日本道徳教育学会(東京学芸大学)に参加しました

2015.07.02

6月27~28日に東京学芸大学で開催された日本道徳教育学会に参加してきました。今回は、学習指導要領の一部改正に伴い、教科外であった「道徳」が「特別の教科」に変更されるとあって非常に関心が高く例年よりも多くの教育関係者が参加されたようです。全体会の行われる大教室には入りきれず別室にてビデオ中継という状況でした。
全体会では「特別の教科 道徳」に関するタイムリーな議論が中心でしたが、分科会では例年通り様々な分野からの研究発表が行われました。私が参加した中で秀逸に感じたのは、龍谷大学の川崎一輝氏(後期博士課程院生)発表の「格言の取り扱いについて」をテーマとした発表でした。氏からの問題提起は、道徳の教材として現場で使用されている『私たちの道徳』に出てくる格言のいくつかは、単に文章の一部だけを抜き取られたものも多く正確な使われ方をされていないのではないかというものでした。氏は同教材に記載された格言の出典をすべて調査され疑念のあるものを、①格言の文意が原典と異なっているもの、②文意を意図的に省略しているもの、③孫引きのもの、④作者が発言していないもの、⑤訳文が不明なもの、⑥使い方に問題のあるものという形で分類・精査されていました。
私自身も以前から、ソクラテスは毒杯を飲む際「悪法も法なり」と言っただの、ルソーは「自然に帰れ」と言っただの、教育界でしばしば言われる根拠のない言説にいささかうんざり気味でしたので、こうした調査研究は道徳教育の質を高める意味でも非常に有意義なものと感じました。また氏の発表の目的が、「『私たちの道徳』を使うことを否定するためものではなく、よりよく使うための前提条件に関するものである」という点にも強く感銘を受けました。破壊的な批判ではなく建設的な批判が主題となるのも道徳教育学会だからでしょうか。
本学の院生諸君も確固たる研究成果を引っさげてどしどし学会発表に挑戦してもらいたいものです。

(教授 山口意友)