子どもの保健分野から

2013.08.21

9月26~28日に第60回日本小児保健協会学術集会*が、日本大学医学部小児科 岡田知雄教授を会頭として、国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されます。後日、参加報告をさせていただきたいと思います。

ここでは、この学会のプログラムから、わが国における子どもの保健分野の課題やトピックスを概観してみたいと思います。講演やシンポジウムのタイトルを拾ってみると、日本の超少子化、子どもとICT、子どもの生活習慣病、小児ガン患者のQOL、児童虐待、感染症・予防接種、アレルギー、食育、発達障害、子どもとスポーツ、震災復興支援といったテーマが並びます。

基調講演は日本子ども家庭総合研究所の衞藤隆所長による「わが国における小児保健80年のあゆみ」です。1937(昭和12)年に保健所法が制定され、母子保健(妊産婦および乳幼児の衛生に関する事項)が国の事業として位置づけられてから、80年近くが経ったことになります。日本の母子保健のスタートは、富国強兵のための国民の健康づくりでしたが、戦後急速に、公衆衛生や小児医療水準が発展を遂げ、現在では乳児死亡率世界最低というところまで到達しました。

このように、生まれてきた子どもが命を落とすリスクがほとんどない時代になったわけですが、産み育てにくい社会が少子化や児童虐待を招き、豊かな環境が生活習慣病やアレルギーにつながり、インターネットなどのメディア利用が心身の健康に影響を及ぼす、といったような、新しい時代ならではの課題が生じています。一方、感染症については、抗生物質や予防接種で征服できた疾患も多いのですが、その間隙を縫って新しい流行の仕方が問題となっています。例えば、現在20~40歳代の大人で流行している風疹や、性感染症としての子宮頸がんやクラミジア感染症、そして結核などです。

「明るく・やさしく・たくましく−夢に向かって進もう—」が今回の学術集会の総合テーマですが、現代社会において子どもたちが夢に向かって進むためには、家庭や学校における健康教育が担うべき課題は山積しているといえます。子どもの健康に興味のある方は、ぜひ日本小児保健協会学術集会に参加してみて下さい。


(教授 近藤洋子)