ドイツの学会大会に参加しました

2016.10.25

9月12-14日にハンブルク市で開催されたドイツ教育学会の職業・経済教育学部会大会に参加してきました。ハンブルク市はドイツ北部のエルベ川沿いに位置し、ハンザ都市として旧市街は歴史の重みを感じます。市庁舎が美しいことでも有名です。
ドイツの教育研究者の集まりとしてドイツ教育学会(Deutsche Gesellschaft für Erziehungswissenschaft)があります。ドイツ教育学会は1964年に設立され、現在はおよそ3300人の会員が所属しています(学会HP http://www.dgfe.de/aktuelles.html 参照)。この学会には13の部会、19の委員会が設置されています。そのうちの第7部会が「職業・経済教育学」です。この部会は、工業や手工業を中心とした技術系の職業教育諸学校関係者、商業学校を中心とした関係者、そしてそうした学校の教員養成関係者等を中心に構成されています。

基調報告前の会場の様子

3日間の大会は、初日が若手研究者による発表でした。2日目と3日目は個人研究発表と共同研究発表やシンポジウムが組み合わされていたました。朝から夕方まで、盛りだくさんの報告でした。2日目の大会基調報告では、職業・経済教育学の社会的意義を問う内容でした。この領域はドイツ独特の後期中等教育(高校)段階で行われる企業内職業訓練と職業学校の教育との「二元制度」が基盤となっています。しかし現在では大学に進学する若者が増え、職業教育・訓練の存在意義が問われています。
大会に参加してみて、ドイツの職業教育・訓練制度は、今後どのようにあるべきか、どのように変わるべきか、といった厳しい議題をオープンに議論できる環境が重要であることを改めて確認でしました。社会の変化に合わせて、学問としての対象・目的・方法が問われるのは日本でも同じです。また、日本と異なる点として、移民の背景を持つ若者に、どのような教育や訓練を提供するのか効果的か、といった学習者の多様性を前提とした内容が多く見受けられました。学習者を中心とした教育効果を追求する方向性を強く感じました。更に、量的調査、質的調査、文献調査といった研究手法がしっかりと確立していることが印象的でした。

(教授 坂野慎二)