森山先生:教師と感性Vol.3:ICT活用における学びの向上

2015.08.07

1. ICT活用における授業の質の向上

これまで先導的にICTを活用した学校での取り組みは、ICT活用による効果的な学びの場面として、一斉学習での児童生徒の興味・関心を高める学びや、個別学習での児童生徒一人一人の能力や特性に応じた学び、児童生徒同志が教えあい、学び合う学び、特別支援教育での障害の状態、特性等に応じた学習活動などがあげられており、授業の向上に対して大きく期待されています。
これらの授業における具体的な授業展開例としては、体験学習、実験・観察などを行い、その情報を映像やデータなどによって記録し、実験とデジタルデータを合わせて理解を深めたり、思考力を高めたりする授業や、従来の授業では実体験が困難な事象について、デジタル教材を活用して、視覚化を図ることによって、理解を深める授業、さらには、情報端末や電子黒板などを用いて、個人やグループの考えを即時に整理・発表したりする授業などがあげられます。
このように、児童生徒の発達段階に応じて、ICTを活用した指導等に取り組むことが課題となっています。
一方、2013年度の全国学力・学習状況調査学校質問紙調査の結果からみると、「前年度までに、コンピュータ等の情報通信技術を活用して、子供同志が教え合い学び合う学習(協働学習)や、課題発見・解決型の学習指導をおこないましたか」という質問に対して、「よく行った」、「どちらかといえば、行った」と回答した学校の割合は、小学校においては、46.7%であり、中学校では45.2%という数値となっています。実際においては半数以下の学校での取り組みとなっていることも事実として捉えなければなりません。今後の積極的な取り組みがのぞまれます。

2. ICT活用による学びの場の多様化と過疎化、少子化での学びの充実

ICTの活用は、学校教育の中心である授業に限られるものではなく、校外、あるいは自宅においても、児童生徒が収集した情報を自ら編集したり、デジタル教材により学習することなどによってより学びが深まっていきます。
「ICTを活用した教育の推進に関する懇談会」(2014)の報告書においては、学びの多様化に関しての取り組みの例として「タブレットPCが1人1台利用できる環境であることを前提に、家庭などで翌日の授業内容に関する動画を見て知識の習得を行い、学校の授業においては、協働的な問題解決能力の育成のために、児童生徒による教え合いや学び合いを行う授業」などがあげられています。
さらにICT教育の指導方法として、反転授業はICT活動による今後の学びの場の多様化にとって注目されています。反転授業とは、これまでの学習の主流であった復習を重視したスタイルではなく、予習を重視した授業であり、児童生徒全員に1人1台のタブレットPCを持たせて、そこに取り込んだ教材動画を家庭で見ながら予習を行い、それをもとにして、学校で学び合うというような授業方法です。実際に学校と家庭のシームレスな学習環境の構築、家庭での事前学習と連携した授業として効果的であるとの期待が寄せられています。このようなことから、ICT活用による学びの場の多様化は、子供たちの主体的な学びをより一層推進していくことでしょう。
我が国の社会全体に目を向けると、生産年齢人口は減少に歯止めがかからず、一方、人口に占める高齢者の割合は増加の一途といった深刻な状況であり、少子化・高齢化の進展は、我が国の学校教育の根幹を揺るがしているといえるでしょう。現実の問題として、小学校・中学校・高等学校の在学者数も各学校数も減少傾向にあります。このような中、特に離島・過疎地等では、学校統廃合も困難な小規模学校の増加が避けて通れないといったことも懸念されています。このような状況におかれた学校においては、児童生徒の社会性の育成をはじめとして、児童生徒同士の学び合い、多様な体験を通じた課題探究型学習などの学びに支障を来たすこととなり、教育そのものの質の確保が課題となっています。
このような状況のもとで、ICTの活用には大きな期待が高まっているわけです。具体的には、ICTの活用によって遠隔地間の学校での教室や施設等をつなげることによって、年間を通じて合同授業や合同活動を行うことも考えられます。