竹田先生Vol.6:入門期の作文指導②―初めて作文を書くまでの手立て―

2016.04.07

子どもたちはおしゃべりが大好きです。どの子も自分がしたことや見たことなどを先生や友だちに聞いてほしいのです。そんな子どもの思いを上手に受け止めながら、それを文字化してやるようにします。子どもの話のキーワードを黒板に書いてやったり学級通信に紹介したりする中で、文章表現に対する意識を高めるようにします。具体的には次のようなことを継続的に実践するようにします。

①絵を見ながら話す

1週間のスタートは、日曜日の出来事を聞き出すことから始めます。といってもいきなりみんなの前で話をさせるわけではありません。月曜日の朝、「きのうの日曜日、どんなことをしましたか。絵に描いて教えてね。」と言いながら、一人ひとりに紙を配ります。早い子は2.3分もすると「先生、できた!」と言って担任のもとに描いたばかりの絵を見せにやってきます。その絵を見ながら、スピーディーに何をしているところか一人ずつ尋ねていきます。そして、子どもが話したことを絵の下に簡単にメモしておきます。
翌日の朝の会で、子どもの絵とメモを掲載した学級通信を配布して、みんなで読み合うようにします。このような取り組みをするだけで、子どもたちは「先生、きのうね…。」とわれ先にと話してくれるようになります。

②担任が文で書き添える

「お手伝いしよう」という宿題を出した翌日、その時の様子を絵に描かせます。何のお手伝いをしているところか一人ずつ聞き取りながら、「うえきに みずをあげました。」「しょっきを はこびました。」などと、聞きとったことを子どもの目の前で一文で書き添えてやります。

③自分で絵に言葉を書き添える

平仮名の学習も進んできたら、自分がしたこと・見たことの絵に断片的でも自分で言葉を書き添えるようにさせます。平仮名が思い浮かばないときは、「おてつ○い」などのように書けない字は○で書いてよいことにしておきます。

④自分で絵に文を書き添える

1年生になって最初に経験する大きな行事の機会をとらえて、絵と文を書かせるようにします。5月に運動会がありました。そこで、「運動会で一番楽しかったことを絵に描いてみましょう。絵だけでなく、書ける人は絵の下に文でも書いていいですよ。」といって、絵を描く欄の下に文が書けるように数行の罫線を入れた用紙を渡しました。
ある子は、玉入れの様子を描いた絵の下に、「たまいれがたのしかったです。」と書いていました。初めて書いた文がこの1文でした。

⑤「おかあさん、あのね。」…手紙を書く

学校で楽しいことがあった時など、おうちの人へ手紙を書かせます。また、教室に「あのねポスト」と名付けた箱を用意しておき、先生に知らせたいことがあったらいつでも手紙を書いて入れてよいことにします。
梅雨の頃、理科の学習(当時は1年生にも理科という教科がありました)で、「かたつむり」の観察をしました。初めてかたつむりに触った子やガラスの上を歩く様子に歓声を上げる子どもたちで教室内は大変な賑わいでした。
そこで、今がチャンスと「今日勉強したことをお母さんに教えてあげようね」と子どもたちに呼びかけて書く活動に取り組ませました。書き出しは、どの子も「おかあさん、あのね。」という手紙形式にして相手意識をもたせるようにしました。ある子は、「おかあさん、あのね。きょうじ4かんめのときにかたつむりのじっけんをして せんせいがひもであるかせたけど あるかなかったよ。」と2文で書いていました。運動会の時の1文に比べて少しずつ文章らしくなってきています。

①~⑤のように段階を踏みながら、10分程度のちょっとした書く活動を継続することで、どの子も抵抗なく書けるようにしていきます。このような日常的な小さな取組の積み重ねが文章表現力の基礎を培っていきます。