IB教育の現場で活躍するIBコース修了生:関西国際学園 初等部勤務、中浦 雄介さん

2017.09.13

教育学研究科 国際バカロレア(以後;IB)研究コース2期生の中浦雄介です。2017年3月に本学(玉川大学大学院)を修了し、現在はIB Primary Years Program(PYP)認定校の担任として日々奮闘しています。
近年、「海外大学への切符」や「大学入試改革」といった文言と共にIBが注目を浴び、その手段価値が大きく取り上げられるようになりました。確かに世界標準の教育プログラムとしてのIBは、高度情報化社会の到来やグローバル化の流れに伴い、今後も世界中で発展していくことが期待されています。しかし本学では、そのようなIBプログラムの導入に係る制度的な手段価値のみならず、常に教育の本質を捉え、「教育とは何か」という問いに立ち返りながら研究を進めてきました。その所以は、本学が全人教育の提唱者である小原國芳によって創設され、その意志が現在においても継承されていることに由来しているのではないかと考えています。
IBも本学同様、全人的な教育を目指しています。IBでは、児童・生徒、及びすべての教育関係者が目指す像として、10の学習者像なるものがあり、それが全人的な教育の目標を体現しています。
大学院を修了して以来、IB認定校で教師として働く私は、日々の授業においてもその学習者像の要素を取り入れることを常に意識しています。授業中に児童の手が挙がらない状況があれば、「“リスクテーカー(挑戦する人)”はいませんか?」や「この状況を助けてくれる“思いやりのある人”はいませんか?」などと声かけを行います。また国語の授業においては、「物語の主人公はどの学習者像に当てはまると思いますか?」などと問いかけを行います。つまりある時は、道徳的倫理的に物事を捉える視点として、またある時は、学術的に考える視点として学習者像を用いた授業、及び教育を実践しています。
私が勤めている学校(関西国際学園)では、「国際社会に貢献できるリーダーの育成」を目指して、様々な国籍の先生とともに教育活動を行っています。そこでは多様なスタンダードが存在し、互いの価値観や文化の共有が行われています。そしてそのような環境では、児童・生徒はもちろん、私たち教師を含む教育関係者も、人として成長することが常に求められています。勿論、国際社会に貢献できるリーダーを育てるためには、高度な知識やスキルを身につけさせることは必要だと考えます。しかし、それ以前に一人の人間として育てることが最も重要な教育者の責務だと考えています。そしてそこには正解は存在せず、これからも「教育とは何か」ということを常に問い続けていく必要があると考えています。
全人教育は、人を育てる教育です。私は本学を修了した現在でも、その意識を持ち続けています。私自身まだまだ駆け出しの教師ではありますが、その意識を忘れずに取り組んでいきたいと思っております。また人の命を預かり、育んでいくという教師としての重大な責任を常に感じながら、目の前の子ども達と向き合っていきたいと考えています。