせる工夫をする。そして、観察できた反応に対して、更に生徒の学習が生起し易いようにフィード、パックの情報を与える。

図3で、「教師」から情報提示・反応・フィードパックのそれぞれに向けて矢線が出ているのは、その調節なり操作を示している。
教師からのこうした連続的な援助を受けることによって、生徒はより効率的に学習することが可能になるのである。そのためには、この場合の教師による調節なり操作の仕方について、予め十分に慎重な計画がなされていなければならないのである。