ミツバチの脳内物質がホルモンとして作用-雄の生殖器官にドーパミンが作用することを発見!

2019.01.08

ドーパミンはヒトや昆虫の脳内でつくられる物質で、動物の運動活性や学習に関わる脳内物質です。ミツバチの雄(写真上)では、ドーパミンは交尾のための飛翔行動を促進します。以前から雄の性成熟に併せて脳内や血液中のドーパミンが増加することが知られていましたが、血液中のドーパミンの役割はよく分かっていませんでした。

セイヨウミツバチの雄(上)と雄の生殖器官(下)
雄の生殖器官は左右一対あり(点線が正中線)、
精巣で精子が生産され、貯精嚢に貯蔵される。

本学農学研究科修士課程を修了した松島啓将さん(平成28年度修了)と現在修士課程1年生の渡邉智大さんは同研究科の佐々木謙教授とともに、ミツバチ雄の血液中のドーパミンと生殖器官(写真下)との関係について取り組んできました。血液中のドーパミンは雄の生殖器官の発達に合わせて濃度が増えていくことから、生殖器官に作用している可能性が考えられました。そこで、雄の生殖器官でドーパミンが作用する受容体が発現しているかどうかを調べてみると、精子を貯蔵する器官(貯精嚢)で4種類のドーパミン受容体の遺伝子が他の部位と比べて多く発現していることが分かりました。さらに摘出した生殖器官をドーパミンの入った培地に入れたところ、貯精嚢でドーパミン受容体が反応することが確認されました。つまり、血液中のドーパミンが生殖器官の受容体に結合し、反応することが実験的に示されたのです。このように脳ではたらくドーパミンが血液を介してホルモンのように雄の生殖器官に作用する例は、昆虫では初めての報告になります。この玉川大学大学院で行われた研究成果は、国際学術雑誌(Journal of Insect Physiology)に2019年1月号に掲載されました(web掲載は2018年11月22日)。

論文タイトル

Functional gene expression of dopamine receptors in the male reproductive organ during sexual maturation in the honey bee (Apis mellifera L.)

著者

Keisuke Matsushima, Tomohiro Watanabe and Ken Sasaki*

松島啓将(玉川大学大学院農学研究科修士課程平成28年度修了)
渡邊智大(玉川大学大学院農学研究科修士1年生)
佐々木謙*(玉川大学大学院農学研究科教授)

  • 責任著者
掲載雑誌

Journal of Insect Physiology (2019) vol. 112, 9-14
Doi: 10.1016/j.jinsphys.2018.11.005

論文は以下のホームページから閲覧できます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022191018303196